お金持ちになるのに「頭の良さ」はいらない?──世界で600万部売れた『サイコロジー・オブ・マネー』をやさしく解説!

「お金の勉強」と聞くと、むずかしい計算や投資のテクニックを想像しませんか? でも、世界中で600万部も売れた大ベストセラー『サイコロジー・オブ・マネー』(モーガン・ハウセル著)は、まったく逆のことを教えてくれます。 「お金で成功するかどうかは、頭の良さよりも“心の持ち方”で決まる」 著者のモーガン・ハウセルさんは、アメリカの有名な金融コラムニスト。この本はウォール・ストリート・ジャーナル紙から「ここ数年で最高かつ、最も独創的なお金の本」と絶賛され、日本でも21万部を超えるヒットになっています。 この記事では、この本の大事なポイントを8つにしぼって、中学生が読んでもわかるくらいやさしい言葉でまとめました。「投資はむずかしそう」と感じている人にこそ、読んでほしい内容です。 ポイント1:清掃員が8億円を残せた理由 この本の冒頭には、ロナルド・リードさんという実在の人物が登場します。彼はガソリンスタンドの店員や清掃員として一生働いた、ごくふつうの人。高い給料をもらっていたわけでも、宝くじに当たったわけでもありません。 ところが92歳で亡くなったとき、なんと約8億円もの財産を残していたことがわかり、アメリカ中が驚きました。 秘密は特別な才能ではありません。彼がやったのは、 収入の一部をコツコツ先取りで貯蓄する それを優良企業の株に投資して、何十年もほったらかしにする たったこれだけです。 一方で本には、リチャード・ファスコーンという超エリートの金融マンも登場します。ハーバード大学出身で大企業の役員にまでなった彼は、無理な借金で豪邸を買い、リーマンショックで破産してしまいました。 学歴も知識も完璧だった人が失敗し、ふつうの清掃員が大成功した。つまり、**お金は「知識」より「行動と習慣」**で決まるのです。これが本書全体を貫くメッセージです。 ポイント2:「複利」は雪だるまと同じ この本でいちばん大事な言葉が「複利(ふくり)」です。 複利とは、増えたお金がさらにお金を生むしくみのこと。雪だるまを転がすと、大きくなるほど一回転でくっつく雪の量が増えますよね。あれとまったく同じです。 たとえば100万円が毎年10%ずつ増えるとします。1年目は110万円、2年目は121万円…と最初はじれったいほどゆっくり。でも50年続けると、なんと約1億1,700万円。100倍以上です。増え方が「たし算」ではなく「かけ算」になるのが複利のすごさです。 世界一有名な投資家ウォーレン・バフェットの財産は約10兆円ですが、そのほとんどは、じつは65歳をすぎてから増えたもの。彼のすごさは天才的な投資テクニックよりも、「10歳のころから80年以上、投資をやめなかったこと」なんです。 もしバフェットが30歳で投資を始めて60歳でやめていたら、財産は今の1%にも届かなかったと著者は計算しています。 時間こそが最強の武器。「投資を始めるのに最適な日は、いつだって今日」なのです。 ポイント3:成功には「運」もまじっている ちょっと意外なポイントがこれ。著者は「成功は実力だけでは決まらない。運の要素も大きい」とはっきり言います。 マイクロソフトを作ったビル・ゲイツは、1968年当時、世界でもほとんど例のない「コンピューターが自由に使える高校」に通っていました。100万人に1人レベルの幸運です。もちろん彼の努力と才能は本物ですが、あの環境がなければ、今のマイクロソフトはなかったかもしれません。 ここから学べる教訓は2つあります。 成功した人のマネを全部しても、同じ結果にはならない(その人の運までコピーできないから) 失敗した人を「努力不足だ」と責めすぎない(運が悪かった部分もあるから) だから、SNSで話題の「億り人」の派手な手法をマネするより、多くの人に長く当てはまる「地味だけど確実なパターン」(コツコツ積み立てて長く続ける、など)に注目したほうがいい、というわけです。 ポイント4:「もう十分」と言える人が最後に勝つ お金で失敗する人に多いパターンは、「もっと、もっと」と欲張ってしまうことです。 本書には、何百億円も持っていたのに、さらに儲けようと違法な取引に手を出して人生を台なしにした大富豪たちの話が出てきます。彼らに足りなかったのは、お金ではなく「足るを知る心」でした。 著者はこう言います。 「もう十分」と思える気持ちこそが、いちばん大切なお金の能力だ。 ゴールのないマラソンを走り続ければ、必ずどこかで倒れます。年収が上がっても、周りと比べて「まだ足りない」と感じ続ける限り、いつまでも満たされません。 そして著者は、どれだけ儲かる話でも絶対に賭けてはいけないものを3つ挙げています。「評判・自由・家族や友人」。この線引きを持っている人が、最後に勝つのです。 ポイント5:本当のお金持ちは「見えない」 高級車、ブランドものの時計、豪華な旅行の写真――。SNSにはお金持ちっぽい人があふれています。 でも著者は面白いことを言います。「高級車に乗っている人は、車にお金を使ってしまった人。本当の富は、使われずに残っているお金だから、目に見えない」。 ポイント1のリードさんを思い出してください。彼が8億円持っていると気づいた人は、生前ひとりもいませんでした。見た目はただの倹約家のおじいさんだったからです。 つまり、「お金持ちに見えること」と「お金持ちであること」は正反対とすら言えるのです。同僚の新車や知人のタワマン暮らしがうらやましくなったときは、この言葉を思い出してみてください。 ポイント6:貯蓄は「自由」を買うためのもの 「なんのために貯蓄するの?」と聞かれたら、この本の答えはシンプルです。 自由を買うため。 お金があると、 嫌な仕事を「嫌だ」と断れる 病気や失業などのトラブルがあってもあわてない 自分の好きなことに、好きなタイミングで時間を使える つまり、貯蓄とは「自分の時間を自分でコントロールする力」を手に入れることです。 著者によると、幸福度を大きく左右するのは収入の高さそのものより、「自分の生活を自分で決められている感覚」なのだそうです。高級車やブランド品よりも、じつはこれがいちばんの贅沢だと著者は言います。 そしてもうひとつ大事なのが、「理由がなくても貯蓄していい」ということ。「マイホームのため」「老後のため」と目的がなくても、貯蓄そのものが未来の選択肢を増やしてくれるからです。転職したくなったとき、家族に何かあったとき、面白いチャンスが目の前に現れたとき――手元にお金がある人だけが、自分の意志で動けます。 ポイント7:未来は予想できない。だから「余裕」を持とう 天気予報だって外れるのに、何年も先の経済を正確に予想できる人はいません。リーマンショックも、コロナショックも、ほとんどの専門家は予想できませんでした。 だからこそ大事なのが「余裕(よゆう)を持つこと」。本書では「誤りの余地(room for error)」と呼ばれています。 生活費の全部を投資に回さず、現金も残しておく 「予想が外れても大丈夫」な家計の計画を立てる 「これくらい増えるはず」というリターンの見積もりは、少し低めにしておく 車のシートベルトと同じです。事故が起きると思って乗る人はいないけれど、万が一のために必ずつける。お金も同じ考え方で守るのです。 「余裕なんてもったいない」と思うかもしれませんが、余裕があるからこそ、大暴落が来ても投資をやめずに続けられる。つまり余裕は、ポイント2の複利を最後まで働かせるための「保険」でもあるのです。 ポイント8:完璧な正解より「続けられる方法」を選ぶ 最後は、著者のいちばん現実的なアドバイスです。 数学的にいちばん正しい方法があっても、途中でやめてしまったら意味がない。それより、多少ゆるくても「自分が安心して続けられる方法」のほうが、結果的にうまくいく――著者はこれを「合理的(rational)であるより、理にかなっている(reasonable)ほうがいい」と表現します。 ダイエットに例えるとわかりやすいです。栄養学的に完璧でも味気ない食事メニューは、たいてい三日坊主で終わります。それより、少しゆるくても続けられるメニューのほうが、1年後には確実にやせている。資産づくりもまったく同じです。 たとえば、理論上いちばん効率的な投資配分でも、暴落のたびに不安で眠れなくなって売ってしまうなら、その人には向いていません。それより、現金を多めに残した「ゆるい配分」で、どんな相場でも淡々と積み立てを続けられるほうが、長い目で見れば資産は育ちます。 ...

