お金持ちになるのに「頭の良さ」はいらない?──世界で600万部売れた『サイコロジー・オブ・マネー』をやさしく解説!

「お金の勉強」と聞くと、むずかしい計算や投資のテクニックを想像しませんか? でも、世界中で600万部も売れた大ベストセラー『サイコロジー・オブ・マネー』(モーガン・ハウセル著)は、まったく逆のことを教えてくれます。 「お金で成功するかどうかは、頭の良さよりも“心の持ち方”で決まる」 著者のモーガン・ハウセルさんは、アメリカの有名な金融コラムニスト。この本はウォール・ストリート・ジャーナル紙から「ここ数年で最高かつ、最も独創的なお金の本」と絶賛され、日本でも21万部を超えるヒットになっています。 この記事では、この本の大事なポイントを8つにしぼって、中学生が読んでもわかるくらいやさしい言葉でまとめました。「投資はむずかしそう」と感じている人にこそ、読んでほしい内容です。 ポイント1:清掃員が8億円を残せた理由 この本の冒頭には、ロナルド・リードさんという実在の人物が登場します。彼はガソリンスタンドの店員や清掃員として一生働いた、ごくふつうの人。高い給料をもらっていたわけでも、宝くじに当たったわけでもありません。 ところが92歳で亡くなったとき、なんと約8億円もの財産を残していたことがわかり、アメリカ中が驚きました。 秘密は特別な才能ではありません。彼がやったのは、 収入の一部をコツコツ先取りで貯蓄する それを優良企業の株に投資して、何十年もほったらかしにする たったこれだけです。 一方で本には、リチャード・ファスコーンという超エリートの金融マンも登場します。ハーバード大学出身で大企業の役員にまでなった彼は、無理な借金で豪邸を買い、リーマンショックで破産してしまいました。 学歴も知識も完璧だった人が失敗し、ふつうの清掃員が大成功した。つまり、**お金は「知識」より「行動と習慣」**で決まるのです。これが本書全体を貫くメッセージです。 ポイント2:「複利」は雪だるまと同じ この本でいちばん大事な言葉が「複利(ふくり)」です。 複利とは、増えたお金がさらにお金を生むしくみのこと。雪だるまを転がすと、大きくなるほど一回転でくっつく雪の量が増えますよね。あれとまったく同じです。 たとえば100万円が毎年10%ずつ増えるとします。1年目は110万円、2年目は121万円…と最初はじれったいほどゆっくり。でも50年続けると、なんと約1億1,700万円。100倍以上です。増え方が「たし算」ではなく「かけ算」になるのが複利のすごさです。 世界一有名な投資家ウォーレン・バフェットの財産は約10兆円ですが、そのほとんどは、じつは65歳をすぎてから増えたもの。彼のすごさは天才的な投資テクニックよりも、「10歳のころから80年以上、投資をやめなかったこと」なんです。 もしバフェットが30歳で投資を始めて60歳でやめていたら、財産は今の1%にも届かなかったと著者は計算しています。 時間こそが最強の武器。「投資を始めるのに最適な日は、いつだって今日」なのです。 ポイント3:成功には「運」もまじっている ちょっと意外なポイントがこれ。著者は「成功は実力だけでは決まらない。運の要素も大きい」とはっきり言います。 マイクロソフトを作ったビル・ゲイツは、1968年当時、世界でもほとんど例のない「コンピューターが自由に使える高校」に通っていました。100万人に1人レベルの幸運です。もちろん彼の努力と才能は本物ですが、あの環境がなければ、今のマイクロソフトはなかったかもしれません。 ここから学べる教訓は2つあります。 成功した人のマネを全部しても、同じ結果にはならない(その人の運までコピーできないから) 失敗した人を「努力不足だ」と責めすぎない(運が悪かった部分もあるから) だから、SNSで話題の「億り人」の派手な手法をマネするより、多くの人に長く当てはまる「地味だけど確実なパターン」(コツコツ積み立てて長く続ける、など)に注目したほうがいい、というわけです。 ポイント4:「もう十分」と言える人が最後に勝つ お金で失敗する人に多いパターンは、「もっと、もっと」と欲張ってしまうことです。 本書には、何百億円も持っていたのに、さらに儲けようと違法な取引に手を出して人生を台なしにした大富豪たちの話が出てきます。彼らに足りなかったのは、お金ではなく「足るを知る心」でした。 著者はこう言います。 「もう十分」と思える気持ちこそが、いちばん大切なお金の能力だ。 ゴールのないマラソンを走り続ければ、必ずどこかで倒れます。年収が上がっても、周りと比べて「まだ足りない」と感じ続ける限り、いつまでも満たされません。 そして著者は、どれだけ儲かる話でも絶対に賭けてはいけないものを3つ挙げています。「評判・自由・家族や友人」。この線引きを持っている人が、最後に勝つのです。 ポイント5:本当のお金持ちは「見えない」 高級車、ブランドものの時計、豪華な旅行の写真――。SNSにはお金持ちっぽい人があふれています。 でも著者は面白いことを言います。「高級車に乗っている人は、車にお金を使ってしまった人。本当の富は、使われずに残っているお金だから、目に見えない」。 ポイント1のリードさんを思い出してください。彼が8億円持っていると気づいた人は、生前ひとりもいませんでした。見た目はただの倹約家のおじいさんだったからです。 つまり、「お金持ちに見えること」と「お金持ちであること」は正反対とすら言えるのです。同僚の新車や知人のタワマン暮らしがうらやましくなったときは、この言葉を思い出してみてください。 ポイント6:貯蓄は「自由」を買うためのもの 「なんのために貯蓄するの?」と聞かれたら、この本の答えはシンプルです。 自由を買うため。 お金があると、 嫌な仕事を「嫌だ」と断れる 病気や失業などのトラブルがあってもあわてない 自分の好きなことに、好きなタイミングで時間を使える つまり、貯蓄とは「自分の時間を自分でコントロールする力」を手に入れることです。 著者によると、幸福度を大きく左右するのは収入の高さそのものより、「自分の生活を自分で決められている感覚」なのだそうです。高級車やブランド品よりも、じつはこれがいちばんの贅沢だと著者は言います。 そしてもうひとつ大事なのが、「理由がなくても貯蓄していい」ということ。「マイホームのため」「老後のため」と目的がなくても、貯蓄そのものが未来の選択肢を増やしてくれるからです。転職したくなったとき、家族に何かあったとき、面白いチャンスが目の前に現れたとき――手元にお金がある人だけが、自分の意志で動けます。 ポイント7:未来は予想できない。だから「余裕」を持とう 天気予報だって外れるのに、何年も先の経済を正確に予想できる人はいません。リーマンショックも、コロナショックも、ほとんどの専門家は予想できませんでした。 だからこそ大事なのが「余裕(よゆう)を持つこと」。本書では「誤りの余地(room for error)」と呼ばれています。 生活費の全部を投資に回さず、現金も残しておく 「予想が外れても大丈夫」な家計の計画を立てる 「これくらい増えるはず」というリターンの見積もりは、少し低めにしておく 車のシートベルトと同じです。事故が起きると思って乗る人はいないけれど、万が一のために必ずつける。お金も同じ考え方で守るのです。 「余裕なんてもったいない」と思うかもしれませんが、余裕があるからこそ、大暴落が来ても投資をやめずに続けられる。つまり余裕は、ポイント2の複利を最後まで働かせるための「保険」でもあるのです。 ポイント8:完璧な正解より「続けられる方法」を選ぶ 最後は、著者のいちばん現実的なアドバイスです。 数学的にいちばん正しい方法があっても、途中でやめてしまったら意味がない。それより、多少ゆるくても「自分が安心して続けられる方法」のほうが、結果的にうまくいく――著者はこれを「合理的(rational)であるより、理にかなっている(reasonable)ほうがいい」と表現します。 ダイエットに例えるとわかりやすいです。栄養学的に完璧でも味気ない食事メニューは、たいてい三日坊主で終わります。それより、少しゆるくても続けられるメニューのほうが、1年後には確実にやせている。資産づくりもまったく同じです。 たとえば、理論上いちばん効率的な投資配分でも、暴落のたびに不安で眠れなくなって売ってしまうなら、その人には向いていません。それより、現金を多めに残した「ゆるい配分」で、どんな相場でも淡々と積み立てを続けられるほうが、長い目で見れば資産は育ちます。 ...

August 8, 2026

「1億円ためないと自由になれない」って本当?──『「パラレルインカム」のはじめ方』をやさしく解説!

