今年4月、娘が大学に進学した。入学の喜びも束の間、奨学金の申請手続きを進める中で、ふと手が止まった瞬間があった。

画面に表示されたのは、「利率固定方式」か「利率見直し方式」を選んでくださいという一文。どちらにしますか、と聞かれても、そもそも何が違うのかよくわからない。ざっと読んでみても、難しい言葉が並んでいるだけでピンとこない。

「これ、なんとなくで決めていいのかな?」

同じような迷いを抱えている保護者や学生も多いのではないかと思い、自分なりにJASSOの公式サイトをじっくり読み込んで調べた内容をまとめることにした。結論から言うと、調べれば調べるほど意外とシンプルな構造だとわかってきた。


先に結論(忙しい人へ)

  • 第二種奨学金の「固定」と「変動(利率見直し方式)」は、どちらも上限が年3.0%で同じ(基本月額の場合)。
  • そして2026年7月、固定方式がついに上限ちょうどの3.000%に到達しました。同じ月の変動は**2.000%**です。
  • つまり今は、固定を選ぶ=制度上いちばん高い利率を確定させることになります。上がる余地はもうありません。
  • 変動の天井も同じ3.0%。最悪でも固定と同じところまでしか上がらず、それまでは固定より低い——という関係になっています。
  • 300万円を20年で返す試算では、変動が最悪シナリオでも固定より約15万円お得(楽観なら約35万円)。
  • ただし「毎月の返還額を最初から1円まで確定させたい」なら固定にも意味はあります。
  • わが家(第二種)は、最終的に変動を選びました

以下で、その根拠を数字と試算でくわしく見ていきます。


1. そもそも:利子がかかるのは「第二種奨学金」だけ

まず前提の整理から。JASSOの奨学金には大きく2種類ある。

  • 第一種奨学金:無利子。成績や家計に一定の基準がある
  • 第二種奨学金:有利子。基準は第一種より緩やか

わが家が申請したのは第二種なので、利子がかかる。だからこそ「どちらの金利方式を選ぶか」が重要な問題になってくる。

この記事は第二種奨学金の利率方式の選択に絞った内容だ。第一種の方はそもそも利子がないので、この選択は関係ない。


2. JASSO奨学金の「固定」と「変動」、何が違うの?

「まず制度をちゃんと理解しよう」と思い、JASSOの公式サイトを読み込んだ。ざっくりまとめると以下の通りだ。

比較項目 利率固定方式 利率見直し方式(変動)
利率の決まり方 貸与終了時点の利率で固定 貸与終了時点の利率で決定後、約5年ごとに見直し
見直し頻度 なし(全期間固定) 約5年ごと
金利上昇時のリスク なし(固定のため影響を受けない) あり(上昇すると返還額が増える)
金利低下時のメリット なし(固定のため恩恵を受けない) あり(低下すると返還額が減る)
上限金利 年3.0% 年3.0%

表を見ていて、ひとつ重要なことに気づいた。

「どちらを選んでも、上限金利は年3.0%」

これが、この問題を考えるうえで最も大切なポイントになる。


3. 今の金利、実際どのくらい?JASSO奨学金の利率推移

制度の仕組みはわかった。では実際の数字はどうなのか。JASSOの公式サイトで利率の推移を確認した。

以下は近年の貸与利率の推移(概算・参考値)だ。

年度 利率固定方式(概算) 利率見直し方式(概算)
2020年度 約0.03% 約0.005%
2021年度 約0.03% 約0.005%
2022年度 約0.03% 約0.004%
2023年度 約0.20% 約0.10%
2024年度 約1.30% 約0.50%
2025年度 約2.00% 約0.90%
2026年1月 約2.512% 約1.10%
2026年4月 2.722% 1.874%
2026年5月 2.922% 2.000%
2026年6月 2.922% 1.900%
2026年7月 3.000%(上限到達) 2.000%