August 8, 2026

「1億円ためないと自由になれない」って本当?──『「パラレルインカム」のはじめ方』をやさしく解説!

「FIRE(経済的自立と早期リタイア)」という言葉を聞いて、こう思ったことはありませんか? 「1億円ためて仕事を辞める? そんなの、自分には無理だ」 たしかに、よくあるFIRE本のゴールはかなり遠い場所にあります。でも、この『「パラレルインカム」のはじめ方』が教えてくれるのは、「仕事は辞めない。それでも自由になる」という第三の道です。表紙にも「年収300万円からできる進化版FIRE」と書かれています。 今回は、この本の考え方を、むずかしい言葉をできるだけ使わずに解説します。投資の知識がゼロでも、最後まで読めば「自分は次に何をすればいいのか」がはっきりするはずです。 著者はどんな人? 著者は泉正人(いずみ・まさと)さん。累計64万人が学んだといわれるマネースクール「ファイナンシャルアカデミー」の代表です。監修も同アカデミーが担当しています。 自分自身が会社を立ち上げ、気づけば「パラレルインカム」を実践していた——という体験がベースになっているので、机上の空論ではなく、実際に歩いた道の話として読めるのが特徴です。 ポイント1:「お金のなる木」を2本持つ パラレルインカムとは、直訳すると「収入の複線化」。会社の給料という1本の線と並べて、もう1本の収入の線を通す、という意味です。 大事なのは、その2本目が「アルバイト」ではないということ。 労働所得(働いて得るお金) + 資産所得(働かなくても入ってくるお金) これがパラレルインカムの正体です。本書では、これを「お金のなる木を2本持つ」と表現しています。1本目は自分で水をやり続ける木、2本目は勝手に実をつけてくれる木、というイメージです。 副業をもう1つ増やすのは、水やりする木を増やすのと同じ。収入は増えても、時間はどんどん減っていきます。目指すのは、そこではありません。「休んでも止まらない流れ」を1本つくることが、この本の出発点です。 ポイント2:FIREとのいちばん大きな違いは「仕事を辞めないこと」 FIREは「早期リタイア」、つまり仕事を辞めるのがゴールです。でも著者は、そこに疑問を投げかけます。 辞めたあと、時間を持て余してしまう人が意外と多いからです。 パラレルインカムでは、仕事は続けます。ただし、お金のためだけにイヤイヤ続ける仕事ではなく、「好きだからやる仕事」に変えていく。ここが決定的な違いです。 学校でも会社でも、「やらされている作業」と「自分で選んだ活動」では、同じ時間でも疲れ方がまるで違いますよね。パラレルインカムが目指すのは、後者の状態です。 さらに、仕事を続けることには現実的なメリットもあります。収入の柱が2本あれば、片方が不調でも生活は崩れません。株価が下がった年も給料は入るし、病気や転職で働けない時期があっても資産所得が支えてくれる。辞めないという選択は、安全装置でもあるのです。 ポイント3:ゴールは「1億円」ではなく「生活費 < 資産所得」 この本のゴールラインは、とてもシンプルです。 毎月の生活費を、資産所得が上回ること たとえば生活費が月20万円なら、資産所得が月20万円をこえた瞬間、あなたは「働かなくても生きていける状態」になります。そこから先の労働は、生活のためではなく、やりたいからやる労働に変わります。 「1億円」という数字を目標にすると気が遠くなりますが、「月20万円」なら、まだ手が届きそうに感じませんか。ゴールの置き方を変えるだけで、道のりの見え方は変わります。 しかも、このゴールにはもう1つの近づき方があります。それは、生活費のほうを下げること。生活費が月30万円の人と月18万円の人では、必要な資産所得がまったく違います。支出を見直すことは、我慢ではなくゴールラインを自分のほうへ引き寄せる作業なのです。 ポイント4:順番をまちがえない「4つのステップ」 本書は、実現までの道のりを4つの段階に分けています。 労働所得を増やす 資産構築をする(増えた分をためて、元手をつくる) 資産所得をつくる(元手を働かせる) 仕事でも自己実現を達成する ここで大事なのは、順番を飛ばさないことです。 いきなりステップ3から始めようとする人は、とても多い。でも元手がない状態で資産所得だけを追いかけるのは、練習せずに試合に出るようなものです。まずは本業の収入を上げ、支出をコントロールして、種を確保する。地味ですが、ここが土台になります。 ポイント5:「お金の7か条」から学ぶ、日常の習慣 本書の第2章には、暮らしの中で効いてくる7つの心がまえがまとめられています。特に取り入れやすいのが、この2つです。 ① 欲しいものを買う前に、お金を迂回させる 給料が入ったら、使う前に一部を別の場所へ「迂回」させる。いわゆる先取り貯蓄です。残ったお金で暮らす仕組みにすれば、意志の強さに頼らなくてすみます。 ② 資産運用は「自転車の運転」と考える 自転車は、本を読んだだけでは乗れません。最初は転びます。でも一度乗れるようになれば、一生忘れない。運用も同じで、小さく始めて体で覚えるものだ、という考え方です。 7か条にはほかにも、「お金に働いてもらうことをポジティブにとらえる」「投資の本当のリスクを知り、コントロールする」といった項目が並びます。リスクはゼロにするものではなく、正体を知って手なずけるもの——この姿勢が本書全体を貫いています。 ポイント6:「失敗から学ぶ」より「成功から学ぶ」 「失敗は成功のもと」とよく言われますが、著者の考え方は少しちがいます。 失敗を避けるノウハウと、成功するノウハウは、別物だからです。 失敗をいくら分析しても、それは「やってはいけないこと」のリストが増えるだけ。実際にうまくいっている人のやり方を聞いて、まねをするほうがずっと近道だ、と本書は言います。 部活でも、ケガの原因を研究するより、うまい先輩のフォームを見よう見まねでコピーするほうが上達が早い——そんな感覚に近いかもしれません。ただし、まねる相手は自分が行きたい場所に実際にたどり着いた人を選ぶこと。SNSにあふれる成功談を見分ける目だけは、自分で育てる必要があります。 ポイント7:「FIREの5倍ラク」の根拠と、その注意点 本書のタイトルにもなっている「進化版FIRE」。著者はパラレルインカムを「FIREの5倍ラク」と表現します。 その根拠が、この対比です。 年400万円を得るために必要な元手 FIREの「4%ルール」 1億円 不動産の「20%ルール」 2,000万円 金額が5分の1になるから「5倍ラク」というわけです。本書が資産所得の手段として不動産投資をすすめているのは、この効率の良さが理由です。 ただし、ここは正直に書いておきます。この計算は、借入(ローン)を使うことが前提です。空室、修繕、災害、金利の上昇といったリスクもあり、株式のインデックス投資とくらべて、必要な知識と手間は明らかに多くなります。 「5倍ラク」は「5倍かんたん」ではない。この点については、記事の後半で、実際に賃貸経営をしている立場から詳しくお話しします。 ポイント8:最後に手に入るのは「5つの自由」 では、これだけの手間をかけて、何が手に入るのか。本書は5つを挙げています。 ...

