「お金の勉強」って、学校ではほとんど習いませんよね。計算やことわざは教わるのに、「どう貯めて、どう増やすか」は自分でなんとかするしかない——そんな不思議に正面から答えてくれるのが、この本です。

山崎元『図解・最新 学校では教えてくれないお金の授業』(PHP研究所)

著者の山崎元(やまざき・はじめ)さんは、日本でとても有名な経済評論家。銀行・証券会社・保険会社など、お金にかかわる会社を数多く経験した「お金のプロ」です。だからこそ、ふつうは表に出てこない金融業界の“ウラ側”まで正直に書いてくれています。(山崎さんは2024年に亡くなりましたが、その教えは今も多くの人に読み継がれています。)

この記事では、本の内容を中学生でもわかるように、8つのポイントにしぼって紹介します。

1. そもそもお金って何?──「自由」を広げる道具

お金がたくさんあると、行きたい場所に行けたり、やりたいことに挑戦できたりします。つまりお金は、あなたが選べる道を増やしてくれる「自由の道具」なのです。

でも、ここが大事なポイント。

お金は「手段」であって、「目的」ではない。

お金そのものを集めることがゴールになると、いくら増えても満足できません。ゲームでコインを集めるのは、強い装備を買って冒険を楽しむため。コインをただ眺めるためではありませんよね。お金も同じで、「何のために使うか」が先にあるべきなのです。

2. お金持ちへの第一歩は、投資より「自分の価値を上げる」こと

「お金を増やす」と聞くと、すぐに投資を思いうかべるかもしれません。でも山崎さんは、まず自分自身の"稼ぐ力"を高めるほうが先だと言います。

考えてみてください。1万円を投資しても、1年で増えるのはうまくいっても数百円ほど。でも、勉強やスキルをみがいて仕事の力がつけば、収入そのものが何万円も上がることがあります。

部活で、いきなり試合の作戦ばかり考えるより、まず基礎練習で実力をつけたほうが結局は強くなれますよね。お金も同じで、「元手を大きくする力」こそが最初の投資なのです。

3. 「先取り貯金」で、手取りの4分の1を自動的に残す

お金が貯まらない人の多くは、「余ったら貯金しよう」と考えています。でも、余ることはめったにありません。

そこでこの本がすすめるのが「先取り(天引き)」。お金が入ったら、使う前に決まった額をよけておく方法です。目安は手取りの4分の1。残ったお金だけで生活すれば、自然とお金が貯まっていきます。

「余ったら貯める」ではなく、「先に貯めて、残りで暮らす」。

たとえば手取りが20万円の人なら、まず5万円をよけてしまい、残りの15万円で生活する。こうすれば「気づいたら全部使っていた」ということが起こりません。お小遣いをもらった瞬間に、一部をパッと貯金箱に入れてしまうのと同じイメージです。あとは残りで自由に使ってOK。順番を変えるだけで、結果は大きく変わります。

4. 銀行・証券・保険の"ウラ側"──アドバイスする人から買ってはいけない

銀行の窓口で「この商品、おすすめですよ」と言われると、つい信じたくなります。でも山崎さんは、はっきり警告します。

お金のアドバイスをくれる相手から、その商品を買ってはいけない。

なぜなら、金融機関の仕事は「お客さんから儲けること」だから。すすめられるのは、たいてい"お店がもうかる商品"であって、“あなたが得をする商品"ではないのです。

これは、ゲームの課金でいちばん高いパックをすすめてくる店員さんに似ています。相手も商売なので、あなたの財布より自分の売上を優先します。だから、「銀行はお金を増やす場所ではない」と覚えておきましょう。

山崎さんは、金融ビジネスの仕組みをこうまとめています。

お金持ちからは「手数料」を、お金のない人からは「金利」を取るのが、金融業のもうけ方。

ちょっとドキッとする言葉ですが、これを知っておくだけで、だまされにくくなります。ちなみに、銀行にただ預けるお金は、1つの銀行につき1000万円までしか完全には守られない仕組みになっています。大金を1か所に置きっぱなしにしない、というのも大事な知恵です。

5. 保険は「損な賭け」──入っていいのは"めったに起きないけど超困る"ことだけ

保険は「安心を買うもの」と思われがちですが、山崎さんは冷静に指摘します。保険会社は、集めたお金よりも少ない額しか払い戻しません。そうしないと会社がつぶれてしまうからです。つまり、平均すると保険は「入る人が損をする賭け」なのです。