「FIRE(経済的自立と早期リタイア)」という言葉を聞いて、こう思ったことはありませんか? 「1億円ためて仕事を辞める? そんなの、自分には無理だ」 たしかに、よくあるFIRE本のゴールはかなり遠い場所にあります。でも、この『「パラレルインカム」のはじめ方』が教えてくれるのは、「仕事は辞めない。それでも自由になる」という第三の道です。表紙にも「年収300万円からできる進化版FIRE」と書かれています。 今回は、この本の考え方を、むずかしい言葉をできるだけ使わずに解説します。投資の知識がゼロでも、最後まで読めば「自分は次に何をすればいいのか」がはっきりするはずです。 著者はどんな人? 著者は泉正人(いずみ・まさと)さん。累計64万人が学んだといわれるマネースクール「ファイナンシャルアカデミー」の代表です。監修も同アカデミーが担当しています。 自分自身が会社を立ち上げ、気づけば「パラレルインカム」を実践していた——という体験がベースになっているので、机上の空論ではなく、実際に歩いた道の話として読めるのが特徴です。 ポイント1:「お金のなる木」を2本持つ パラレルインカムとは、直訳すると「収入の複線化」。会社の給料という1本の線と並べて、もう1本の収入の線を通す、という意味です。 大事なのは、その2本目が「アルバイト」ではないということ。 労働所得(働いて得るお金) + 資産所得(働かなくても入ってくるお金) これがパラレルインカムの正体です。本書では、これを「お金のなる木を2本持つ」と表現しています。1本目は自分で水をやり続ける木、2本目は勝手に実をつけてくれる木、というイメージです。 副業をもう1つ増やすのは、水やりする木を増やすのと同じ。収入は増えても、時間はどんどん減っていきます。目指すのは、そこではありません。「休んでも止まらない流れ」を1本つくることが、この本の出発点です。 ポイント2:FIREとのいちばん大きな違いは「仕事を辞めないこと」 FIREは「早期リタイア」、つまり仕事を辞めるのがゴールです。でも著者は、そこに疑問を投げかけます。 辞めたあと、時間を持て余してしまう人が意外と多いからです。 パラレルインカムでは、仕事は続けます。ただし、お金のためだけにイヤイヤ続ける仕事ではなく、「好きだからやる仕事」に変えていく。ここが決定的な違いです。 学校でも会社でも、「やらされている作業」と「自分で選んだ活動」では、同じ時間でも疲れ方がまるで違いますよね。パラレルインカムが目指すのは、後者の状態です。 さらに、仕事を続けることには現実的なメリットもあります。収入の柱が2本あれば、片方が不調でも生活は崩れません。株価が下がった年も給料は入るし、病気や転職で働けない時期があっても資産所得が支えてくれる。辞めないという選択は、安全装置でもあるのです。 ポイント3:ゴールは「1億円」ではなく「生活費 < 資産所得」 この本のゴールラインは、とてもシンプルです。 毎月の生活費を、資産所得が上回ること たとえば生活費が月20万円なら、資産所得が月20万円をこえた瞬間、あなたは「働かなくても生きていける状態」になります。そこから先の労働は、生活のためではなく、やりたいからやる労働に変わります。 「1億円」という数字を目標にすると気が遠くなりますが、「月20万円」なら、まだ手が届きそうに感じませんか。ゴールの置き方を変えるだけで、道のりの見え方は変わります。 しかも、このゴールにはもう1つの近づき方があります。それは、生活費のほうを下げること。生活費が月30万円の人と月18万円の人では、必要な資産所得がまったく違います。支出を見直すことは、我慢ではなくゴールラインを自分のほうへ引き寄せる作業なのです。 ポイント4:順番をまちがえない「4つのステップ」 本書は、実現までの道のりを4つの段階に分けています。 労働所得を増やす 資産構築をする(増えた分をためて、元手をつくる) 資産所得をつくる(元手を働かせる) 仕事でも自己実現を達成する ここで大事なのは、順番を飛ばさないことです。 いきなりステップ3から始めようとする人は、とても多い。でも元手がない状態で資産所得だけを追いかけるのは、練習せずに試合に出るようなものです。まずは本業の収入を上げ、支出をコントロールして、種を確保する。地味ですが、ここが土台になります。 ポイント5:「お金の7か条」から学ぶ、日常の習慣 本書の第2章には、暮らしの中で効いてくる7つの心がまえがまとめられています。特に取り入れやすいのが、この2つです。 ① 欲しいものを買う前に、お金を迂回させる 給料が入ったら、使う前に一部を別の場所へ「迂回」させる。いわゆる先取り貯蓄です。残ったお金で暮らす仕組みにすれば、意志の強さに頼らなくてすみます。 ② 資産運用は「自転車の運転」と考える 自転車は、本を読んだだけでは乗れません。最初は転びます。でも一度乗れるようになれば、一生忘れない。運用も同じで、小さく始めて体で覚えるものだ、という考え方です。 7か条にはほかにも、「お金に働いてもらうことをポジティブにとらえる」「投資の本当のリスクを知り、コントロールする」といった項目が並びます。リスクはゼロにするものではなく、正体を知って手なずけるもの——この姿勢が本書全体を貫いています。 ポイント6:「失敗から学ぶ」より「成功から学ぶ」 「失敗は成功のもと」とよく言われますが、著者の考え方は少しちがいます。 失敗を避けるノウハウと、成功するノウハウは、別物だからです。 失敗をいくら分析しても、それは「やってはいけないこと」のリストが増えるだけ。実際にうまくいっている人のやり方を聞いて、まねをするほうがずっと近道だ、と本書は言います。 部活でも、ケガの原因を研究するより、うまい先輩のフォームを見よう見まねでコピーするほうが上達が早い——そんな感覚に近いかもしれません。ただし、まねる相手は自分が行きたい場所に実際にたどり着いた人を選ぶこと。SNSにあふれる成功談を見分ける目だけは、自分で育てる必要があります。 ポイント7:「FIREの5倍ラク」の根拠と、その注意点 本書のタイトルにもなっている「進化版FIRE」。著者はパラレルインカムを「FIREの5倍ラク」と表現します。 その根拠が、この対比です。 年400万円を得るために必要な元手 FIREの「4%ルール」 1億円 不動産の「20%ルール」 2,000万円 金額が5分の1になるから「5倍ラク」というわけです。本書が資産所得の手段として不動産投資をすすめているのは、この効率の良さが理由です。 ただし、ここは正直に書いておきます。この計算は、借入(ローン)を使うことが前提です。空室、修繕、災害、金利の上昇といったリスクもあり、株式のインデックス投資とくらべて、必要な知識と手間は明らかに多くなります。 「5倍ラク」は「5倍かんたん」ではない。この点については、記事の後半で、実際に賃貸経営をしている立場から詳しくお話しします。 ポイント8:最後に手に入るのは「5つの自由」 では、これだけの手間をかけて、何が手に入るのか。本書は5つを挙げています。 ...

August 6, 2026

「いくらまで使っていいか」の正解は人によって違う?──『THE WEALTH LADDER 富の階段』をやさしく要約

「まずは家計簿をつけて節約しなさい」 「いや、節約より投資でしょう」 「そんなことより起業して収入を増やすべきだ」 お金のアドバイスは、なぜこんなに食い違うのでしょうか。じつは、どれも間違ってはいません。アドバイスが矛盾して見えるのは、話し手が想定している「資産のレベル」がバラバラだからです。 この本は、その混乱をきれいに整理してくれます。ここでは中学生が読んでもわかるくらいやさしい言葉で、要点をまとめていきます。 著者はニック・マジューリさん。アメリカの資産運用会社リソルツ・ウェルス・マネジメントの最高執行責任者(COO)であり、データサイエンティストでもあります。人気ブログ「OfDollarsAndData.com」の書き手で、前作『JUST KEEP BUYING』は日本でも大ヒットしました。前作が「何にいつ投資するか」という戦術の本だったのに対し、本書は一歩引いて「そもそも今の自分に必要な戦略は何か」を問う戦略の本です。土台になっているのは、50年以上・数万世帯分の金融データ。感覚論ではなく数字から導かれた結論なので、説得力があります。 ポイント1:富は「坂道」ではなく「階段」でできている まず著者が言う「富」とは、純資産のことです。持っている財産(現金・投資・不動産など)から、借金(住宅ローン・奨学金・カードの残債など)を引いた金額。年収ではありません。 そして富は、なだらかな坂道のように少しずつ生活が楽になるものではなく、あるラインを超えた瞬間に景色が変わる「階段」だといいます。本書はこれを6段に分けました(1万ドル=約150万円で換算)。 レベル1:資産150万円未満 ── 生存戦略 レベル2:150万円〜1,500万円未満 ── 教育&スキル戦略 レベル3:1,500万円〜1億5,000万円未満 ── 投資戦略 レベル4:1億5,000万円〜15億円未満 ── 起業戦略 レベル5:15億円〜150億円未満 ── 事業拡大戦略 レベル6:150億円以上 ── 資産防衛戦略 ゲームでいえば、レベル1の装備でラスボスに挑んでも勝てないのと同じです。今の自分の段に合った戦い方がある。それが本書の出発点です。 ポイント2:使っていい金額がわかる「0.01%ルール」 本書でいちばん有名なのが0.01%ルール。資産の0.01%(1万分の1)までなら、毎日使っても資産全体はほとんど揺らがない、という考え方です。 資産150万円の人にとっての150円は、資産1,500万円の人にとっての1,500円と同じ重さ。 これをレベル別に見ると、こうなります。 レベル1 ── 余裕なし(数十円〜149円) レベル2 ── スーパーの自由(150〜1,499円) レベル3 ── レストランの自由(1,500〜1万4,999円) レベル4 ── 旅行の自由(1万5,000円〜) たとえばレベル2の人なら、スーパーで250円の卵と350円の卵で悩む必要はもうありません。その100円は資産の0.001%以下で、人生に影響しないからです。逆に、うなぎ屋で3,000円の並と4,500円の特上を迷うなら話は別。この1,500円が「気にしなくていい額」になるのは、資産1,500万円を超えてからです。 節約すべき場面と、堂々とお金を使っていい場面が、数字で線引きされる。ここが痛快なところです。 ポイント3:「収入」ではなく「資産」を基準に使う 多くの人は年収を基準に生活水準を決めます。年収500万円だから特上を頼んでもいい、という発想です。でも著者は、それが落とし穴だと言います。 収入は気まぐれなもの。明日、失われるかもしれない。 会社の業績、病気、部署の廃止──収入は自分では選べません。土台のしっかりしたほうを基準にすれば、生活は崩れにくくなります。 ただし注意点もあります。0.01%ルールが成り立つのは、生活費を収入でまかなえている場合だけ。資産720万円の人が失業したら、1日720円で暮らすことはできません。「資産で使い方を決め、収入で生活を支える」。この二本立てが前提です。 ポイント4:挑戦するかどうかは「1%ルール」で決める 転職しようか、副業を始めようか、資格を取ろうか。迷ったときの物差しが1%ルールです。 その挑戦が資産を1%以上増やす可能性があるなら、やる価値がある。届かないなら、時間と労力を別のことに使う。 レベル1(資産1%=1.5万円)── 時給の仕事、節約が効く レベル2(同15万円)── スキルを磨いて単価を上げる レベル3(同150万円)── 昇進、副業、投資が効いてくる レベル4(同1,500万円)── 起業や大きな挑戦 面白いのは、同じ行動でも資産レベルによって「割に合うかどうか」が変わるという点です。レベル1の人にとって1日100円の節約(年3万円)は、100万円を年3%で運用するのと同じ威力があります。でもレベル3の人が同じ節約に神経をすり減らすのは、時間の使い方としてもったいない。部活で言えば、基礎練が必要な時期と、試合勘を磨くべき時期が違うようなものです。 ...