August 6, 2026

「いくらまで使っていいか」の正解は人によって違う?──『THE WEALTH LADDER 富の階段』をやさしく要約

「まずは家計簿をつけて節約しなさい」 「いや、節約より投資でしょう」 「そんなことより起業して収入を増やすべきだ」 お金のアドバイスは、なぜこんなに食い違うのでしょうか。じつは、どれも間違ってはいません。アドバイスが矛盾して見えるのは、話し手が想定している「資産のレベル」がバラバラだからです。 この本は、その混乱をきれいに整理してくれます。ここでは中学生が読んでもわかるくらいやさしい言葉で、要点をまとめていきます。 著者はニック・マジューリさん。アメリカの資産運用会社リソルツ・ウェルス・マネジメントの最高執行責任者(COO)であり、データサイエンティストでもあります。人気ブログ「OfDollarsAndData.com」の書き手で、前作『JUST KEEP BUYING』は日本でも大ヒットしました。前作が「何にいつ投資するか」という戦術の本だったのに対し、本書は一歩引いて「そもそも今の自分に必要な戦略は何か」を問う戦略の本です。土台になっているのは、50年以上・数万世帯分の金融データ。感覚論ではなく数字から導かれた結論なので、説得力があります。 ポイント1:富は「坂道」ではなく「階段」でできている まず著者が言う「富」とは、純資産のことです。持っている財産(現金・投資・不動産など)から、借金(住宅ローン・奨学金・カードの残債など)を引いた金額。年収ではありません。 そして富は、なだらかな坂道のように少しずつ生活が楽になるものではなく、あるラインを超えた瞬間に景色が変わる「階段」だといいます。本書はこれを6段に分けました(1万ドル=約150万円で換算)。 レベル1:資産150万円未満 ── 生存戦略 レベル2:150万円〜1,500万円未満 ── 教育&スキル戦略 レベル3:1,500万円〜1億5,000万円未満 ── 投資戦略 レベル4:1億5,000万円〜15億円未満 ── 起業戦略 レベル5:15億円〜150億円未満 ── 事業拡大戦略 レベル6:150億円以上 ── 資産防衛戦略 ゲームでいえば、レベル1の装備でラスボスに挑んでも勝てないのと同じです。今の自分の段に合った戦い方がある。それが本書の出発点です。 ポイント2:使っていい金額がわかる「0.01%ルール」 本書でいちばん有名なのが0.01%ルール。資産の0.01%(1万分の1)までなら、毎日使っても資産全体はほとんど揺らがない、という考え方です。 資産150万円の人にとっての150円は、資産1,500万円の人にとっての1,500円と同じ重さ。 これをレベル別に見ると、こうなります。 レベル1 ── 余裕なし(数十円〜149円) レベル2 ── スーパーの自由(150〜1,499円) レベル3 ── レストランの自由(1,500〜1万4,999円) レベル4 ── 旅行の自由(1万5,000円〜) たとえばレベル2の人なら、スーパーで250円の卵と350円の卵で悩む必要はもうありません。その100円は資産の0.001%以下で、人生に影響しないからです。逆に、うなぎ屋で3,000円の並と4,500円の特上を迷うなら話は別。この1,500円が「気にしなくていい額」になるのは、資産1,500万円を超えてからです。 節約すべき場面と、堂々とお金を使っていい場面が、数字で線引きされる。ここが痛快なところです。 ポイント3:「収入」ではなく「資産」を基準に使う 多くの人は年収を基準に生活水準を決めます。年収500万円だから特上を頼んでもいい、という発想です。でも著者は、それが落とし穴だと言います。 収入は気まぐれなもの。明日、失われるかもしれない。 会社の業績、病気、部署の廃止──収入は自分では選べません。土台のしっかりしたほうを基準にすれば、生活は崩れにくくなります。 ただし注意点もあります。0.01%ルールが成り立つのは、生活費を収入でまかなえている場合だけ。資産720万円の人が失業したら、1日720円で暮らすことはできません。「資産で使い方を決め、収入で生活を支える」。この二本立てが前提です。 ポイント4:挑戦するかどうかは「1%ルール」で決める 転職しようか、副業を始めようか、資格を取ろうか。迷ったときの物差しが1%ルールです。 その挑戦が資産を1%以上増やす可能性があるなら、やる価値がある。届かないなら、時間と労力を別のことに使う。 レベル1(資産1%=1.5万円)── 時給の仕事、節約が効く レベル2(同15万円)── スキルを磨いて単価を上げる レベル3(同150万円)── 昇進、副業、投資が効いてくる レベル4(同1,500万円)── 起業や大きな挑戦 面白いのは、同じ行動でも資産レベルによって「割に合うかどうか」が変わるという点です。レベル1の人にとって1日100円の節約(年3万円)は、100万円を年3%で運用するのと同じ威力があります。でもレベル3の人が同じ節約に神経をすり減らすのは、時間の使い方としてもったいない。部活で言えば、基礎練が必要な時期と、試合勘を磨くべき時期が違うようなものです。 ...