※2026年4月以降はJASSO「令和8年度 貸与利率一覧」より、**その月に貸与終了した人(基本月額・平成19年4月以降の採用者)**に適用される利率。2025年度以前は参考値。 ※医歯薬系などで月額を増額した場合の「増額部分」には、別途0.2%が加算されます(2026年7月は固定3.100%・変動2.200%)。

これを見て、正直驚いた

2020〜2022年度はほぼゼロに近い超低金利だったのに、日銀がマイナス金利政策を解除した2023年以降、急速に上昇している。わずか3〜4年で固定方式は0.03%から3.000%まで、実に100倍に跳ね上がった。しかもこの3.000%は、制度上の上限そのものだ。

「もし数年前に固定を選んでいたら、あの超低金利で固定できていたのに……」という気持ちにもなったが、それは結果論。今から選ぶなら、今の水準で考えるしかない。


4. 固定が「上限」に到達した——という異常事態

この記事を最初に書いたのは2026年4月だった。そのとき固定方式は2.512%で、私は「上限3.0%まで残り0.5%しかない」と書いた。

その後、確認して驚いた。

2026年7月、固定方式は3.000%——上限そのものに到達していた。

  • 固定方式:3.000%(上限=天井)
  • 見直し方式(変動):2.000%
  • 両方式の上限:3.0%

これが何を意味するのか、少し落ち着いて考えてみてほしい。

「固定を選ぶ」=制度上いちばん高い利率で確定させること

固定方式は、貸与終了時点の利率が返還完了までずっと続く仕組みだ。その利率が、いま上限に張り付いている。

つまりいま固定を選ぶということは、この制度で取りうる最も高い利率を、20年間確定させるということになる。これより高くなることはないが、同時に、これ以上有利になる余地もない。

一方、変動の「最悪」も同じ3.0%

ここが肝心なところだ。

一般的な住宅ローンの変動金利には上限(キャップ)がない。だから「変動は怖い」というイメージがある。でもJASSO奨学金の変動方式は、3.0%というキャップ付きの変動金利だ。天井が決まっている。

そして今、その天井は固定方式の利率とぴったり同じになった。整理するとこうなる。

いまの利率 将来いちばん悪くなったとき
固定方式 3.000% 3.000%(変わらない)
変動方式 2.000% 3.000%(上限まで)

変動は、最悪でも固定と同じところにしか行き着かない。そしてそこに行き着くまでは、固定より低い。

固定が上限より下にいた頃は「変動が上限まで上がると固定より不利になる」局面がありえた。しかし固定が上限に到達したいま、その逆転は起こりにくくなっている。

ただし、ここは正直に

いくつか注意点も書いておく。

  • ここに挙げた利率は「その月に貸与が終了した人」に適用される数字だ。いま在学中の人が実際に適用されるのは、卒業して貸与が終わる時点の利率になる。今後の金利情勢によっては、この関係が変わる可能性はある。
  • 上限3.0%は基本月額の話。増額貸与を受けた場合、増額部分には0.2%が加算される。
  • 制度そのものが将来見直される可能性もゼロではない。

それでも、「いま判断するなら」という前提に立てば、数字はかなりはっきりした答えを示していると思う。


5. 実際どのくらい差が出るの?試算してみた

頭では理解できても、金額でイメージできないと腑に落ちない気がして、試算してみた。

試算条件

  • 借入総額:300万円
  • 返還期間:20年(240ヶ月)
  • 固定方式:**3.000%**で全期間固定(2026年7月の利率)
  • 変動方式:**2.000%**からスタート(同月の利率)

変動方式:3つのシナリオ

シナリオ 変動の推移 想定状況
A(楽観) 2.0%のまま維持 日銀が利上げを停止・現状維持
B(中立) 5年後2.5%、10年後3.0%へ段階上昇 緩やかな金利上昇が続く
C(悲観) 5年後に3.0%(上限)へ到達し維持 急速な金利上昇

