大家業、はじめの一歩——「売りますか?」に「貸します」と答えた日

お金と僕の12年戦争・第13話 前回は、二軒の戸建賃貸がわが家の家計にもたらしてくれたものについてお話ししました。今回からは、その二軒を実際にどう運営し、いまどうなっているのか——リアルな数字と現実を、包み隠さずお話しいたします。まずは一軒目、高砂のペンシルハウスから。二軒目・松戸の築古戸建は、次回たっぷりと語ります。 「売りますか?」——業者の口から「貸しますか?」は出てこない まずは高砂のペンシルハウスから。もともと居住する目的で、空き家にしていた実家(狭小地の古家)を建て替えた家です。前回お話ししたとおり、建て替え後に出産で家族が増え、手狭になった末の転居により「この家、どうするか問題」が発生しました。ちなみに住宅ローンは完済済みです。 選択肢は二つ。「売る」か「貸す」か。 迷いますよね。これまでの人生でまったく経験のない、まったく学んでもいない事柄ですから。当然、新居として購入した建売物件を販売した業者の担当者は言います。 「いままで住んでいた家をどうなさいますか?」 「売りますか?」「売りますか?」「売りますか?」…… 「貸しますか?」は、ありませんでしたね(笑)。 売却金額のことを抜きに考えれば、私の手間としては、担当者に「売ります」と告げて任せてしまうのが一番楽な方法だったと思います。 結局、決断の決め手になったのは感情の部分——「両親が私に遺してくれた家」ということでした。不安は山積みでしたが、「貸す」を選択しました。担当者にとってはまさかの回答だったのか、ちょっとビックリした様子で聞き直していました(笑)。 理解していない契約を、結んではいけない 「貸す」と決めたはいいのですが、その先どう進めたらいいのかがわかりません。とりあえず担当者が「賃貸部門の者をご紹介いたします」と言うので、お願いすることにしました。 賃貸部門の担当者との面談では、こちらは当然の素人ですから、出てくる言葉の意味はわからないし、その条件が私にとって都合が良いのか、業者にとって都合が良いのか、まったく判断がつきませんでした。結局いろいろと説明を受けて、3ヶ月を求められたところを、2ヶ月の「専属専任媒介契約」を結びました。 この契約が良かったか悪かったかは別にして、理解していない契約を締結することは、絶対にしてはいけません。いまなら断言できます。 リフォーム? 壁紙? ——まずはクリーニングだけで勝負 そこからの私の行動です。賃貸に出すにはリフォームは必要なのか。壁紙は交換すべきか。クリーニングだけでいいのか。わからないことだらけで、担当者に聞いたのだと思うのですが、正直、記憶がありません。結局、築6年くらいだったので、まずはクリーニングのみで対応することにしました。 クリーニング業者は、担当者に頼らず私が自分で探しました。たまたま路線バスを運行していて目に留まった、墨田区に店を構える「ベンリー」というフランチャイズの業者さん。以前に縦型洗濯機の洗浄を依頼したことがあり、とても丁寧に仕事をしていただいたことを思い出して、問い合わせてみました。 戸建て一軒丸ごとの清掃依頼を受けるのは初めてだとおっしゃっていましたが、快く引き受けてくださり、3階建てにもかかわらず7万円という価格で請け負っていただきました。2日間まるまる作業していただき、場所によっては応援の方が入ってくれるなど、本当に丁寧な仕事ぶり。特にキッチンまわりのコンロと換気扇は、さすがプロと唸らされる仕上がりでした。 家賃設定の壁——「貸したい家賃」と「相場の家賃」 家賃の設定は難しかったですね。