August 4, 2026

「安くなってから買おう」は、なぜ損なのか?──世界的ベストセラー『JUST KEEP BUYING』をやさしく解説!

株価が下がるニュースを見ると「もう少し待ってから買おう」と思い、上がると「今さら買うのは高いかな」と思う。そうやって迷っているうちに、結局なにもしないまま1年が過ぎた……。そんな経験はありませんか? 今回紹介する『JUST KEEP BUYING(ジャスト・キープ・バイイング)』は、そのモヤモヤに100年以上のデータで答えを出してくれる一冊です。タイトルを直訳すると「ただ買い続けなさい」。じつにシンプルですが、この6文字の裏には、驚くほど納得できる理由があります。 著者のニック・マジューリさんは、アメリカの資産運用会社リソルツ・ウェルス・マネジメントの最高執行責任者であり、データサイエンティストでもある人物。「なんとなくそう思う」ではなく、「データで調べたらこうだった」と語ってくれるのが本書の最大の魅力です。 この記事では、本書の要点を中学生が読んでもわかるくらいやさしくまとめました。むずかしい専門用語は使いません。それでは、さっそく見ていきましょう。 1. 「貯金」と「投資」、どっちを頑張るべき? お金の本を読むと、「まず節約しろ」と言う本と「早く投資しろ」と言う本があって混乱しますよね。本書の答えは明快で、どちらを頑張るべきかは、あなたの今の状況で変わるというものです。 判断のしかたはシンプル。「1年でいくら貯められるか」と「今持っている資産が1年でどれくらい増えそうか」を比べるだけ。 貯められる額のほうが大きいなら「貯金」に、資産が生む額のほうが大きいなら「投資」に力を入れる。 たとえば貯金が30万円しかない人が、投資のリターンを1%上げようと必死に勉強しても、増えるのは年3,000円。それより残業や副業で月1万円多く稼ぐほうが、はるかに効果的です。逆に資産が3,000万円ある人が100円の節約に神経をすり減らすのは、時間の使い方としてもったいない。同じ努力でも、効く場所は人によって違うのです。 2. 「収入の2割を貯金」に縛られなくていい 「手取りの20%は貯金しましょう」というアドバイスをよく聞きます。でも本書は、この手の万人共通のルールを疑います。理由は単純で、収入も家族構成も家賃も、人によってまったく違うからです。 大切なのは、他人が決めた数字ではなく自分が無理なく貯められる額を知ること。計算式もこれ以上ないほど簡単です。 貯められる額 = 収入 - 支出 部活の練習量と同じで、先輩と同じメニューをこなす必要はありません。自分の体力に合った量を、ケガをせずに続けることのほうが結果につながります。貯金も「ゼロでない限り、まずは合格」。少額でも仕組みにしてしまえば、あとは時間が働いてくれます。 ただし、投資を始める前にひとつだけ用意しておきたいのが生活費3〜6か月分の緊急資金です。この現金がないと、急な出費のときに、いちばん売りたくないタイミングで投資を取り崩すことになります。ゲームで言えば回復アイテムを持たずにボス戦へ行くようなもの。守りを固めてから攻める順番が大切です。 3. 節約でがんばるより、収入を増やすほうが強い 支出を削る努力には、必ず限界があります。家賃も食費もゼロにはできないからです。一方で、収入には上限がありません。だから本書は、節約より収入アップに時間を使うことをすすめます。 そのために有効なのが自分への投資。スキルを身につける、資格を取る、経験を積む。人的資本という「自分という資産」を大きくすれば、そこから生まれるお金は一生ものです。 さらに著者は、稼いだお金の使い道として「収入を生む資産を買う」ことを重視します。株式やインデックスファンドは、持っているだけで企業の稼ぎを分けてくれる存在。給料という「自分が働いて得るお金」と、資産という「お金が働いて得るお金」。この2つのエンジンを回すのが、資産形成の王道だというわけです。 4. 昇給したら、生活レベルはどこまで上げていい? 給料が上がったとき、生活をまったく変えないのはつらいものです。かといって全部使えば、お金は永遠に貯まりません。そこで本書が提案するのが、「昇給額の50%ルール」。 増えた収入の半分は使っていい。残りの半分は貯金・投資に回す。 