試算結果

月々の返還額(目安) 総返還額(概算) 固定との差額
固定 3.000% 約16,638円 約399万円
A(楽観)2.0%維持 約15,177円 約364万円 約35万円 お得
B(中立)段階上昇 15,177→15,726→16,108円 約379万円 約21万円 お得
C(悲観)5年後3%到達 15,177→16,287円 約384万円 約15万円 お得

※元利均等返還として計算した概算値。実際の返還額はJASSOの返還シミュレーターでご確認ください。

この結果を見て、率直に感じたこと。

注目してほしいのは、3つのシナリオすべてで、変動のほうが安いという点だ。

いちばん悲観的なシナリオC——5年後に上限3%まで一気に上がって、そのまま15年間下がらない——という条件でさえ、変動は固定より約15万円少なくて済む。理由は単純で、最初の5年間を2%で走れるぶんが、そのまま差として残るからだ。

これは変動が優秀だからではない。固定がすでに天井にいるからだ。天井にいる以上、そこから下りてくることはない。一方の変動は、上がるとしても同じ天井まで。だから「最悪でも引き分け、それまでは勝ち」という構図になる。


6. 結局、どっちを選べばいい?

正直、絶対的な正解はない。ただ、今の金利水準をふまえると、以下のように整理できると思う。

変動(利率見直し方式)が向いている人

  • 上限3%を許容できる人
  • 繰り上げ返済を積極的に行う予定がある人
  • 返還期間が比較的短い人
  • 金利の動向にある程度関心を持てる人

固定(利率固定方式)が向いている人

  • 毎月の返還額を最初から確定させたい人
  • 将来の家計計画を厳密に立てたい人
  • 「金利のことは考えたくない、とにかく安心感が欲しい」という人

本質的な結論

固定が上限に到達したいま、話はかなりシンプルになった。

固定=いきなり天井。変動=天井は同じだが、いまはその下にいる。

「変動は上がるかもしれないから怖い」というのは正しい感覚だ。でもこの制度に限っては、上がった先が固定と同じ場所である以上、その怖さの上限はあらかじめ決まっている。

もちろん、これは「経済的にどちらが有利か」という一面の話でしかない。毎月の返還額が1円単位で最初から決まっている安心感には、数字に表れない価値がある。家計を厳密に組み立てたい人や、金利のニュースに一喜一憂したくない人にとっては、固定を選ぶ理由は十分にある。

わが家は最終的に変動(利率見直し方式)を選びました。 理由はシンプルで、固定がすでに上限に達していて、固定を選ぶメリットが見いだせなかったからです。繰り上げ返済も、できる限り積極的にやっていくつもりでいます。


おわりに:同じように迷っている人の参考になれば

申込の際にほとんど説明されず、なんとなくどちらかを選んでしまう人も多いのではないかと思う。

仕組みを理解してから選ぶのと、なんとなく選ぶのでは、長い返還期間を通じて数十万円の差が出ることもある。同じ状況で迷っている保護者や学生の、少しでも参考になれば嬉しい。

あくまでご自身の返還計画・リスク許容度に応じた判断を。


免責事項: 本記事は個人の調査・見解に基づく情報提供を目的としており、特定の金融商品への契約を推奨するものではありません。掲載している数値は概算・参考値を含みます。最終的な判断はご自身の責任でお願いします。


参考情報源:

  • JASSO「第二種奨学金の利子と利率の算定方法」https://www.jasso.go.jp/shogakukin/about/taiyo/taiyo_2shu/riritsu_santei.html
  • JASSO「第二種奨学金の貸与利率」(令和8年度 貸与利率一覧)https://www.jasso.go.jp/shogakukin/about/taiyo/taiyo_2shu/riritsu/index.html

※本記事の利率は2026年8月5日時点で上記JASSO公式ページに掲載されていた「令和8年度 貸与利率一覧(当月中に貸与終了した者の貸与利率/基本月額・平成19年4月以降の採用者)」に基づいています。利率は毎月更新されるため、申込・選択の前に必ず最新の数値をご確認ください