August 4, 2026

「安くなってから買おう」は、なぜ損なのか?──世界的ベストセラー『JUST KEEP BUYING』をやさしく解説!

株価が下がるニュースを見ると「もう少し待ってから買おう」と思い、上がると「今さら買うのは高いかな」と思う。そうやって迷っているうちに、結局なにもしないまま1年が過ぎた……。そんな経験はありませんか? 今回紹介する『JUST KEEP BUYING(ジャスト・キープ・バイイング)』は、そのモヤモヤに100年以上のデータで答えを出してくれる一冊です。タイトルを直訳すると「ただ買い続けなさい」。じつにシンプルですが、この6文字の裏には、驚くほど納得できる理由があります。 著者のニック・マジューリさんは、アメリカの資産運用会社リソルツ・ウェルス・マネジメントの最高執行責任者であり、データサイエンティストでもある人物。「なんとなくそう思う」ではなく、「データで調べたらこうだった」と語ってくれるのが本書の最大の魅力です。 この記事では、本書の要点を中学生が読んでもわかるくらいやさしくまとめました。むずかしい専門用語は使いません。それでは、さっそく見ていきましょう。 1. 「貯金」と「投資」、どっちを頑張るべき? お金の本を読むと、「まず節約しろ」と言う本と「早く投資しろ」と言う本があって混乱しますよね。本書の答えは明快で、どちらを頑張るべきかは、あなたの今の状況で変わるというものです。 判断のしかたはシンプル。「1年でいくら貯められるか」と「今持っている資産が1年でどれくらい増えそうか」を比べるだけ。 貯められる額のほうが大きいなら「貯金」に、資産が生む額のほうが大きいなら「投資」に力を入れる。 たとえば貯金が30万円しかない人が、投資のリターンを1%上げようと必死に勉強しても、増えるのは年3,000円。それより残業や副業で月1万円多く稼ぐほうが、はるかに効果的です。逆に資産が3,000万円ある人が100円の節約に神経をすり減らすのは、時間の使い方としてもったいない。同じ努力でも、効く場所は人によって違うのです。 2. 「収入の2割を貯金」に縛られなくていい 「手取りの20%は貯金しましょう」というアドバイスをよく聞きます。でも本書は、この手の万人共通のルールを疑います。理由は単純で、収入も家族構成も家賃も、人によってまったく違うからです。 大切なのは、他人が決めた数字ではなく自分が無理なく貯められる額を知ること。計算式もこれ以上ないほど簡単です。 貯められる額 = 収入 - 支出 部活の練習量と同じで、先輩と同じメニューをこなす必要はありません。自分の体力に合った量を、ケガをせずに続けることのほうが結果につながります。貯金も「ゼロでない限り、まずは合格」。少額でも仕組みにしてしまえば、あとは時間が働いてくれます。 ただし、投資を始める前にひとつだけ用意しておきたいのが生活費3〜6か月分の緊急資金です。この現金がないと、急な出費のときに、いちばん売りたくないタイミングで投資を取り崩すことになります。ゲームで言えば回復アイテムを持たずにボス戦へ行くようなもの。守りを固めてから攻める順番が大切です。 3. 節約でがんばるより、収入を増やすほうが強い 支出を削る努力には、必ず限界があります。家賃も食費もゼロにはできないからです。一方で、収入には上限がありません。だから本書は、節約より収入アップに時間を使うことをすすめます。 そのために有効なのが自分への投資。スキルを身につける、資格を取る、経験を積む。人的資本という「自分という資産」を大きくすれば、そこから生まれるお金は一生ものです。 さらに著者は、稼いだお金の使い道として「収入を生む資産を買う」ことを重視します。株式やインデックスファンドは、持っているだけで企業の稼ぎを分けてくれる存在。給料という「自分が働いて得るお金」と、資産という「お金が働いて得るお金」。この2つのエンジンを回すのが、資産形成の王道だというわけです。 4. 昇給したら、生活レベルはどこまで上げていい? 給料が上がったとき、生活をまったく変えないのはつらいものです。かといって全部使えば、お金は永遠に貯まりません。そこで本書が提案するのが、「昇給額の50%ルール」。 増えた収入の半分は使っていい。残りの半分は貯金・投資に回す。 月給が2万円増えたら、1万円は好きに使い、1万円は積立に上乗せする。これなら「頑張ったご褒美」も感じられて、貯蓄率も自然に上がります。ガマンだけの計画は、ダイエットと同じでいつか反動が来ます。続けられるルールこそが最強なのです。 5. 罪悪感なくお金を使う「2倍ルール」 お金の勉強をすると、逆に使うことが怖くなる人がいます。3,000円の服を買うだけで「投資に回すべきでは」と悩んでしまう。これは楽しくありません。 そこで登場するのが2倍ルール。ぜいたくをしたくなったら、同じ金額を投資に回すと決めるのです。1万円の食事に行くなら、1万円を積立に入れる。そこまでして欲しいかを考える判断基準にもなりますし、実行すれば「未来の自分にも同額を渡した」ことになるので、堂々と楽しめます。 お金は使うためにあります。貯めることが目的になってしまうと、何のための資産形成かわからなくなってしまいます。 6. 「安くなるまで待つ」は、神様でも勝てない ここが本書のいちばん有名なパートです。著者は膨大なデータで、2つの方法を比べました。 ひとつは毎月コツコツ買い続ける方法(ドルコスト平均法)。もうひとつは、現金をためておいて暴落したときにまとめて買う方法。しかも後者は「いつが底値かを完璧に言い当てられる」という、神様レベルの反則的な条件をつけての比較です。 結果はどうだったか。多くの期間で、コツコツ買い続けたほうが勝ちました。理由は、待っている間に市場が上がってしまうから。底を待つ人は、上昇分をまるごと取り逃がすのです。 未来を完璧に予測できる神でさえ、待っていては買い続ける人に勝てない。 未来が読めない私たちが、タイミングを当てられるはずがありません。だから答えは、とにかく買い続ける。これがタイトルの意味です。 同じ理由で、まとまったお金が手に入ったときも「様子を見ながら」より早く市場に入れたほうが有利になりやすいとデータは示しています。大事なのは、買わない期間をつくらないことです。 7. 暴落は「入場料」。こわい時こそ買い続ける とはいえ、買い続けるのは口で言うほど簡単ではありません。相場が3割下がり、SNSに悲観的な言葉があふれる時期は必ずやってきます。 本書はその下落を、「リターンを得るために払う入場料」だと表現します。遊園地に入るのにチケット代がいるように、株式の高いリターンには「値動きに耐える」という代金がついている。無料で乗れるアトラクションはないのです。 だからこそおすすめされるのが、自動積立という仕組み。毎月決まった日に自動で買い付ける設定にしておけば、こわくても、忙しくても、機械が淡々と実行してくれます。意志の力に頼らないことが、感情に負けないための最善策です。 そして買う対象は、当てにいく個別株より世界中に分散されたインデックスファンド。プロでも市場平均に勝ち続けるのは至難の業だと、データがはっきり示しています。 8. いちばん大切な資産は、増やせない「時間」 最後に本書が語るのは、お金の話ではありません。時間の話です。 お金は減っても取り戻せます。しかし時間だけは、どんな大富豪でも買い戻せません。だから著者は、お金は時間を取り戻すために使えと言います。時短家電を買う、通勤の短い家に住む、人に頼む。それは浪費ではなく、人生でいちばん貴重な資産への投資です。 資産を増やす目的は、数字を大きくすることではなく、自分の時間を自由にすること。 では、その自由はいくらあれば手に入るのか。本書が紹介するのが有名な「4%ルール」です。資産の4%を毎年取り崩す前提なら、必要な金額は1年の生活費の25倍。年間300万円で暮らすなら7,500万円が目安、という具合に、ぼんやりした不安が「数字」に変わります。 なお「いつ売るのか」についても本書は答えを示しています。売っていいのは、資産の偏りを直すとき、一つの銘柄に集中しすぎているとき、そして人生の目的のためにお金を使うとき。値動きが不安だから売る、は理由になりません。 そして本書は、資産が増えても幸福感がすぐには追いつかない理由にも触れています。だからこそ、遠い将来の目標だけを見つめて今を犠牲にしないこと。今日を楽しみながら、淡々と買い続ける。これが著者の伝えたい姿だと感じました。 私にとっての『JUST KEEP BUYING』 最後に、少しだけ個人的な話をさせてください。 ...