心情的に貸したい家賃と、地域相場からの家賃には開きがありましたから、募集当初は相場よりも少し高めの110,000円という設定となってしまい、募集開始から1週間ほどは内覧希望や問い合わせなどの動きがほとんどありませんでした。 そこで地域相場に合わせて100,000円に引き下げたところから問い合わせが入るようになってきたようですが、成約には至らず、2ヶ月間の「専属専任媒介契約」は終了しました。 私もこの2ヶ月間でいろいろ学びました。契約延長の依頼はありましたがお断りして、最寄りの高砂駅と隣の青戸駅にあった数軒の賃貸仲介会社と「一般媒介契約」を結んで依頼することにしました。これも初めての経験でしたので、ドキドキしました。 このとき私は、家賃をさらに92,000円まで引き下げました。正直、地域相場よりも少し安いところです。しかし2ヶ月間の空振りを経て、「高く貸す」よりも「早く決める」——スピード優先の方針に切り替えたのです。空室のままでは、家賃は1円も入ってきませんから。 結果——依頼から10日ほどで、青戸駅近くの賃貸仲介会社が入居者を決めてくれました。 成約条件 内容 募集家賃の推移 110,000円 → 100,000円 → 92,000円 成約家賃 92,000円/月(相場よりやや安め・スピード優先) 敷金 1ヶ月分 礼金 なし 仲介手数料(大家負担) 家賃1ヶ月分 ※ハウスクリーニング費用:70,000円(3階建て一軒丸ごと・2日間作業) 初めての家賃入金——給料ではない、自分で稼いだ所得 正式に契約書に署名捺印をして、最初の家賃の入金が確認できたときの喜びは、一生忘れることはないと思います。給料として受け取る以外の、本当の意味で自分自身で稼ぎ出した所得ですからね。格別なものでした。 管理はどうする?——月5,060円の委託を断り、「勉強」の自主管理へ ここで管理について触れておきます。入居者様が決まった際、仲介業者から管理を請け負いたい旨の営業がありました。管理費用は毎月家賃の5%。つまり92,000円ですから4,600円、消費税460円を加えて月5,060円です。 管理の内容をうかがうと、家賃の入金確認と、未入金の場合の督促が主な業務ということでした。私にとっては一軒だけですし、初めてのことなので「勉強」のつもりで自主管理を申し出ました。 退去と入居を繰り返して、現在へ 最初の入居者様が決まった後は、幾度か退去と入居を繰り返しながら現在に至ります。幸いにも、退去の申し入れを受けて募集を開始すると、まだ入居者様がいて内覧できない状況にもかかわらず、次の入居者様が決まる——というありがたい流れで来ております。 とはいえ、退去があれば原状回復のためのリフォーム工事は必要になりますし、外壁塗装工事もおこないました。 外壁塗装——1年待ったら、10万円値上がりしていた 外壁塗装工事は2022年12月に行い、費用は850,000円でした。 実はその約1年前、2021年11月に4社から相見積もりをとっていました。当時はまだ入居者様がおられたので、すぐに工事をするつもりではなく、準備として相場感をつかんでおきたかったのです。使用塗料・工事内容・金額を考慮して、この時点で1社を選んでいました。 そして2022年、11月末での退去が決まったのを機に、工事の決行を決断。あらためて同じ業者から見積もりを取ったところ——塗料などの材料費の値上げと人件費の高騰で、2021年11月時点では750,000円だった見積額が、100,000円値上がりしていたのです。 時期 見積額 2021年11月(入居中に準備の相見積もり・4社から1社選定) 750,000円 2022年12月(退去を機に工事決行・同じ1社) 850,000円(+100,000円) 2026年の現在は、さらに値上がりしているでしょうね。 ...