保険は「損な賭け」であることを知る。

では、入る意味はないの?というと、そうではありません。「めったに起きないけれど、起きたら人生が壊れるほど困ること」だけは、保険で備える価値があります。

たとえるなら、ガチャは平均すると損だから回さないほうがいい。でも、「家が火事になったら何千万円もかかる」ような、超レアで超ピンチな事態だけは保険でカバーする——そんな使い分けが正解です。

6. 「水増しされた利回り」にだまされない──数字は正しく比べる

投資商品には「利回り〇%!」という数字がよく登場します。でも、その数字は見せ方でよく見せかけられている(水増しされている)ことがあります。

たとえば「毎月お金がもらえる投資信託」。一見おトクに見えますが、実は自分が預けたお金を少しずつ返しているだけ、というケースもあります。うれしい"利益"に見えて、中身は"元本の払い戻し"だったりするのです。

テストで「平均80点!」と言われても、得意な教科だけで計算していたら意味がないのと同じ。数字は「同じ条件でそろえて、正しく比べる」ことが大切です。うまい話ほど、いったん立ち止まって中身を確かめましょう。

そして、利回りで考えると見えてくる意外な正解があります。それは、もし借金があるなら、投資より先に返すこと。借金の利息は、投資でめざす利回りよりずっと高いことが多いからです。借金を返すのは、じつは“確実に増える最強の投資”とも言えるのです。

7. 投資はシンプルでいい──世界にまるごと分散して、長く持つ

「投資はむずかしそう」と思うかもしれませんが、この本の答えはとてもシンプルです。世界中の会社にまとめて少しずつ投資して、あとは長く持ち続ける。基本はこれだけ。

1社の株だけを買うのは、1つのチームに全部かけるようなもの。負けたら大ダメージです。でも、いろんな会社が入った「詰め合わせ(インデックス投資信託)」なら、どこかがダメでも別のどこかが伸びて、全体でならされます。おかしの詰め合わせパックと同じで、まるごと持てば当たりはずれのブレが小さくなるのです。

そして、投資をするならNISA(ニーサ)やiDeCo(イデコ)という"税金がかからない特別な箱”を使うのがおトク。ふたつはこう使い分けます。

  • NISA:いつでも引き出せる、自由度の高い箱。ふだんの資産づくり向き。
  • iDeCo:原則60歳まで引き出せないかわりに、税金の割引が大きい箱。老後のための貯金向き。

「近いうちに使うかもしれないお金はNISA、老後まで手をつけないお金はiDeCo」と分けるのが基本の考え方です。

もうひとつ、山崎さんが強く言うのが「手数料(コスト)をとにかく安くする」こと。投資でどれくらい増えるかは誰にも予想できませんが、手数料だけは、自分の選び方で確実に下げられます。同じ中身なら、より安い商品を選ぶ。これが、初心者でもできる一番かしこい工夫です。

8. お金は「手段」──「どう生きたいか」が先にある

最後に、いちばん大切なこと。お金があれば不幸は避けやすくなりますが、お金だけで幸せになれるわけではない、と山崎さんは言います。

お金は、あなたの人生を助ける"道具"。主役はあくまで「あなたがどう生きたいか」。

だからこそ、テクニックを覚える前に「自分は何を大事にしたいのか」を考えることが、じつはいちばんのお金の勉強なのです。

今日からできる3つのこと

  1. お小遣いや収入の一部を、使う前に先によけておく(金額よりも「先取りの習慣」が大事)
  2. 「おすすめ」をうのみにせず、いったん中身を確かめる(相手がなぜすすめるのかを考える)
  3. お金の目的を書き出してみる(「何のために増やしたいのか」をはっきりさせる)

お金の話は、じつは「どう生きたいか」の話。この本は、むずかしいテクニックではなく、一生使える"お金との付き合い方"を、やさしく教えてくれる一冊です。もっと知りたくなった人は、ぜひ本も手に取ってみてくださいね!


図表50点以上で、むずかしい言葉が苦手な人でもスラスラ読めます。私自身、五十代で投資と向き合ってきましたが、「もっと早くこの一冊に出会いたかった」と思わされました。社会に出るお子さんやお孫さんへの贈り物としても、自信を持っておすすめできる、“お金の教科書"の決定版です。

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