August 4, 2026

厚底シューズ歴7年の私が「ワラーチ」で走ったら、ニヤけが止まらなくなった話

はじめに ― 職場の同僚に「変な履物」を勧められた きっかけは、職場のランニング仲間からの一言でした。 「これ、走れるサンダルなんですよ」 彼はすでにワラーチのユーザーで、実物を持ってきて見せてくれました。薄いゴム板にヒモを通しただけの、いわばゴムのわらじ。正直、最初の感想は「……これで走るんですか?」でした。 そのうえで、こんな提案をもらいます。 「私、もう一足欲しいと思っていまして。自作キットが2足分で3,000円で買えるんですが、割り勘で購入して1足ずつ使いませんか?」 実物を目の前にして説明を聞いているうちに、めっちゃ興味がわいてしまいました。ひとり1,500円。失敗しても痛くない金額です。二つ返事で了承し、購入をお願いしました。 半信半疑のまま自作キットが手元に来て、実際に作って走ってみたわけですが――結論から言うと、しばらく忘れていた「走ることそのものの楽しさ」を思い出しました。 近年の私はすっかり厚底シューズに慣れきっていて、脚を「守られている」状態が当たり前になっていました。そこへワラーチです。一歩ごとに、足裏からズンズンと地面の情報が体に響いてくる。この感覚がとにかく心地よくて、走りながら口元がゆるんでしまう。はたから見れば完全に「ニヤけた変な人」です(笑)。 この記事では、そんなワラーチについて、 そもそもワラーチとは何なのか(発祥地・歴史) 履いて走ることで期待できるメリット 一方で、必ず知っておくべきデメリット・注意点 自作キットの実際 を、初心者なりの実体験を交えてまとめます。 はじめにお断り この記事は、ワラーチ歴わずか2回・計10kmの人間が書いたファーストインプレッションです。ベテランの方から見れば「そこはまだ何もわかってない」という部分だらけだと思います。だからこそ、始めたばかりの人間が何を感じ、何をやらかしたかを、できるだけ正直に残しておきたくて書いています。 親指と人差し指の間を通したヒモが甲でクロスし、足首まわりをぐるりと囲む。靴に慣れた目で見ると、あまりに情報量が少なくて逆に驚きます。 ワラーチとは ― 「走る民族」の履物 ワラーチ(huarache/ワラチェ、ハラッチとも表記)は、メキシコ北西部の先住民族・ララムリ(別名タラウマラ族) が古くから履いてきたサンダルを原型とする履物です。 構造は驚くほどシンプルで、 ソール:足型に切り出した1枚のゴム板(伝統的には廃タイヤ) ストラップ:ソールに開けた穴に通した革ヒモ(現代では主にパラコード) これだけ。クッションもアーチサポートもヒールカウンターもありません。「足裏を石やトゲから守る最低限の板」に、脱げないためのヒモが付いているだけの道具です。 ララムリはメキシコ・チワワ州の峡谷地帯(バランカ・デル・コブレ/通称「銅峡谷」)に暮らし、このサンダルで起伏の激しい山道を100km単位で走ることから「走る民族」と呼ばれてきました。 語源には諸説あり ― 「わらじ」説は本当か? 「huarache」という語は、メキシコ先住民の言語プレペチャ語で「サンダル」を意味する語(kwarachi など)に由来する、というのが一般的な説明です。 一方、日本では 「語源は日本語の"わらじ"だ」という説 がネット上でよく紹介されています。江戸時代に太平洋を渡った日本人が伝えた、という話ですが、これは学術的に裏づけられたものではなく、音の似た偶然から生まれた俗説と考えるのが妥当でしょう。 ただ、形も発想も本当によく似ているのは事実です。薄い板を足裏に当て、ヒモで結ぶ。地球の反対側で同じ答えにたどり着いたと考えると、それはそれでロマンがあります。 後で出てくるゴムシートの写真を眺めていると、素材こそ違え、発想は本当にわらじそのものだなと思えてきます。 ワラーチが世界に広まった理由 ― 『BORN TO RUN』 ワラーチが一部のマニアの道具から世界的なムーブメントになった決定打が、2009年に刊行されたクリストファー・マクドゥーガルのノンフィクション 『BORN TO RUN 走るために生まれた』 です。 「なぜ高機能シューズが進化し続けているのに、ランナーの故障は減らないのか?」という問いを軸に、ララムリの走りと文化を追ったこの本は世界的なベストセラーとなり、ベアフット(裸足)ランニング/ミニマルシューズの一大ブームを巻き起こしました。 この流れの中で、 ビブラム ファイブフィンガーズに代表されるミニマルシューズの登場 自作ワラーチのDIY文化の広がり ワラーチ限定のリレーマラソンなど、国内イベントの開催 といった動きが生まれ、日本にも定着していきます。 面白いのは、その後ランニング界が 真逆の方向=厚底カーボン へ大きく振れたこと。今、私たちは「極厚」と「極薄」という両極端の選択肢を、両方手にしているわけです。(そして私は、まんまと両方履いています) 厚底 vs ワラーチ ― 同じVibramなのに、真逆 私の普段の相棒は HOKA SPEEDGOAT 6。当たり前ですが、両者はまったくの別物でした。 ...

August 3, 2026

なぜ、同じ収入でも「貯まる人」と「貯まらない人」がいるの?──100年読み継がれる名著『バビロンの大富豪』を中学生にもわかるように解説!