月給が2万円増えたら、1万円は好きに使い、1万円は積立に上乗せする。これなら「頑張ったご褒美」も感じられて、貯蓄率も自然に上がります。ガマンだけの計画は、ダイエットと同じでいつか反動が来ます。続けられるルールこそが最強なのです。 5. 罪悪感なくお金を使う「2倍ルール」 お金の勉強をすると、逆に使うことが怖くなる人がいます。3,000円の服を買うだけで「投資に回すべきでは」と悩んでしまう。これは楽しくありません。 そこで登場するのが2倍ルール。ぜいたくをしたくなったら、同じ金額を投資に回すと決めるのです。1万円の食事に行くなら、1万円を積立に入れる。そこまでして欲しいかを考える判断基準にもなりますし、実行すれば「未来の自分にも同額を渡した」ことになるので、堂々と楽しめます。 お金は使うためにあります。貯めることが目的になってしまうと、何のための資産形成かわからなくなってしまいます。 6. 「安くなるまで待つ」は、神様でも勝てない ここが本書のいちばん有名なパートです。著者は膨大なデータで、2つの方法を比べました。 ひとつは毎月コツコツ買い続ける方法(ドルコスト平均法)。もうひとつは、現金をためておいて暴落したときにまとめて買う方法。しかも後者は「いつが底値かを完璧に言い当てられる」という、神様レベルの反則的な条件をつけての比較です。 結果はどうだったか。多くの期間で、コツコツ買い続けたほうが勝ちました。理由は、待っている間に市場が上がってしまうから。底を待つ人は、上昇分をまるごと取り逃がすのです。 未来を完璧に予測できる神でさえ、待っていては買い続ける人に勝てない。 未来が読めない私たちが、タイミングを当てられるはずがありません。だから答えは、とにかく買い続ける。これがタイトルの意味です。 同じ理由で、まとまったお金が手に入ったときも「様子を見ながら」より早く市場に入れたほうが有利になりやすいとデータは示しています。大事なのは、買わない期間をつくらないことです。 7. 暴落は「入場料」。こわい時こそ買い続ける とはいえ、買い続けるのは口で言うほど簡単ではありません。相場が3割下がり、SNSに悲観的な言葉があふれる時期は必ずやってきます。 本書はその下落を、「リターンを得るために払う入場料」だと表現します。遊園地に入るのにチケット代がいるように、株式の高いリターンには「値動きに耐える」という代金がついている。無料で乗れるアトラクションはないのです。 だからこそおすすめされるのが、自動積立という仕組み。毎月決まった日に自動で買い付ける設定にしておけば、こわくても、忙しくても、機械が淡々と実行してくれます。意志の力に頼らないことが、感情に負けないための最善策です。 そして買う対象は、当てにいく個別株より世界中に分散されたインデックスファンド。プロでも市場平均に勝ち続けるのは至難の業だと、データがはっきり示しています。 8. いちばん大切な資産は、増やせない「時間」 最後に本書が語るのは、お金の話ではありません。時間の話です。 お金は減っても取り戻せます。しかし時間だけは、どんな大富豪でも買い戻せません。だから著者は、お金は時間を取り戻すために使えと言います。時短家電を買う、通勤の短い家に住む、人に頼む。それは浪費ではなく、人生でいちばん貴重な資産への投資です。 資産を増やす目的は、数字を大きくすることではなく、自分の時間を自由にすること。 では、その自由はいくらあれば手に入るのか。本書が紹介するのが有名な「4%ルール」です。資産の4%を毎年取り崩す前提なら、必要な金額は1年の生活費の25倍。年間300万円で暮らすなら7,500万円が目安、という具合に、ぼんやりした不安が「数字」に変わります。 なお「いつ売るのか」についても本書は答えを示しています。売っていいのは、資産の偏りを直すとき、一つの銘柄に集中しすぎているとき、そして人生の目的のためにお金を使うとき。値動きが不安だから売る、は理由になりません。 そして本書は、資産が増えても幸福感がすぐには追いつかない理由にも触れています。だからこそ、遠い将来の目標だけを見つめて今を犠牲にしないこと。今日を楽しみながら、淡々と買い続ける。これが著者の伝えたい姿だと感じました。 私にとっての『JUST KEEP BUYING』 最後に、少しだけ個人的な話をさせてください。 ...

