厚底シューズ歴7年の私が「ワラーチ」で走ったら、ニヤけが止まらなくなった話
はじめに ― 職場の同僚に「変な履物」を勧められた きっかけは、職場のランニング仲間からの一言でした。 「これ、走れるサンダルなんですよ」 彼はすでにワラーチのユーザーで、実物を持ってきて見せてくれました。薄いゴム板にヒモを通しただけの、いわばゴムのわらじ。正直、最初の感想は「……これで走るんですか?」でした。 そのうえで、こんな提案をもらいます。 「私、もう一足欲しいと思っていまして。自作キットが2足分で3,000円で買えるんですが、割り勘で購入して1足ずつ使いませんか?」 実物を目の前にして説明を聞いているうちに、めっちゃ興味がわいてしまいました。ひとり1,500円。失敗しても痛くない金額です。二つ返事で了承し、購入をお願いしました。 半信半疑のまま自作キットが手元に来て、実際に作って走ってみたわけですが――結論から言うと、しばらく忘れていた「走ることそのものの楽しさ」を思い出しました。 近年の私はすっかり厚底シューズに慣れきっていて、脚を「守られている」状態が当たり前になっていました。そこへワラーチです。一歩ごとに、足裏からズンズンと地面の情報が体に響いてくる。この感覚がとにかく心地よくて、走りながら口元がゆるんでしまう。はたから見れば完全に「ニヤけた変な人」です(笑)。 この記事では、そんなワラーチについて、 そもそもワラーチとは何なのか(発祥地・歴史) 履いて走ることで期待できるメリット 一方で、必ず知っておくべきデメリット・注意点 自作キットの実際 を、初心者なりの実体験を交えてまとめます。 はじめにお断り この記事は、ワラーチ歴わずか2回・計10kmの人間が書いたファーストインプレッションです。ベテランの方から見れば「そこはまだ何もわかってない」という部分だらけだと思います。だからこそ、始めたばかりの人間が何を感じ、何をやらかしたかを、できるだけ正直に残しておきたくて書いています。 親指と人差し指の間を通したヒモが甲でクロスし、足首まわりをぐるりと囲む。靴に慣れた目で見ると、あまりに情報量が少なくて逆に驚きます。 ワラーチとは ― 「走る民族」の履物 ワラーチ(huarache/ワラチェ、ハラッチとも表記)は、メキシコ北西部の先住民族・ララムリ(別名タラウマラ族) が古くから履いてきたサンダルを原型とする履物です。 構造は驚くほどシンプルで、 ソール:足型に切り出した1枚のゴム板(伝統的には廃タイヤ) ストラップ:ソールに開けた穴に通した革ヒモ(現代では主にパラコード) これだけ。クッションもアーチサポートもヒールカウンターもありません。「足裏を石やトゲから守る最低限の板」に、脱げないためのヒモが付いているだけの道具です。 ララムリはメキシコ・チワワ州の峡谷地帯(バランカ・デル・コブレ/通称「銅峡谷」)に暮らし、このサンダルで起伏の激しい山道を100km単位で走ることから「走る民族」と呼ばれてきました。 語源には諸説あり ― 「わらじ」説は本当か? 「huarache」という語は、メキシコ先住民の言語プレペチャ語で「サンダル」を意味する語(kwarachi など)に由来する、というのが一般的な説明です。 一方、日本では 「語源は日本語の"わらじ"だ」という説 がネット上でよく紹介されています。江戸時代に太平洋を渡った日本人が伝えた、という話ですが、これは学術的に裏づけられたものではなく、音の似た偶然から生まれた俗説と考えるのが妥当でしょう。 ただ、形も発想も本当によく似ているのは事実です。薄い板を足裏に当て、ヒモで結ぶ。地球の反対側で同じ答えにたどり着いたと考えると、それはそれでロマンがあります。 後で出てくるゴムシートの写真を眺めていると、素材こそ違え、発想は本当にわらじそのものだなと思えてきます。 ワラーチが世界に広まった理由 ― 『BORN TO RUN』 ワラーチが一部のマニアの道具から世界的なムーブメントになった決定打が、2009年に刊行されたクリストファー・マクドゥーガルのノンフィクション 『BORN TO RUN 走るために生まれた』 です。 「なぜ高機能シューズが進化し続けているのに、ランナーの故障は減らないのか?」という問いを軸に、ララムリの走りと文化を追ったこの本は世界的なベストセラーとなり、ベアフット(裸足)ランニング/ミニマルシューズの一大ブームを巻き起こしました。 この流れの中で、 ビブラム ファイブフィンガーズに代表されるミニマルシューズの登場 自作ワラーチのDIY文化の広がり ワラーチ限定のリレーマラソンなど、国内イベントの開催 といった動きが生まれ、日本にも定着していきます。 面白いのは、その後ランニング界が 真逆の方向=厚底カーボン へ大きく振れたこと。今、私たちは「極厚」と「極薄」という両極端の選択肢を、両方手にしているわけです。(そして私は、まんまと両方履いています) 厚底 vs ワラーチ ― 同じVibramなのに、真逆 私の普段の相棒は HOKA SPEEDGOAT 6。当たり前ですが、両者はまったくの別物でした。 ...