毎月まじめに働いているのに、なぜかお金が残らない。かたや、同じくらいの収入なのに、しっかりお金を増やしていく人もいる――。この違いは、いったいどこから生まれるのでしょうか? じつはその答えは、いまから約100年前、いえ、物語の舞台までさかのぼれば数千年前から、まったく変わっていません。 今回紹介するのは、世界中で読み継がれるお金の古典『バビロンの大富豪』(原題 The Richest Man in Babylon)。著者は、アメリカの実業家ジョージ・S・クレイソンさんです。1926年に発表されたこの本は、古代都市バビロンを舞台にした「物語」のかたちで、お金を貯め・守り・増やすための原理原則を教えてくれます。 物語には、いくら働いてもお金がたまらないと嘆く馬車職人や竪琴弾きが登場します。彼らが大富豪アルカドのもとをたずね、富の秘密を教わっていく――そんな親しみやすいストーリー仕立てなので、お金の本が苦手な人でもすっと入っていけます。 むずかしい専門用語はほとんど出てきません。中学生が読んでもわかるくらいやさしいのに、大人が一生使えるお金の知恵がぎっしりつまっている――それが、この本が100年も愛され続ける理由です。今日はその中身を、8つのポイントにしぼってやさしく解説していきます! ① まずは「収入の10分の1」を自分のために取っておく バビロン一のお金持ち・アルカドが、いちばん最初に教えたルールはこれです。 稼いだお金のうち、少なくとも10分の1は、自分のために取っておきなさい。 給料が入ったら、10枚のうち9枚で暮らし、残りの1枚は「なかったもの」として貯金にまわす。たったこれだけです。 ポイントは、余ったら貯めるのではなく、先に貯めること。ゲームでいえば、冒険に出る前にまずセーブしておくようなものです。残ったお金で生活する――この順番にするだけで、財布は少しずつ、でも確実に太っていきます。 「たった10分の1で何が変わるの?」と思うかもしれません。でもアルカドは言います。少しずつでも貯め始めた人の財布には、不思議とお金が流れ込んでくるようになる、と。 おもしろいのは、10分の1を抜いても暮らし向きはほとんど変わらないという点です。人は手元にあるお金を、あればあるだけ使ってしまうもの。だからこそ、最初にひとつまみ取り分けておくだけで、生活の質を落とさずに、着実に資産の芽を育てられるのです。 ② 「必要な出費」と「ただ欲しいだけの出費」を分ける 貯金を始めると、多くの人がこう思います。「10分の1を抜いたら、生活が苦しくなるのでは?」 でも本書はきっぱり言います。欲しいものと、必要なものは、まったくの別物だと。 人の欲望には限りがありません。収入が増えれば、欲しいものも同じだけ増えていく。だから、いくら稼いでも「使いたい欲」に追いつかれてしまうのです。 そこで大事になるのが「予算を立てる」こと。使ってもいい金額をあらかじめ決めておけば、気まぐれな衝動買いにブレーキがかかります。使っていないサブスクや、なんとなく続けている固定費を見直すだけでも、意外と削れるお金は見つかるものです。 ③ 貯めたお金を「働かせる」――お金にもうひとり働いてもらう お金をただ金庫に眠らせておくのは、じつはもったいないこと。本書は、貯めたお金をさらにお金を生む「種」として使いなさいと教えます。 貯めた黄金を働かせれば、それがまた新しい黄金を連れてくる。 これは、畑にまいた1粒の種が、やがて何十粒もの実をつけるのと同じ。お金がお金を呼び、その増えたお金がまた次のお金を呼ぶ。雪だるまが転がるほど大きくなるように、時間を味方につければ、資産はふくらんでいきます。 大事なのは、少額でもいいから「働く場所」にお金を置いてみること。早く始めた人ほど、この雪だるまを大きく育てられます。 本書がすごいのは、この「お金に働いてもらう」という発想を、数千年前の物語の中ですでに語っていること。自分の体は一日24時間しか働けませんが、お金には休みも眠りもありません。あなたが寝ている間も、遊んでいる間も、こつこつと働き続けてくれる――そんなもうひとりの働き手を持てるかどうかが、大きな分かれ道になります。 ④ 大切なお金を「守る」――わからないものには手を出さない お金は、増やすことよりも失わないことのほうがずっと大切です。100かけて増やしても、1回の大失敗でゼロになっては意味がありません。 本書には「黄金の五つの法則」という教えがあり、その中でくり返し警告されるのがこれです。 黄金は、自分がよく知らないものに投資する人から、逃げていく。 SNSやネットで見かける「絶対もうかる」「今だけ」という甘い話ほど、あやしいもの。よく知らないゲームにいきなり大金を課金しないのと同じで、中身が理解できないものには近づかない。これが、お金を守るいちばんの盾になります。 本書には、大金を持ちながらだまされて全財産を失ってしまう人の話も出てきます。共通しているのは、「早く増やしたい」というあせりにつけこまれた点です。判断に迷ったら、その道にくわしい信頼できる人の意見を聞くこと。そして、うますぎる話は「何かおかしい」と一歩引いて考えること。守りを固めてこそ、増やす攻めが生きてきます。 ⑤ 自分の「稼ぐ力」こそ、最大の資本 お金を貯めて、増やして、守る。それも大事ですが、本書はもうひとつ、意外な資産に目を向けさせます。それは――あなた自身です。 稼ぐ力を高めることは、いちばん確実な投資である。 同じ仕事でも、スキルや知識が上がれば、もらえる報酬も上がっていきます。これは、ゲームでレベルを上げると強い装備が手に入るのと似ています。本を読む、勉強する、経験を積む。こうした自己投資は、一度身につけば一生あなたから離れません。 学校でも会社でも、学び続ける人のところに、お金を稼ぐチャンスは集まってくるのです。 しかも、この「稼ぐ力」は不景気にも強いのが特長です。株や不動産の値段は下がることがありますが、あなたが身につけた知識やスキルは、値下がりしません。自分という資本を育てることは、どんな時代でも裏切らない、いちばん確実な投資なのです。 ⑥ 「未来の自分」に、いまから仕送りをしておく 若いうちや元気なうちは、なかなか実感がわかないもの。でも本書は、将来の自分と家族のために、いまから準備しておくことの大切さを説きます。 たとえば、家賃を払い続けるかわりに自分の住まいを持つこと。あるいは、年をとって働けなくなったときのために、少しずつ備えを積み上げておくこと。 これは、遠くにいる「未来の自分」へ、毎月少しずつ仕送りをしておくようなイメージです。いまの自分がほんの少しがまんするだけで、未来の自分がずっと楽になる。金額の大きさよりも「続けること」が大切で、その積み重ねが、安心できる暮らしの土台になります。備えがある人は、心にも余裕が生まれます。 ⑦ 借金は「返せる計画」でコツコツ片づける 本書には、借金まみれだったラクダ商人・ダバシールが、見事に立ち直る物語が出てきます。そのカギになったのが、シンプルなお金の配分ルールでした。 収入の10分の7で暮らし、10分の2で借金を返し、10分の1を自分のために貯める。 ポイントは、借金を返しながらも貯金をやめなかったこと。返済だけに追われると心が折れてしまいますが、少しでも自分のお金が増えていくと、前を向いて続けられます。 借金は、あわてて一気に返そうとしなくて大丈夫。返せる計画を立てて、一歩ずつ。地味ですが、これがいちばん確実な脱出法です。 ⑧ 「幸運」は、行動して備えた人のところにやってくる 最後に、この本がくり返し伝える大切なメッセージです。 幸運の女神は、行動する人に微笑む。 ...

August 2, 2026

お金持ちになるのに「がまん」だけじゃダメ?──200万部突破『お金の大学』を、いちばんやさしく解説!

「お金持ちになりたい!」——そう思ったとき、あなたならどうしますか? 「とにかく節約して、コツコツ貯金する」と答えた人は、じつは半分正解で半分まちがいです。ただ貯めるだけでは、お金持ちにはなれません。 今回紹介するのは、令和で一番売れているお金の本『本当の自由を手に入れる お金の大学』(改訂版)。著者は、YouTubeの人気チャンネル「リベ大」でおなじみの両@リベ大学長さんです。学長さんは高校生のときに起業し、10代で1年に1億円以上を稼いだこともある、お金のプロ中のプロ。 そんな学長さんが「これだけは知っておいてほしい」とまとめたのが、一生お金に困らないための「5つの力」です。この記事では、中学生が読んでもわかるくらいやさしく、それでいて、これから資産形成を始める大人の方にしっかり役立つように、8つのポイントで解説していきます! ① そもそものゴールは「経済的自由」 この本がめざすゴールは、ただの「お金持ち」ではありません。経済的自由という状態です。 経済的自由とは、かんたんに言うと「働かなくても、入ってくるお金だけで生活できる状態」のこと。 生活に必要なお金 < 自動で入ってくるお金 この式が成り立てば、「お金のために、いやな仕事をむりやり続ける」必要がなくなります。好きなことを選べる、自由な人生に近づけるんです。 「自動で入ってくるお金」って何?と思いますよね。たとえば、持っている株からもらえる配当(その会社が「ありがとう」とくれるお金)や、貸したお金の利子などがそうです。最初はほんの少しでOK。この“自分で働かなくても入ってくるお金”を、コツコツ育てていくのがゴールなんです。 そして、そのゴールにたどり着くための地図が、次に紹介する「5つの力」です。 ② 【貯める力】一番効くのは「固定費」を見直すこと 節約というと、「お菓子をがまんする」「安いものを選ぶ」を思いうかべますよね。でも学長さんは、そこより先に見直すべきものがあると言います。それが固定費です。 固定費とは、毎月ほぼ自動で出ていくお金のこと。スマホ代、保険、家賃などがそうです。ゲームの「月額課金」を、使っていないのにずっと払い続けているイメージです。 たとえばスマホを大手から格安SIMに変えると、月5,000円が1,500円になったりします。これだけで1年に約4万円の節約。毎日ジュースをがまんするより、ずっとラクで効果も大きいんです。 もう一つ見直したいのが保険です。日本には「社会保険」という国のしくみがしっかりあるので、じつは民間の医療保険やがん保険は、多くの人にとって入りすぎだと学長さんは言います。「なんとなく安心だから」で入っている保険を見直すだけで、年に何万円も浮くことがあるんです。 一度見直せば、あとは自動でずっとおトク。これが固定費のすごさ。 ③ 【増やす力】お金にも“アルバイト”してもらう 貯めたお金を、ただ貯金箱に入れておくのはもったいない。学長さんは「お金にも働いてもらおう」と言います。それが投資です。 投資と聞くと「ギャンブルでしょ?」とこわく感じるかもしれません。でも学長さんがすすめるのは、世界中の会社にまとめて少しずつ投資する「インデックス投資」という方法。1社だけに賭けるのではなく、クラス全員の平均点を買うようなイメージなので、リスクが低いんです。 そして投資の最強の味方が複利。増えたお金がさらにお金を生み、雪だるまのようにふくらんでいきます。最初は小さくても、時間をかけるほどスピードがどんどん速くなるのが複利のすごさです。 しかも今は「新NISA」という、投資で増えたお金に税金がかからないおトクな制度もあります。ふつうは増えた分の約2割を税金として取られるので、これはかなり大きい。国が「投資してね」と用意してくれた、使わないと損なしくみなんです。 投資で最大の味方になるのは「時間」です。だからこそ、思い立った“今日”が、いつでも一番早いスタートになります。 ④ 【稼ぐ力】収入の入り口を増やす 貯める・増やすと同じくらい大事なのが、そもそもの収入を増やす「稼ぐ力」です。 多くの大人は、収入が「会社の給料」ひとつだけ。でもそれって、イスの脚が1本しかないようなもの。その脚が折れたら(会社をやめることになったら)、一気にたおれてしまいます。 だから学長さんは、給料に加えて「副業」で収入の柱を増やそうと言います。ブログ、動画編集、ハンドメイド作品を売る……好きなことや得意なことがお金になる時代です。 脚が2本、3本とあれば、1本折れても大丈夫。収入の入り口が多いほど、人生は安定するんです。 もう一つ大切なのが、お金の“生み出し方”です。給料は「だれかに雇われてもらうお金」。いっぽう副業の多くは「自分でお金を生み出す力」です。この「自分で生み出す力」は身につけるのが少し大変ですが、一度手に入れれば一生モノの武器になります。 ⑤ 【使う力】お金は「幸せ」に変えてこそ意味がある 「え、使う“力”?貯めるのが大事じゃないの?」と思いますよね。じつはここが、この本のいちばん深いところ。 お金は、ただ持っているだけでは1円も幸せを生みません。使って初めて、思い出や経験、人とのつながりに変わります。 ガチャに全部つっこんで一瞬で終わるより、友だちとの旅行や、ずっと役立つ本にお金を使ったほうが、心に残りますよね。 学長さんがすすめる「いい使い方」の代表が、経験・人・寄付です。旅行やチャレンジといった経験は、あとから「思い出」という財産になります。人へのプレゼントや寄付は、まわりを笑顔にして、それがめぐりめぐって自分にも返ってくる。お金は「ひとりじめ」するより「上手に回す」ほうが、大きな幸せを生むんです。 大切なのは「何を買うか」より「それで自分が本当に幸せになれるか」。 お金は目的ではなく、幸せになるための道具。この考え方を持てるかどうかで、人生は大きく変わります。 ⑥ 【守る力】せっかくのお金を減らさない 最後の力は、貯めて増やしたお金を「守る」力です。じつは、お金を失う落とし穴はあちこちにあります。 詐欺(さぎ):「絶対もうかる」という話は、ほぼウソ ムダづかい:見栄(みえ)を張るための買い物 インフレ:物の値段が上がって、お金の価値が下がること とくに気づきにくいのがインフレです。たとえば今100円のジュースが、10年後に150円になっていたら、同じ100円玉ではもうジュースが買えません。お金を貯金箱に入れっぱなしにするだけだと、金額は同じでも「買える量」がこっそりへっていくんです。だからこそ、③の「増やす力」が、じつは守る力にもつながっています。 RPGで苦労して手に入れたレア装備を、油断してぬすまれたらショックですよね。お金も同じで、貯めるのと同じくらい「減らさない」ことが大事なんです。「うまい話には裏がある」と覚えておくだけで、多くのピンチを防げます。 ⑦ 「知らない」が、いちばん損をする ここまで読んで「こんなに大事なこと、学校でも会社でもちゃんと教わらなかったな」と思いませんでしたか? そうなんです。お金の知識は、とても大切なのに学校ではほとんど教えてくれません。だから、知っている人と知らない人で、大人になってから大きな差がついてしまう。 お金の不安の正体は、「知らないこと」が多いからかもしれません。 逆に言えば、知識さえあれば不安は消せるということ。何をどうすればいいか、道すじが見えるからです。この本が200万部も売れたのは、その「見えない不安」を消してくれるからなんですね。 ⑧ 完璧じゃなくていい。まず一歩から 5つの力(貯める・増やす・稼ぐ・使う・守る)を、いきなり全部マスターする必要はありません。学長さんも「バランスよく、少しずつ育てよう」と言っています。 大事なのは、テストの一夜づけのようにあわてることではなく、毎日コツコツ続けること。1つずつでも身につければ、平均的な人でも必ず今より自由な生活に近づけます。 そして、資産形成に「もう遅い」はありません。あなたが動き出す“今日”が、これからの人生でいちばん若い日です。1日でも早く始めた分だけ、時間を味方につけられます。 じつは、この本は私自身の人生も変えました 最後に、少しだけ私の話をさせてください。 私がこの本に出会ったのは、2021年。妻から初版を手渡されたのがきっかけでした。それまでの私は、お金について「なんとなく不安だけど、何をどうすればいいのか分からない」という状態。でもこの一冊を読んで、資産形成の“進むべき方向”と、今すぐやるべき“具体的な行動”が、はっきりと見えたんです。 ...