August 4, 2026

なぜ、同じ収入でも「貯まる人」と「貯まらない人」がいるの?──100年読み継がれる名著『バビロンの大富豪』を中学生にもわかるように解説!

毎月まじめに働いているのに、なぜかお金が残らない。かたや、同じくらいの収入なのに、しっかりお金を増やしていく人もいる――。この違いは、いったいどこから生まれるのでしょうか? じつはその答えは、いまから約100年前、いえ、物語の舞台までさかのぼれば数千年前から、まったく変わっていません。 今回紹介するのは、世界中で読み継がれるお金の古典『バビロンの大富豪』(原題 The Richest Man in Babylon)。著者は、アメリカの実業家ジョージ・S・クレイソンさんです。1926年に発表されたこの本は、古代都市バビロンを舞台にした「物語」のかたちで、お金を貯め・守り・増やすための原理原則を教えてくれます。 物語には、いくら働いてもお金がたまらないと嘆く馬車職人や竪琴弾きが登場します。彼らが大富豪アルカドのもとをたずね、富の秘密を教わっていく――そんな親しみやすいストーリー仕立てなので、お金の本が苦手な人でもすっと入っていけます。 むずかしい専門用語はほとんど出てきません。中学生が読んでもわかるくらいやさしいのに、大人が一生使えるお金の知恵がぎっしりつまっている――それが、この本が100年も愛され続ける理由です。今日はその中身を、8つのポイントにしぼってやさしく解説していきます! ① まずは「収入の10分の1」を自分のために取っておく バビロン一のお金持ち・アルカドが、いちばん最初に教えたルールはこれです。 稼いだお金のうち、少なくとも10分の1は、自分のために取っておきなさい。 給料が入ったら、10枚のうち9枚で暮らし、残りの1枚は「なかったもの」として貯金にまわす。たったこれだけです。 ポイントは、余ったら貯めるのではなく、先に貯めること。ゲームでいえば、冒険に出る前にまずセーブしておくようなものです。残ったお金で生活する――この順番にするだけで、財布は少しずつ、でも確実に太っていきます。 「たった10分の1で何が変わるの?」と思うかもしれません。でもアルカドは言います。少しずつでも貯め始めた人の財布には、不思議とお金が流れ込んでくるようになる、と。 おもしろいのは、10分の1を抜いても暮らし向きはほとんど変わらないという点です。人は手元にあるお金を、あればあるだけ使ってしまうもの。だからこそ、最初にひとつまみ取り分けておくだけで、生活の質を落とさずに、着実に資産の芽を育てられるのです。 ② 「必要な出費」と「ただ欲しいだけの出費」を分ける 貯金を始めると、多くの人がこう思います。「10分の1を抜いたら、生活が苦しくなるのでは?」 でも本書はきっぱり言います。欲しいものと、必要なものは、まったくの別物だと。 人の欲望には限りがありません。収入が増えれば、欲しいものも同じだけ増えていく。だから、いくら稼いでも「使いたい欲」に追いつかれてしまうのです。 そこで大事になるのが「予算を立てる」こと。使ってもいい金額をあらかじめ決めておけば、気まぐれな衝動買いにブレーキがかかります。使っていないサブスクや、なんとなく続けている固定費を見直すだけでも、意外と削れるお金は見つかるものです。 ③ 貯めたお金を「働かせる」――お金にもうひとり働いてもらう お金をただ金庫に眠らせておくのは、じつはもったいないこと。本書は、貯めたお金をさらにお金を生む「種」として使いなさいと教えます。 貯めた黄金を働かせれば、それがまた新しい黄金を連れてくる。 これは、畑にまいた1粒の種が、やがて何十粒もの実をつけるのと同じ。お金がお金を呼び、その増えたお金がまた次のお金を呼ぶ。雪だるまが転がるほど大きくなるように、時間を味方につければ、資産はふくらんでいきます。 大事なのは、少額でもいいから「働く場所」にお金を置いてみること。早く始めた人ほど、この雪だるまを大きく育てられます。 本書がすごいのは、この「お金に働いてもらう」という発想を、数千年前の物語の中ですでに語っていること。自分の体は一日24時間しか働けませんが、お金には休みも眠りもありません。あなたが寝ている間も、遊んでいる間も、こつこつと働き続けてくれる――そんなもうひとりの働き手を持てるかどうかが、大きな分かれ道になります。 ④ 大切なお金を「守る」――わからないものには手を出さない お金は、増やすことよりも失わないことのほうがずっと大切です。100かけて増やしても、1回の大失敗でゼロになっては意味がありません。 本書には「黄金の五つの法則」という教えがあり、その中でくり返し警告されるのがこれです。 黄金は、自分がよく知らないものに投資する人から、逃げていく。 SNSやネットで見かける「絶対もうかる」「今だけ」という甘い話ほど、あやしいもの。よく知らないゲームにいきなり大金を課金しないのと同じで、中身が理解できないものには近づかない。これが、お金を守るいちばんの盾になります。 本書には、大金を持ちながらだまされて全財産を失ってしまう人の話も出てきます。共通しているのは、「早く増やしたい」というあせりにつけこまれた点です。判断に迷ったら、その道にくわしい信頼できる人の意見を聞くこと。そして、うますぎる話は「何かおかしい」と一歩引いて考えること。守りを固めてこそ、増やす攻めが生きてきます。 ⑤ 自分の「稼ぐ力」こそ、最大の資本 お金を貯めて、増やして、守る。それも大事ですが、本書はもうひとつ、意外な資産に目を向けさせます。それは――あなた自身です。 稼ぐ力を高めることは、いちばん確実な投資である。 同じ仕事でも、スキルや知識が上がれば、もらえる報酬も上がっていきます。これは、ゲームでレベルを上げると強い装備が手に入るのと似ています。本を読む、勉強する、経験を積む。こうした自己投資は、一度身につけば一生あなたから離れません。 学校でも会社でも、学び続ける人のところに、お金を稼ぐチャンスは集まってくるのです。 しかも、この「稼ぐ力」は不景気にも強いのが特長です。株や不動産の値段は下がることがありますが、あなたが身につけた知識やスキルは、値下がりしません。自分という資本を育てることは、どんな時代でも裏切らない、いちばん確実な投資なのです。 ⑥ 「未来の自分」に、いまから仕送りをしておく 若いうちや元気なうちは、なかなか実感がわかないもの。でも本書は、将来の自分と家族のために、いまから準備しておくことの大切さを説きます。 たとえば、家賃を払い続けるかわりに自分の住まいを持つこと。あるいは、年をとって働けなくなったときのために、少しずつ備えを積み上げておくこと。 これは、遠くにいる「未来の自分」へ、毎月少しずつ仕送りをしておくようなイメージです。いまの自分がほんの少しがまんするだけで、未来の自分がずっと楽になる。金額の大きさよりも「続けること」が大切で、その積み重ねが、安心できる暮らしの土台になります。備えがある人は、心にも余裕が生まれます。 ⑦ 借金は「返せる計画」でコツコツ片づける 本書には、借金まみれだったラクダ商人・ダバシールが、見事に立ち直る物語が出てきます。そのカギになったのが、シンプルなお金の配分ルールでした。 収入の10分の7で暮らし、10分の2で借金を返し、10分の1を自分のために貯める。 ポイントは、借金を返しながらも貯金をやめなかったこと。返済だけに追われると心が折れてしまいますが、少しでも自分のお金が増えていくと、前を向いて続けられます。 借金は、あわてて一気に返そうとしなくて大丈夫。返せる計画を立てて、一歩ずつ。地味ですが、これがいちばん確実な脱出法です。 ⑧ 「幸運」は、行動して備えた人のところにやってくる 最後に、この本がくり返し伝える大切なメッセージです。 幸運の女神は、行動する人に微笑む。 ...

August 2, 2026

お金持ちになるのに「がまん」だけじゃダメ?──200万部突破『お金の大学』を、いちばんやさしく解説!