July 5, 2026

二軒の戸建がくれた、もう一本の柱

お金と僕の12年戦争・第12話 給与という一本足から、給与と家賃の二本柱へ。会社員である私に、家賃という新しい収入源——私自身は「不動産賃貸事業」と捉えています——が加わったこと。それは「収入が増えた」という以上に、私の人生を静かに、けれど確かに変えてくれました。 父が遺してくれた家を、私は空き家にしていた 私は葛飾区高砂で生まれ育ちました。両親は「なんとか自分たちの城を持ちたい」と頑張り、高砂に所有権11.26坪(約37.22㎡)という、狭小と呼ぶしかない土地と、そこに建つ木造2階建ての家を手に入れます。父は、その家を長男である私に遺したいと考えていたようです。 ところが私自身は、結婚を機に賃貸住宅での暮らしをスタートさせました。やがて父が亡くなり、母は埼玉県川越市に嫁いだ妹の家族のもとで暮らすようになります。こうして、私が育ったあの家は「空き家」になりました。 両親が遺してくれた家なのに、当時の私は「賃貸のほうが気が楽だ」と、空き家のまま放っておいたのです。どうにかしなければ、という思いは頭の隅にありながら——その状態が、10年ほど続きました。(父さん、ごめん。) 妻のひと言から、ペンシルハウスが建った 転機をくれたのは、妻でした。当時、私たちは9歳の長男を含む3人家族。ある日、妻が「実家を建て替えて住めないかな?」と切り出したのです。 ただ、敷地はわずか11.26坪。あまりに狭く、積極的に手を挙げてくれる工務店はなかなか見つかりませんでした。それでもどうにか引き受け先を見つけ、2008年8月、狭い土地を縦に使い切るように、木造3階建て・延床面積59.58㎡の、いわゆる「ペンシルハウス」が完成します。空き家だった実家は、こうしてようやく、家族の住む家として生まれ変わりました。 家族が増え、家が手狭になった 「3人家族なら、狭小住宅でも住んでいける」——そう考えての建て替えでした。ところが工事のさなかに妻の妊娠がわかり、「4人ならまだ大丈夫だろう」と新居に移ったときには、すでに4人家族。さらにその後、3人目の妊娠がわかり、無事に生まれて5人家族になると、さすがにこの家では狭すぎる、ということになりました。 そこで向かったのが、住み替えです。「今より子どもたちの小学校に近く、しかも高砂駅にも近い場所」という、なかなか難しい条件でしたが、運にも恵まれて良い家に出会えました。2014年6月、敷地64.32㎡・木造3階建て・延床面積102.54㎡の新築建売戸建を購入し、転居します。今でも本当に満足している我が家です。 (余談ですが、この家に移ってから妻はさらに二人の男の子を産んでくれ、我が家は4男1女、5人の子宝に恵まれました。) 住む家が「貸す家」になった、一軒目 そして高砂のペンシルハウスは、私たちが住み替えたその日を境に、「自分たちが住む家」から「人に貸す家」へと役割を変えました。これが、私の戸建賃貸業の一軒目です。 貸すために建てた家ではありません。父が遺し、妻の言葉で建て替え、家族で暮らし、そして手狭になって離れた——その積み重ねの結果として、気づけば私は大家になっていました。父に申し訳なかったあの空き家が、いまは家賃という形で家計を支えてくれている。そう思うと、少しだけ肩の荷が下りた気がします。 リベ大が背中を押した、二軒目 二軒目は、まったく違いました。 リベ大(両学長)の教えと『お金の大学』に出会い、「昇給を待つのではなく、収入を生む資産を自分で買う」という発想を知った私は、2022年1月、松戸市に敷地60.98㎡・木造2階建て・築48年の投資用築古戸建を購入しました。 築48年という数字に驚く方もいるかもしれません。けれど、リベ大で学んだ築古戸建投資の考え方に沿って、自分なりに数字を確かめ、納得して選んだ一軒でした。一軒目が「気づいたら大家」だとすれば、二軒目は「意志を持って買った大家」です。 ここで、二軒(と現在の自宅)を一覧にしておきます。 役割 取得・完成 所在地 敷地 構造・延床 一軒目(賃貸・旧自宅) 2008年8月 完成 葛飾区高砂 11.26坪(約37.22㎡) 木造3階建/延床 59.58㎡ (参考)現在の自宅 2014年6月 購入 高砂駅 近く 64.32㎡ 木造3階建/延床 102.54㎡ 二軒目(賃貸・投資用) 2022年1月 購入 松戸市 60.98㎡ 木造2階建/築48年 ※「現在の自宅」は賃貸物件ではありませんが、一軒目が賃貸へ切り替わった転機として参考に併記しています。 給与一本足から、二本柱へ ── 金銭面 会社員の収入は、基本的に給与とボーナスという一本足です。給与は生活費、ボーナスは臨時収入。シンプルですが、その一本が細れば、家計はそのまま揺らぎます。 そこに家賃収入が加わると、給与と家賃の二本柱になります。勤務先で残業が減った月でも、家賃は比較的安定して入ってくる。この「もう一本」があるだけで、家計の安定感はずいぶん変わりました。 大きいのは、昇給に依存しなくてよくなったことです。給与は毎年、数千円から数万円上がればいいほう。けれど中古戸建を一軒持てば、年間で数十万円、物件によっては100万円以上のキャッシュフローが見込めることもあります。「昇給を待つ」のではなく「資産を買って収入を増やす」。この発想の転換こそ、リベ大から受け取った一番の財産かもしれません。 ...