July 29, 2026

なぜ学校では「お金の増やし方」を教えてくれないの?──山崎元『図解・最新 学校では教えてくれないお金の授業』をやさしく解説!

「お金の勉強」って、学校ではほとんど習いませんよね。計算やことわざは教わるのに、「どう貯めて、どう増やすか」は自分でなんとかするしかない——そんな不思議に正面から答えてくれるのが、この本です。 著者の山崎元(やまざき・はじめ)さんは、日本でとても有名な経済評論家。銀行・証券会社・保険会社など、お金にかかわる会社を数多く経験した「お金のプロ」です。だからこそ、ふつうは表に出てこない金融業界の“ウラ側”まで正直に書いてくれています。(山崎さんは2024年に亡くなりましたが、その教えは今も多くの人に読み継がれています。) この記事では、本の内容を中学生でもわかるように、8つのポイントにしぼって紹介します。 1. そもそもお金って何?──「自由」を広げる道具 お金がたくさんあると、行きたい場所に行けたり、やりたいことに挑戦できたりします。つまりお金は、あなたが選べる道を増やしてくれる「自由の道具」なのです。 でも、ここが大事なポイント。 お金は「手段」であって、「目的」ではない。 お金そのものを集めることがゴールになると、いくら増えても満足できません。ゲームでコインを集めるのは、強い装備を買って冒険を楽しむため。コインをただ眺めるためではありませんよね。お金も同じで、「何のために使うか」が先にあるべきなのです。 2. お金持ちへの第一歩は、投資より「自分の価値を上げる」こと 「お金を増やす」と聞くと、すぐに投資を思いうかべるかもしれません。でも山崎さんは、まず自分自身の"稼ぐ力"を高めるほうが先だと言います。 考えてみてください。1万円を投資しても、1年で増えるのはうまくいっても数百円ほど。でも、勉強やスキルをみがいて仕事の力がつけば、収入そのものが何万円も上がることがあります。 部活で、いきなり試合の作戦ばかり考えるより、まず基礎練習で実力をつけたほうが結局は強くなれますよね。お金も同じで、「元手を大きくする力」こそが最初の投資なのです。 3. 「先取り貯金」で、手取りの4分の1を自動的に残す お金が貯まらない人の多くは、「余ったら貯金しよう」と考えています。でも、余ることはめったにありません。 そこでこの本がすすめるのが「先取り(天引き)」。お金が入ったら、使う前に決まった額をよけておく方法です。目安は手取りの4分の1。残ったお金だけで生活すれば、自然とお金が貯まっていきます。 「余ったら貯める」ではなく、「先に貯めて、残りで暮らす」。 たとえば手取りが20万円の人なら、まず5万円をよけてしまい、残りの15万円で生活する。こうすれば「気づいたら全部使っていた」ということが起こりません。お小遣いをもらった瞬間に、一部をパッと貯金箱に入れてしまうのと同じイメージです。あとは残りで自由に使ってOK。順番を変えるだけで、結果は大きく変わります。 4. 銀行・証券・保険の"ウラ側"──アドバイスする人から買ってはいけない 銀行の窓口で「この商品、おすすめですよ」と言われると、つい信じたくなります。でも山崎さんは、はっきり警告します。 お金のアドバイスをくれる相手から、その商品を買ってはいけない。 なぜなら、金融機関の仕事は「お客さんから儲けること」だから。すすめられるのは、たいてい"お店がもうかる商品"であって、“あなたが得をする商品"ではないのです。 これは、ゲームの課金でいちばん高いパックをすすめてくる店員さんに似ています。相手も商売なので、あなたの財布より自分の売上を優先します。だから、「銀行はお金を増やす場所ではない」と覚えておきましょう。 山崎さんは、金融ビジネスの仕組みをこうまとめています。 お金持ちからは「手数料」を、お金のない人からは「金利」を取るのが、金融業のもうけ方。 ちょっとドキッとする言葉ですが、これを知っておくだけで、だまされにくくなります。ちなみに、銀行にただ預けるお金は、1つの銀行につき1000万円までしか完全には守られない仕組みになっています。大金を1か所に置きっぱなしにしない、というのも大事な知恵です。 5. 保険は「損な賭け」──入っていいのは"めったに起きないけど超困る"ことだけ 保険は「安心を買うもの」と思われがちですが、山崎さんは冷静に指摘します。保険会社は、集めたお金よりも少ない額しか払い戻しません。そうしないと会社がつぶれてしまうからです。つまり、平均すると保険は「入る人が損をする賭け」なのです。 保険は「損な賭け」であることを知る。 では、入る意味はないの?というと、そうではありません。「めったに起きないけれど、起きたら人生が壊れるほど困ること」だけは、保険で備える価値があります。 たとえるなら、ガチャは平均すると損だから回さないほうがいい。でも、「家が火事になったら何千万円もかかる」ような、超レアで超ピンチな事態だけは保険でカバーする——そんな使い分けが正解です。 6. 「水増しされた利回り」にだまされない──数字は正しく比べる 投資商品には「利回り〇%!」という数字がよく登場します。でも、その数字は見せ方でよく見せかけられている(水増しされている)ことがあります。 たとえば「毎月お金がもらえる投資信託」。一見おトクに見えますが、実は自分が預けたお金を少しずつ返しているだけ、というケースもあります。うれしい"利益"に見えて、中身は"元本の払い戻し"だったりするのです。 テストで「平均80点!」と言われても、得意な教科だけで計算していたら意味がないのと同じ。数字は「同じ条件でそろえて、正しく比べる」ことが大切です。うまい話ほど、いったん立ち止まって中身を確かめましょう。 そして、利回りで考えると見えてくる意外な正解があります。それは、もし借金があるなら、投資より先に返すこと。借金の利息は、投資でめざす利回りよりずっと高いことが多いからです。借金を返すのは、じつは“確実に増える最強の投資”とも言えるのです。 7. 投資はシンプルでいい──世界にまるごと分散して、長く持つ 「投資はむずかしそう」と思うかもしれませんが、この本の答えはとてもシンプルです。世界中の会社にまとめて少しずつ投資して、あとは長く持ち続ける。基本はこれだけ。 1社の株だけを買うのは、1つのチームに全部かけるようなもの。負けたら大ダメージです。でも、いろんな会社が入った「詰め合わせ(インデックス投資信託)」なら、どこかがダメでも別のどこかが伸びて、全体でならされます。おかしの詰め合わせパックと同じで、まるごと持てば当たりはずれのブレが小さくなるのです。 そして、投資をするならNISA(ニーサ)やiDeCo(イデコ)という"税金がかからない特別な箱”を使うのがおトク。ふたつはこう使い分けます。 NISA:いつでも引き出せる、自由度の高い箱。ふだんの資産づくり向き。 iDeCo:原則60歳まで引き出せないかわりに、税金の割引が大きい箱。老後のための貯金向き。 「近いうちに使うかもしれないお金はNISA、老後まで手をつけないお金はiDeCo」と分けるのが基本の考え方です。 もうひとつ、山崎さんが強く言うのが「手数料(コスト)をとにかく安くする」こと。投資でどれくらい増えるかは誰にも予想できませんが、手数料だけは、自分の選び方で確実に下げられます。同じ中身なら、より安い商品を選ぶ。これが、初心者でもできる一番かしこい工夫です。 8. お金は「手段」──「どう生きたいか」が先にある 最後に、いちばん大切なこと。お金があれば不幸は避けやすくなりますが、お金だけで幸せになれるわけではない、と山崎さんは言います。 お金は、あなたの人生を助ける"道具"。主役はあくまで「あなたがどう生きたいか」。 だからこそ、テクニックを覚える前に「自分は何を大事にしたいのか」を考えることが、じつはいちばんのお金の勉強なのです。 今日からできる3つのこと お小遣いや収入の一部を、使う前に先によけておく(金額よりも「先取りの習慣」が大事) 「おすすめ」をうのみにせず、いったん中身を確かめる(相手がなぜすすめるのかを考える) お金の目的を書き出してみる(「何のために増やしたいのか」をはっきりさせる) お金の話は、じつは「どう生きたいか」の話。この本は、むずかしいテクニックではなく、一生使える"お金との付き合い方"を、やさしく教えてくれる一冊です。もっと知りたくなった人は、ぜひ本も手に取ってみてくださいね! 図表50点以上で、むずかしい言葉が苦手な人でもスラスラ読めます。私自身、五十代で投資と向き合ってきましたが、「もっと早くこの一冊に出会いたかった」と思わされました。社会に出るお子さんやお孫さんへの贈り物としても、自信を持っておすすめできる、“お金の教科書"の決定版です。 図解・最新 学校では教えてくれないお金の授業山崎元/PHP研究所。金融業界の裏側を知り尽くした経済評論家が、正しい貯め方・増やし方を図表50点以上でやさしく解説した入門書の決定版 Amazonで見る › あわせて読みたい:山崎元さんが亡くなる前、大学生の息子に遺した一冊のご紹介はこちら▼ 亡くなる前に、経済のプロが息子に伝えた「お金と人生」の話──『経済評論家の父から息子への手紙』 借金だらけの「ダメ男」が25年で2億円?──『彼はそれを「賢者の投資術」と言った』