「お金持ちになりたい!」——そう思ったとき、あなたならどうしますか? 「とにかく節約して、コツコツ貯金する」と答えた人は、じつは半分正解で半分まちがいです。ただ貯めるだけでは、お金持ちにはなれません。 今回紹介するのは、令和で一番売れているお金の本『本当の自由を手に入れる お金の大学』(改訂版)。著者は、YouTubeの人気チャンネル「リベ大」でおなじみの両@リベ大学長さんです。学長さんは高校生のときに起業し、10代で1年に1億円以上を稼いだこともある、お金のプロ中のプロ。 そんな学長さんが「これだけは知っておいてほしい」とまとめたのが、一生お金に困らないための「5つの力」です。この記事では、中学生が読んでもわかるくらいやさしく、それでいて、これから資産形成を始める大人の方にしっかり役立つように、8つのポイントで解説していきます! ① そもそものゴールは「経済的自由」 この本がめざすゴールは、ただの「お金持ち」ではありません。経済的自由という状態です。 経済的自由とは、かんたんに言うと「働かなくても、入ってくるお金だけで生活できる状態」のこと。 生活に必要なお金 < 自動で入ってくるお金 この式が成り立てば、「お金のために、いやな仕事をむりやり続ける」必要がなくなります。好きなことを選べる、自由な人生に近づけるんです。 「自動で入ってくるお金」って何?と思いますよね。たとえば、持っている株からもらえる配当(その会社が「ありがとう」とくれるお金)や、貸したお金の利子などがそうです。最初はほんの少しでOK。この“自分で働かなくても入ってくるお金”を、コツコツ育てていくのがゴールなんです。 そして、そのゴールにたどり着くための地図が、次に紹介する「5つの力」です。 ② 【貯める力】一番効くのは「固定費」を見直すこと 節約というと、「お菓子をがまんする」「安いものを選ぶ」を思いうかべますよね。でも学長さんは、そこより先に見直すべきものがあると言います。それが固定費です。 固定費とは、毎月ほぼ自動で出ていくお金のこと。スマホ代、保険、家賃などがそうです。ゲームの「月額課金」を、使っていないのにずっと払い続けているイメージです。 たとえばスマホを大手から格安SIMに変えると、月5,000円が1,500円になったりします。これだけで1年に約4万円の節約。毎日ジュースをがまんするより、ずっとラクで効果も大きいんです。 もう一つ見直したいのが保険です。日本には「社会保険」という国のしくみがしっかりあるので、じつは民間の医療保険やがん保険は、多くの人にとって入りすぎだと学長さんは言います。「なんとなく安心だから」で入っている保険を見直すだけで、年に何万円も浮くことがあるんです。 一度見直せば、あとは自動でずっとおトク。これが固定費のすごさ。 ③ 【増やす力】お金にも“アルバイト”してもらう 貯めたお金を、ただ貯金箱に入れておくのはもったいない。学長さんは「お金にも働いてもらおう」と言います。それが投資です。 投資と聞くと「ギャンブルでしょ?」とこわく感じるかもしれません。でも学長さんがすすめるのは、世界中の会社にまとめて少しずつ投資する「インデックス投資」という方法。1社だけに賭けるのではなく、クラス全員の平均点を買うようなイメージなので、リスクが低いんです。 そして投資の最強の味方が複利。増えたお金がさらにお金を生み、雪だるまのようにふくらんでいきます。最初は小さくても、時間をかけるほどスピードがどんどん速くなるのが複利のすごさです。 しかも今は「新NISA」という、投資で増えたお金に税金がかからないおトクな制度もあります。ふつうは増えた分の約2割を税金として取られるので、これはかなり大きい。国が「投資してね」と用意してくれた、使わないと損なしくみなんです。 投資で最大の味方になるのは「時間」です。だからこそ、思い立った“今日”が、いつでも一番早いスタートになります。 ④ 【稼ぐ力】収入の入り口を増やす 貯める・増やすと同じくらい大事なのが、そもそもの収入を増やす「稼ぐ力」です。 多くの大人は、収入が「会社の給料」ひとつだけ。でもそれって、イスの脚が1本しかないようなもの。その脚が折れたら(会社をやめることになったら)、一気にたおれてしまいます。 だから学長さんは、給料に加えて「副業」で収入の柱を増やそうと言います。ブログ、動画編集、ハンドメイド作品を売る……好きなことや得意なことがお金になる時代です。 脚が2本、3本とあれば、1本折れても大丈夫。収入の入り口が多いほど、人生は安定するんです。 もう一つ大切なのが、お金の“生み出し方”です。給料は「だれかに雇われてもらうお金」。いっぽう副業の多くは「自分でお金を生み出す力」です。この「自分で生み出す力」は身につけるのが少し大変ですが、一度手に入れれば一生モノの武器になります。 ⑤ 【使う力】お金は「幸せ」に変えてこそ意味がある 「え、使う“力”?貯めるのが大事じゃないの?」と思いますよね。じつはここが、この本のいちばん深いところ。 お金は、ただ持っているだけでは1円も幸せを生みません。使って初めて、思い出や経験、人とのつながりに変わります。 ガチャに全部つっこんで一瞬で終わるより、友だちとの旅行や、ずっと役立つ本にお金を使ったほうが、心に残りますよね。 学長さんがすすめる「いい使い方」の代表が、経験・人・寄付です。旅行やチャレンジといった経験は、あとから「思い出」という財産になります。人へのプレゼントや寄付は、まわりを笑顔にして、それがめぐりめぐって自分にも返ってくる。お金は「ひとりじめ」するより「上手に回す」ほうが、大きな幸せを生むんです。 大切なのは「何を買うか」より「それで自分が本当に幸せになれるか」。 お金は目的ではなく、幸せになるための道具。この考え方を持てるかどうかで、人生は大きく変わります。 ⑥ 【守る力】せっかくのお金を減らさない 最後の力は、貯めて増やしたお金を「守る」力です。じつは、お金を失う落とし穴はあちこちにあります。 詐欺(さぎ):「絶対もうかる」という話は、ほぼウソ ムダづかい:見栄(みえ)を張るための買い物 インフレ:物の値段が上がって、お金の価値が下がること とくに気づきにくいのがインフレです。たとえば今100円のジュースが、10年後に150円になっていたら、同じ100円玉ではもうジュースが買えません。お金を貯金箱に入れっぱなしにするだけだと、金額は同じでも「買える量」がこっそりへっていくんです。だからこそ、③の「増やす力」が、じつは守る力にもつながっています。 RPGで苦労して手に入れたレア装備を、油断してぬすまれたらショックですよね。お金も同じで、貯めるのと同じくらい「減らさない」ことが大事なんです。「うまい話には裏がある」と覚えておくだけで、多くのピンチを防げます。 ⑦ 「知らない」が、いちばん損をする ここまで読んで「こんなに大事なこと、学校でも会社でもちゃんと教わらなかったな」と思いませんでしたか? そうなんです。お金の知識は、とても大切なのに学校ではほとんど教えてくれません。だから、知っている人と知らない人で、大人になってから大きな差がついてしまう。 お金の不安の正体は、「知らないこと」が多いからかもしれません。 逆に言えば、知識さえあれば不安は消せるということ。何をどうすればいいか、道すじが見えるからです。この本が200万部も売れたのは、その「見えない不安」を消してくれるからなんですね。 ⑧ 完璧じゃなくていい。まず一歩から 5つの力(貯める・増やす・稼ぐ・使う・守る)を、いきなり全部マスターする必要はありません。学長さんも「バランスよく、少しずつ育てよう」と言っています。 大事なのは、テストの一夜づけのようにあわてることではなく、毎日コツコツ続けること。1つずつでも身につければ、平均的な人でも必ず今より自由な生活に近づけます。 そして、資産形成に「もう遅い」はありません。あなたが動き出す“今日”が、これからの人生でいちばん若い日です。1日でも早く始めた分だけ、時間を味方につけられます。 じつは、この本は私自身の人生も変えました 最後に、少しだけ私の話をさせてください。 私がこの本に出会ったのは、2021年。妻から初版を手渡されたのがきっかけでした。それまでの私は、お金について「なんとなく不安だけど、何をどうすればいいのか分からない」という状態。でもこの一冊を読んで、資産形成の“進むべき方向”と、今すぐやるべき“具体的な行動”が、はっきりと見えたんです。 ...