June 29, 2026

変動金利ローン、金利が上がったらどうなる?我が家の10年の記録と、ジタバタしない理由

「変動金利は怖い」とよく言われます。2025年に入って実際に金利が上がった今、我が家がどう考え、何をしているか——具体的な数字とともに正直に書きます。結論を先に言うと、「何も変えない」ことが我が家の答えです。 我が家のローン履歴 2014年5月、メガバンクで3,600万円・変動金利0.975%・34年ローンを組みました。その後、職場に出入りしている金融機関からより好条件の提案があり、2018年2月に借り換えをしました。 時期 内容 2014年5月 メガバンクで3,600万円借り入れ/金利0.975%/返済期間34年/月返済額103,702円 2018年2月 残債3,330万円で借り換え/金利0.625%(▼0.35%)/月返済額100,203円(▼3,499円) 2025年2月 金利0.775%へ引き上げ(▲0.15%)/月返済額は変わらず100,203円(5年ルール適用中) 2025年8月〜現在 金利1.025%へ引き上げ(▲0.25%)/月返済額は引き続き100,203円(5年ルール適用中)/利息の占める割合が増加 借り換えによって月々3,499円・年間41,988円の削減に成功しました。 月返済額は変わらない。でも中身が変わっている 「5年ルール」により、金利が上がっても月返済額は5年間変わりません。我が家の返済額は現在も借り換え時と同じ 100,203円 のままです。 しかし返済額の中身——元金と利息の比率——は金利上昇とともに変化しています。 時期 月返済額 うち元金 うち利息 借り換え直後(0.625%) 100,203円 約83,000円 約17,000円 2025年2月〜(0.775%) 100,203円 約79,000円 約21,000円 現在(1.025%) 100,203円 約72,000円 約28,000円 ※残債3,330万円をもとにした概算です。 金利が上がるにつれて利息が増え、その分だけ元金の減りが遅くなっています。払っているのに残債がなかなか減らない——これが5年ルールの「見えないコスト」です。 5年ルールの実態: 表面上の返済額は変わらないため「影響がない」と感じやすいですが、利息が増えた分だけ元金の減り方が遅くなります。返済額ではなく「元金の減り」を意識することが大切です。 金利上昇に対して、我が家がしていること 2025年に2段階の金利引き上げがありました。繰り上げ返済すべきか、固定に借り換えるべきか——正直、いろいろ考えました。出した答えは、「何もしない」 です。 ただし、何も考えずに放置しているわけではありません。以下の3つの判断があってのことです。 判断① 金利上昇をそのまま受け入れる 現在の金利1.025%は、歴史的に見てまだ非常に低い水準です。日本の住宅ローン変動金利は、バブル期には8%を超えていた時期もありました。2000年代でも2〜3%台が普通でした。 「怖い」という感情はわかります。でも数字で見れば、今の金利は緊急事態ではありません。過度な対策は不要と判断しました。 判断② 「稼ぎを増やす」にコミットする 金利が上がったとき、多くの人は「支出を減らす」方向で考えます。繰り上げ返済も「ローンという支出を減らす」発想の延長線上にあります。 我が家は逆に 「収入を増やすことで対応する」 という方向を選んでいます。収入が増えれば金利上昇分など小さな話になるからです。本業・不動産・投資の3本柱で収入の多様化を進めることが、最大の金利対策だと考えています。 判断③ 投資を淡々と続ける 「繰り上げ返済vs投資」はよく議論されますが、我が家の答えはシンプルです。 住宅ローン金利(1.025%)→ 繰り上げ返済のリターン インデックス投資の長期期待リターン → 年4〜6%程度 長い目で見れば、投資を続けるほうが資産は大きくなると考えています。繰り上げ返済は「確実な1%のリターン」ですが、投資の継続は「時間という最大の武器」を活かすことです。 そして——ジタバタしない 金利上昇をそのまま受け入れ、稼ぎを増やすことにコミットしながら、投資を継続する。長期的な資産増加によって金利上昇分は吸収できると考えています。 要は、ジタバタせず何も変えず、淡々とやっていくということです。 これはあくまで我が家の判断です。家計の余裕、精神的な安心感、残りのローン年数によって正解は異なります。「ジタバタしない」が正解になるのは、判断の根拠があってのことです。 参考:金利が上がると返済額はどう変わるか 5年ごとの見直し時に金利がさらに上昇した場合の月返済額の変化(試算例)。 ...

April 26, 2026