July 27, 2026

借金だらけの「ダメ男」が、25年で2億円?──水瀬ケンイチ『彼はそれを「賢者の投資術」と言った』をやさしく解説!

「投資」と聞くと、頭のいい人がパソコンとにらめっこして、上がりそうな会社の株を当てる…そんなイメージはありませんか? でも、水瀬ケンイチさんの『彼はそれを「賢者の投資術」と言った』は、まったく逆のことを教えてくれます。 主人公は、天才でもお金持ちでもない、ごくふつうの会社員。それどころか、20代のころは貯金ゼロ、車のローンを2台分もかかえた「ダメ男」でした。 そんな人が、25年後には約2億円の資産を持つまでになります。しかも、使った方法はとてもシンプル。この記事では、その25年間の物語と教えを、中学生でもわかる言葉でまとめてみました。 ポイント1:スタートは「貯金ゼロのダメ男」 著者の水瀬さんは、IT企業ではたらくふつうの会社員です。 でも20代のころは、給料をぜんぶ使ってしまい、貯金はゼロ。車のローンまでかかえていました。「このままではやばい」と気づいたのが、すべての始まりです。 大事なのは、特別な才能があったわけではないということ。図書館を何カ所もはしごして、お金の入門書を片っぱしから10冊以上読む。そうやって、ゼロから勉強を始めただけなんです。 この本のすごいところは、25年間の資産の増え方が、金額のグラフとともにぜんぶ正直に公開されていること。うまくいった話だけでなく、失敗して落ちこんだ時期も包みかくさず書かれています。 だからこそ、「自分にはムリ」と思っている人にこそ、「ふつうの人でもできるんだ」という希望をくれるのです。 ポイント2:最初は「チャートに振り回されて」失敗した 水瀬さんも、最初から今のやり方だったわけではありません。 はじめは、株価のグラフ(チャート)とにらめっこして、「上がりそうな株」を当てようとしていました。値動きが気になって、仕事中もこっそりトイレで株価をチェックする毎日。水瀬さんは、この時期のことを「トイレ・トレーダー時代」と呼んでいます。 これ、スマホの通知が気になって、授業中でも何度もこっそり見たくなるのと似ていますよね。株価に心を支配されて、だんだん自分を見失っていったのです。 結果は、疲れるばかりでちっとも儲からない。「もっといい方法があるはずだ」と探し続けた末に、たどりついた答えが「インデックス投資」でした。遠回りしたからこそ、本物にたどりつけたというわけです。 ポイント3:答えは「詰め合わせパック」を買うこと 「インデックス投資」は、むずかしそうな名前ですが、中身はシンプルです。 ふつうの投資は、「この1社が伸びる!」と1社の株に賭けます。これは、運動会でたった1人の選手に全部を賭けるようなもの。当たれば大きいけれど、外れたらおしまいです。 いっぽうインデックス投資は、世界中の会社をまるごと「詰め合わせパック」で買うイメージ。「オルカン」と呼ばれる商品なら、たった1つ買うだけで、世界中の何千もの会社にまとめて投資できます。 だから、どれか1社がダメになっても、ほかの会社ががんばってくれるので、全体ではあまり困りません。カバンの中身をぜんぶ同じ教科書にせず、いろんな教科を入れておくようなもの。1つを忘れても、ほかで点が取れます。 しかも、毎月決まった額を自動で買っていくだけ。むずかしい予想も、特別なテクニックもいりません。これがいちばんかしこい方法だ、と水瀬さんは言います。 ポイント4:いちばん難しいのは「やめないこと」 やり方はとても簡単。でも、じつは最大の難関があります。それは「途中でやめたくなること」です。 投資の世界では、数年に一度、値段が大きく下がる「暴落」が起きます。ニュースは「大不況!」と大さわぎし、まわりの人もどんどん売り出します。自分のお金が半分になったら、こわくて「もう売っちゃおう」と思ってしまいますよね。 でも、下がったときに売るというのは、部活で一回試合に負けただけで「もうやめる」と言い出すのと同じ。しかも暴落のあとは、たいてい時間をかけて値段がもどっていきます。つまり、あわてて売る人は「一番安いときに手放す」という、いちばんもったいない行動をしているんです。 あわてて売ってしまうことこそ、いちばん大きな損につながる。 だからこそ、下がってもどっしり持ち続ける力が必要になります。 ポイント5:暴落の「予防接種」ができる本 では、どうすれば持ち続けられるのか。この本のいちばんの価値がここにあります。 水瀬さんは、2008年の「リーマンショック」という大暴落で資産が半分になってしまいました。コツコツ増やしてきたお金が、一気に消えていく恐怖。しかもインデックス投資をすすめていたので、ネットでは「ほら見たことか」と悪口の嵐にもさらされました。ものすごくつらい経験です。 でも、ここで売らずにじっとがまんして持ち続けた結果、数年後には資産はしっかり回復しました。そしてこの経験があったから、2020年の「コロナショック」で世界中がパニックになったときも、「この感じ、前にもあった。あわてて売るのが一番損だ」と冷静でいられたのです。 つまりこの本を読むと、水瀬さんの体験を借りて、暴落を疑似体験できるのです。予防接種で軽く病気を体験して本番に備えるのと同じ。だから、いざというとき慌てずにすみます。 ポイント6:「まさか」に備える貯金を残しておく 暴落のとき、いちばんやってはいけないのが「お金がなくて、しかたなく売る」こと。 たとえば急に病気やケガでお金が必要になったら、値下がりしている最悪のタイミングでも、投資を売るしかなくなります。 この本によれば、生活のための貯金を用意していない人は、最悪のタイミングで売ってしまう確率が3倍にもなるそうです。 だから、投資に回すお金とは別に、すぐ使える貯金(これを「生活防衛資金」といいます)を残しておくことが大切です。 これは、ゲームで言えば「いざというときのための回復アイテム」を持っておくようなもの。手元に余裕があれば、暴落が来ても「売らずに待つ」という正しい行動が取れます。この貯金こそが、暴落を乗りきるための「安全ネット」になるのです。 ポイント7:「なぜ続けられるのか」を知ると強い じつは、インデックス投資は理屈を知らなくても続けられます。でも、「なぜこれでいいのか」がわかると、迷わなくなるのです。 本の後半では、続けられる理由が世界中の研究データで説明されています。たとえば、 初心者の約6割が「安いときに買って高いときに売る、そのタイミングを当てるのが大事」と思っている。でも実際は、そのタイミング当てこそが成績を悪くする一番の原因だとわかっています。テストの点をねらって一夜漬けを繰り返すより、毎日少しずつ勉強したほうが伸びるのと同じです。 欲ばって「あれもこれも」とたくさんの商品を買いすぎると、かえって成績が下がってしまうこともある。あれこれ手を広げすぎると、どれも中途半端になるのと同じですね。 つまり、頭を使って賢く立ち回ろうとするより、シンプルにコツコツ続けるほうが強い。理由がわかっていれば、まわりの「今が売りどきだ!」といった雑音にも振り回されなくなります。 ポイント8:タイトルの「彼」ってだれ? 最後に、タイトルの「彼」とはだれのことでしょう。 それは、経済評論家の山崎元(やまざき・はじめ)さん。水瀬さんと本を一緒に書いた仲間で、残念ながら亡くなってしまいました。 山崎さんは、「手数料の高い商品を売りたい」金融業界からきらわれることもいとわず、ふつうの人の味方になって「本当に正しいこと」を言い続けた人です。むかしの日本では、「市場全体と同じくらいの成績で満足する」というインデックス投資の考え方は、ほとんど理解されませんでした。それが今、「投資はまずインデックスから」と当たり前に言われるようになったのは、水瀬さんや山崎さんのような人たちが地道に伝え続けてくれたおかげなのです。 この本は、インデックス投資の教科書であると同時に、そんな山崎さんへの「ありがとう」の手紙でもあるのです。 まとめ:今日からできる3つのこと 『彼はそれを「賢者の投資術」と言った』の教えを、中学生の生活に置きかえるとこうなります。 少しずつ「続ける」練習をする(勉強でも運動でも、一発逆転より毎日コツコツが勝つ) 「まさか」に備えて、使わないお金を少し残しておく(お小遣いを全部は使いきらない) 一回の失敗であわてない(下がってもやめない人が、最後に笑う) 投資の本当のコツは、頭の良さでも運でもなく、「やめずに続ける心」。この本は、その心の育て方を、25年分の実話で教えてくれます。気になった人は、ぜひ本も読んでみてください! 私自身、5人の子を育てながらインデックス投資を続けてきた身として、この本の「ふつうの人が、遠回りしながらたどり着いた」という語り口には、ひとつひとつ深くうなずかされました。同じ著者を悼む一冊として、先日ご紹介した山崎元さんの『経済評論家の父から息子への手紙』とあわせて読むと、より胸に迫ります。これから投資を始める方の、最初の一冊にもおすすめです。 彼はそれを「賢者の投資術」と言った水瀬ケンイチ/Gakken。貯金ゼロのダメ男が25年で約2億円。インデックス投資の全記録を、グラフとともに正直に公開した実話 Amazonで見る › あわせて読みたい:インデックス投資の考え方を学べる一冊はこちら▼ 「安くなってから買おう」は、なぜ損なのか?──『JUST KEEP BUYING』をやさしく解説! お金持ちになるのに「頭の良さ」はいらない?──『サイコロジー・オブ・マネー』をやさしく解説!

