もし、お父さんやお母さんが「人生で本当に大事なこと」を手紙に書いて残してくれたら、みなさんは読んでみたいですか?

『経済評論家の父から息子への手紙 お金と人生と幸せについて』(山崎元・著)は、まさにそんな一冊です。

著者の山崎元(やまざき・はじめ)さんは、日本を代表する経済評論家。テレビや本で「お金の正しい増やし方」をわかりやすく教えてくれる人気者でしたが、がんと闘いながら、2024年1月1日に65歳で亡くなりました

この本は、山崎さんが大学生になった息子さんへ、人生の最後に「どうしても伝えたいこと」を書き残したもの。実際に息子さんへ送った手紙も、そのまま全文のっています。

人生の最後に、父が息子へ書いた手紙。その全文が、この本には収められている。(Photo: CC0, via Wikimedia Commons)

「お金の心配をせず、自由に気分よく生きていくために」――経済のプロが命をかけて残したメッセージを、中学生でもわかる言葉でまとめてみました。

ポイント1:お金は「目的」じゃなくて「道具」

まず、この本のいちばん土台になる考え方から。

山崎さんは、お金そのものを人生の目的にしてはいけないと言います。お金は、自由に、気分よく生きるための「道具」にすぎないからです。

お金があると、

  • やりたくないことを「やらない」と選べる
  • 困ったときにあわてずにすむ
  • 自分の好きなことに時間を使える

つまり、お金の本当の役割は「自由を守ること」。ゲームで例えるなら、お金は高得点そのものではなく、自分の好きなルートを選ぶための「アイテム」なんです。アイテム集めに夢中になって、肝心の冒険を楽しめなかったら本末転倒ですよね。

ポイント2:お金持ちになる人は「リスクを取る側」にいる

では、世の中でお金持ちになるのはどんな人でしょう?

山崎さんの答えはハッキリしています。「リスクを取って、株式のように働いた人」です。

働き方には、大きく2つのタイプがあります。

  • 利息タイプ:決められた仕事をして、決められた給料をもらう(安定しているけど、大きくは増えない)
  • 株式タイプ:うまくいくか分からないことに挑戦して、成功したら大きな見返りを得る

会社を作った人や、新しいことに挑戦した人が大金持ちになるのは、この「株式タイプ」の働き方をしているから。もちろん失敗することもあります。でも、若いうちの失敗は取り返しがつく。だからこそ山崎さんは息子さんに「リスクを取ることを恐れるな」と伝えています。

部活で例えるなら、レギュラー争いに手を挙げない人に、活躍のチャンスは回ってきません。挑戦しないことこそが、じつはいちばんのリスクなんです。

ポイント3:「モテる人」になりなさい

意外なアドバイスがこれ。山崎さんは「モテることが大事だ」と大まじめに書いています。

といっても、恋愛の話だけではありません。ここでいう「モテる」とは、「この人と一緒に働きたい」「この人に仕事を頼みたい」と思われる魅力のこと。

  • 約束を守る
  • 機嫌よくいる
  • 人の悪口を言わない
  • 自分の得意なことで人の役に立つ

仕事もチャンスも、結局は「人」が運んできてくれます。だから、勉強やスキルと同じくらい、人としての魅力=人材価値を高めることが、将来の武器になるのです。クラスで「あの人と同じ班になりたい」と思われる人を想像すると、わかりやすいかもしれません。

ポイント4:過去の損は忘れていい――「サンクコスト」の話

ゲームに課金しすぎて「ここでやめたらもったいない」と、さらに課金してしまった……。そんな経験はありませんか?

すでに払ってしまって、もう取り返せないお金や時間のことを「サンクコスト(埋没費用)」と言います。

山崎さんの教えはシンプルです。「過去に払ったものは、これからの判断に関係させるな」

考えるべきは「今までいくら使ったか」ではなく、「これから先、続ける価値があるか」だけ。映画がつまらなかったら、チケット代を払っていても途中で出ていい。合わない習い事は、道具をそろえた後でもやめていい。

過去を悔やむより、未来のために判断する。これはお金だけでなく、人生全部に使える考え方です。

ポイント5:お金の増やし方は、たった1行で終わり

経済評論家として何十年も活躍した山崎さんが、最後にたどりついた「お金の増やし方の正解」は、拍子抜けするほどシンプルです。

「稼いで、貯めて、余ったお金は全世界の株にまるごと投資して、あとはほったらかし」

これだけ。世界中の会社の株を少しずつまとめ買いできる「全世界株式インデックスファンド」という商品を、手数料の安いものでコツコツ買い続ける。売ったり買ったりを繰り返す必要はありません。

そして、もうひとつ大事な警告があります。

銀行や証券会社の窓口で勧められる商品は、買ってはいけない。

なぜなら、向こうが熱心に勧めてくる商品ほど、手数料が高くて売る側が儲かる仕組みになっているから。「親切そうなプロ」ほど疑えというのは、プロ中のプロだった山崎さんだからこそ言える、重みのある言葉です。

ポイント6:「転職できる自分」でいることが最強の保険

山崎さんは、なんと人生で12回も転職した人です。ふつうの会社員としてはかなり珍しい経歴ですが、だからこそ言えるアドバイスがあります。

「ひとつの会社にしがみつかなくていい。ただし、いつでも転職できる自分でいなさい」

会社が絶対につぶれない保証はないし、上司や仕事が合わないこともあります。そのときに「ここを辞めたら生きていけない」と思っていると、嫌なことにもノーと言えなくなってしまう。逆に「自分はよそでも通用する」という自信があれば、堂々と働けます。

そのために大事なのが、若いうちに自分の「得意分野」を作っておくこと。山崎さんは「28歳までに自分の専門の軸を決めるといい」と具体的な目安まで示しています。中学生のみなさんなら、まずは「好きで、ついつい時間を使ってしまうこと」を大切にするところからで十分。それが将来の専門分野のタネになります。

ポイント7:仲間とは「気持ちよく」付き合う。お酒の飲み方まで

この本のユニークなところは、「お酒の飲み方」まで手紙に書いてあることです。人生の最後に息子へ伝えることとして、わざわざお酒の話を選ぶなんて、ちょっと面白いですよね。

でも中身は、大人になる前に知っておいて損のない話です。

  • お酒は楽しく飲むもので、つらさをごまかす道具にしない
  • 飲みの席での失敗は、積み上げた信用を一晩で壊すことがある
  • 相手に無理に飲ませない。自分も無理をしない

つまりこれは、お酒の話の形をした「仲間との付き合い方」の話なんです。友だちとの関係も同じで、ノリに流されて誰かを傷つけたり、無理をして自分をすり減らしたりしたら、長い目で見て必ず損をします。

山崎さんは、お金と同じくらい「気分よく付き合える仲間」を人生の財産だと考えていました。実際、闘病中の山崎さんを支えたのも、お金ではなく仲間だったそうです。

父から子へ。手紙という形で渡されたのは、お金の知識ではなく「どう生きるか」だった。(Photo: CC BY 2.0, via Wikimedia Commons)

ポイント8:幸せは「人との比較」からは生まれない

お金の話の最後に、山崎さんは「幸せとは何か」について書いています。

多くの人は、「友だちより良いものを持っている」「あの人より上にいる」という他人との比較で幸せを感じようとします。でも、比較には終わりがありません。上には必ず上がいるからです。

山崎さんの結論はこうです。幸せは、自分で自分を認められること(自己承認)から生まれる

SNSでキラキラした投稿を見てモヤモヤするのは、他人のものさしで自分を測っているから。「自分は今日、これができた」「自分はこれが好きだ」という自分のものさしを持っている人が、お金があってもなくても、気分よく生きられるのです。

まとめ:今日からできる3つのこと

『経済評論家の父から息子への手紙』の教えを、中学生の生活に置きかえるとこうなります。

  1. 小さな挑戦を1つしてみる(委員会に立候補する、発表で手を挙げる。若いうちの失敗はぜんぶ経験値!)
  2. 「一緒にいて気持ちいい人」を目指す(約束を守る、機嫌よくいる。それが将来の「人材価値」になる)
  3. 「もったいないから続ける」をやめてみる(サンクコストは忘れて、「これから価値があるか」で決める)

この本がほかのお金の本とちがうのは、死を目の前にした父親が、本気で息子の幸せを願って書いていることです。だからお金のテクニックの話が、いつのまにか「どう生きるか」の話になっていきます。

巻末には、山崎さんが実際に息子さんへ送った手紙が全文のっています。自分が「息子」になったつもりで読むと、きっと心に残るはずです。気になった人は、ぜひ本も手に取ってみてください!


5人の子を持つ父として、私はこの本を「自分の子どもたちに渡したい一冊」として読みました。お金の増やし方はたった1行、あとは生き方の話。息子さんへの手紙の全文は、何度読んでも胸に迫ります。お子さんやお孫さんが社会に出る前の贈り物としても、自信を持っておすすめできます。

経済評論家の父から息子への手紙 お金と人生と幸せについて
山崎元/Gakken。がんと闘った経済評論家が、大学生の息子に遺した「お金と自由と幸せ」の授業。実際の手紙を全文収録
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