July 26, 2026

亡くなる前に、経済のプロが息子に伝えた「お金と人生」の話──『経済評論家の父から息子への手紙』をやさしく解説!

もし、お父さんやお母さんが「人生で本当に大事なこと」を手紙に書いて残してくれたら、みなさんは読んでみたいですか? 『経済評論家の父から息子への手紙 お金と人生と幸せについて』(山崎元・著)は、まさにそんな一冊です。 著者の山崎元(やまざき・はじめ)さんは、日本を代表する経済評論家。テレビや本で「お金の正しい増やし方」をわかりやすく教えてくれる人気者でしたが、がんと闘いながら、2024年1月1日に65歳で亡くなりました。 この本は、山崎さんが大学生になった息子さんへ、人生の最後に「どうしても伝えたいこと」を書き残したもの。実際に息子さんへ送った手紙も、そのまま全文のっています。 「お金の心配をせず、自由に気分よく生きていくために」――経済のプロが命をかけて残したメッセージを、中学生でもわかる言葉でまとめてみました。 ポイント1:お金は「目的」じゃなくて「道具」 まず、この本のいちばん土台になる考え方から。 山崎さんは、お金そのものを人生の目的にしてはいけないと言います。お金は、自由に、気分よく生きるための「道具」にすぎないからです。 お金があると、 やりたくないことを「やらない」と選べる 困ったときにあわてずにすむ 自分の好きなことに時間を使える つまり、お金の本当の役割は「自由を守ること」。ゲームで例えるなら、お金は高得点そのものではなく、自分の好きなルートを選ぶための「アイテム」なんです。アイテム集めに夢中になって、肝心の冒険を楽しめなかったら本末転倒ですよね。 ポイント2:お金持ちになる人は「リスクを取る側」にいる では、世の中でお金持ちになるのはどんな人でしょう? 山崎さんの答えはハッキリしています。「リスクを取って、株式のように働いた人」です。 働き方には、大きく2つのタイプがあります。 利息タイプ:決められた仕事をして、決められた給料をもらう(安定しているけど、大きくは増えない) 株式タイプ:うまくいくか分からないことに挑戦して、成功したら大きな見返りを得る 会社を作った人や、新しいことに挑戦した人が大金持ちになるのは、この「株式タイプ」の働き方をしているから。もちろん失敗することもあります。でも、若いうちの失敗は取り返しがつく。だからこそ山崎さんは息子さんに「リスクを取ることを恐れるな」と伝えています。 部活で例えるなら、レギュラー争いに手を挙げない人に、活躍のチャンスは回ってきません。挑戦しないことこそが、じつはいちばんのリスクなんです。 ポイント3:「モテる人」になりなさい 意外なアドバイスがこれ。山崎さんは「モテることが大事だ」と大まじめに書いています。 といっても、恋愛の話だけではありません。ここでいう「モテる」とは、「この人と一緒に働きたい」「この人に仕事を頼みたい」と思われる魅力のこと。 約束を守る 機嫌よくいる 人の悪口を言わない 自分の得意なことで人の役に立つ 仕事もチャンスも、結局は「人」が運んできてくれます。だから、勉強やスキルと同じくらい、人としての魅力=人材価値を高めることが、将来の武器になるのです。クラスで「あの人と同じ班になりたい」と思われる人を想像すると、わかりやすいかもしれません。 ポイント4:過去の損は忘れていい――「サンクコスト」の話 ゲームに課金しすぎて「ここでやめたらもったいない」と、さらに課金してしまった……。そんな経験はありませんか? すでに払ってしまって、もう取り返せないお金や時間のことを「サンクコスト(埋没費用)」と言います。 山崎さんの教えはシンプルです。「過去に払ったものは、これからの判断に関係させるな」。 考えるべきは「今までいくら使ったか」ではなく、「これから先、続ける価値があるか」だけ。映画がつまらなかったら、チケット代を払っていても途中で出ていい。合わない習い事は、道具をそろえた後でもやめていい。 過去を悔やむより、未来のために判断する。これはお金だけでなく、人生全部に使える考え方です。 ポイント5:お金の増やし方は、たった1行で終わり 経済評論家として何十年も活躍した山崎さんが、最後にたどりついた「お金の増やし方の正解」は、拍子抜けするほどシンプルです。 「稼いで、貯めて、余ったお金は全世界の株にまるごと投資して、あとはほったらかし」 これだけ。世界中の会社の株を少しずつまとめ買いできる「全世界株式インデックスファンド」という商品を、手数料の安いものでコツコツ買い続ける。売ったり買ったりを繰り返す必要はありません。 そして、もうひとつ大事な警告があります。 銀行や証券会社の窓口で勧められる商品は、買ってはいけない。 なぜなら、向こうが熱心に勧めてくる商品ほど、手数料が高くて売る側が儲かる仕組みになっているから。「親切そうなプロ」ほど疑えというのは、プロ中のプロだった山崎さんだからこそ言える、重みのある言葉です。 ポイント6:「転職できる自分」でいることが最強の保険 山崎さんは、なんと人生で12回も転職した人です。ふつうの会社員としてはかなり珍しい経歴ですが、だからこそ言えるアドバイスがあります。 「ひとつの会社にしがみつかなくていい。ただし、いつでも転職できる自分でいなさい」 会社が絶対につぶれない保証はないし、上司や仕事が合わないこともあります。そのときに「ここを辞めたら生きていけない」と思っていると、嫌なことにもノーと言えなくなってしまう。逆に「自分はよそでも通用する」という自信があれば、堂々と働けます。 そのために大事なのが、若いうちに自分の「得意分野」を作っておくこと。山崎さんは「28歳までに自分の専門の軸を決めるといい」と具体的な目安まで示しています。中学生のみなさんなら、まずは「好きで、ついつい時間を使ってしまうこと」を大切にするところからで十分。それが将来の専門分野のタネになります。 ポイント7:仲間とは「気持ちよく」付き合う。お酒の飲み方まで この本のユニークなところは、「お酒の飲み方」まで手紙に書いてあることです。人生の最後に息子へ伝えることとして、わざわざお酒の話を選ぶなんて、ちょっと面白いですよね。 でも中身は、大人になる前に知っておいて損のない話です。 お酒は楽しく飲むもので、つらさをごまかす道具にしない 飲みの席での失敗は、積み上げた信用を一晩で壊すことがある 相手に無理に飲ませない。自分も無理をしない つまりこれは、お酒の話の形をした「仲間との付き合い方」の話なんです。友だちとの関係も同じで、ノリに流されて誰かを傷つけたり、無理をして自分をすり減らしたりしたら、長い目で見て必ず損をします。 山崎さんは、お金と同じくらい「気分よく付き合える仲間」を人生の財産だと考えていました。実際、闘病中の山崎さんを支えたのも、お金ではなく仲間だったそうです。 ...

July 18, 2026