July 29, 2026

借金だらけの「ダメ男」が、25年で2億円?──水瀬ケンイチ『彼はそれを「賢者の投資術」と言った』をやさしく解説!

「投資」と聞くと、頭のいい人がパソコンとにらめっこして、上がりそうな会社の株を当てる…そんなイメージはありませんか? でも、水瀬ケンイチさんの『彼はそれを「賢者の投資術」と言った』は、まったく逆のことを教えてくれます。 主人公は、天才でもお金持ちでもない、ごくふつうの会社員。それどころか、20代のころは貯金ゼロ、車のローンを2台分もかかえた「ダメ男」でした。 そんな人が、25年後には約2億円の資産を持つまでになります。しかも、使った方法はとてもシンプル。この記事では、その25年間の物語と教えを、中学生でもわかる言葉でまとめてみました。 ポイント1:スタートは「貯金ゼロのダメ男」 著者の水瀬さんは、IT企業ではたらくふつうの会社員です。 でも20代のころは、給料をぜんぶ使ってしまい、貯金はゼロ。車のローンまでかかえていました。「このままではやばい」と気づいたのが、すべての始まりです。 大事なのは、特別な才能があったわけではないということ。図書館を何カ所もはしごして、お金の入門書を片っぱしから10冊以上読む。そうやって、ゼロから勉強を始めただけなんです。 この本のすごいところは、25年間の資産の増え方が、金額のグラフとともにぜんぶ正直に公開されていること。うまくいった話だけでなく、失敗して落ちこんだ時期も包みかくさず書かれています。 だからこそ、「自分にはムリ」と思っている人にこそ、「ふつうの人でもできるんだ」という希望をくれるのです。 ポイント2:最初は「チャートに振り回されて」失敗した 水瀬さんも、最初から今のやり方だったわけではありません。 はじめは、株価のグラフ(チャート)とにらめっこして、「上がりそうな株」を当てようとしていました。値動きが気になって、仕事中もこっそりトイレで株価をチェックする毎日。水瀬さんは、この時期のことを「トイレ・トレーダー時代」と呼んでいます。 これ、スマホの通知が気になって、授業中でも何度もこっそり見たくなるのと似ていますよね。株価に心を支配されて、だんだん自分を見失っていったのです。 結果は、疲れるばかりでちっとも儲からない。「もっといい方法があるはずだ」と探し続けた末に、たどりついた答えが「インデックス投資」でした。遠回りしたからこそ、本物にたどりつけたというわけです。 ポイント3:答えは「詰め合わせパック」を買うこと 「インデックス投資」は、むずかしそうな名前ですが、中身はシンプルです。 ふつうの投資は、「この1社が伸びる!」と1社の株に賭けます。これは、運動会でたった1人の選手に全部を賭けるようなもの。当たれば大きいけれど、外れたらおしまいです。 いっぽうインデックス投資は、世界中の会社をまるごと「詰め合わせパック」で買うイメージ。「オルカン」と呼ばれる商品なら、たった1つ買うだけで、世界中の何千もの会社にまとめて投資できます。 だから、どれか1社がダメになっても、ほかの会社ががんばってくれるので、全体ではあまり困りません。カバンの中身をぜんぶ同じ教科書にせず、いろんな教科を入れておくようなもの。1つを忘れても、ほかで点が取れます。 しかも、毎月決まった額を自動で買っていくだけ。むずかしい予想も、特別なテクニックもいりません。これがいちばんかしこい方法だ、と水瀬さんは言います。 ポイント4:いちばん難しいのは「やめないこと」 やり方はとても簡単。でも、じつは最大の難関があります。それは「途中でやめたくなること」です。 投資の世界では、数年に一度、値段が大きく下がる「暴落」が起きます。ニュースは「大不況!」と大さわぎし、まわりの人もどんどん売り出します。自分のお金が半分になったら、こわくて「もう売っちゃおう」と思ってしまいますよね。 でも、下がったときに売るというのは、部活で一回試合に負けただけで「もうやめる」と言い出すのと同じ。しかも暴落のあとは、たいてい時間をかけて値段がもどっていきます。つまり、あわてて売る人は「一番安いときに手放す」という、いちばんもったいない行動をしているんです。 あわてて売ってしまうことこそ、いちばん大きな損につながる。 だからこそ、下がってもどっしり持ち続ける力が必要になります。 ポイント5:暴落の「予防接種」ができる本 では、どうすれば持ち続けられるのか。この本のいちばんの価値がここにあります。 水瀬さんは、2008年の「リーマンショック」という大暴落で資産が半分になってしまいました。コツコツ増やしてきたお金が、一気に消えていく恐怖。しかもインデックス投資をすすめていたので、ネットでは「ほら見たことか」と悪口の嵐にもさらされました。ものすごくつらい経験です。 でも、ここで売らずにじっとがまんして持ち続けた結果、数年後には資産はしっかり回復しました。そしてこの経験があったから、2020年の「コロナショック」で世界中がパニックになったときも、「この感じ、前にもあった。あわてて売るのが一番損だ」と冷静でいられたのです。 つまりこの本を読むと、水瀬さんの体験を借りて、暴落を疑似体験できるのです。予防接種で軽く病気を体験して本番に備えるのと同じ。だから、いざというとき慌てずにすみます。 ポイント6:「まさか」に備える貯金を残しておく 暴落のとき、いちばんやってはいけないのが「お金がなくて、しかたなく売る」こと。 たとえば急に病気やケガでお金が必要になったら、値下がりしている最悪のタイミングでも、投資を売るしかなくなります。 この本によれば、生活のための貯金を用意していない人は、最悪のタイミングで売ってしまう確率が3倍にもなるそうです。 だから、投資に回すお金とは別に、すぐ使える貯金(これを「生活防衛資金」といいます)を残しておくことが大切です。 これは、ゲームで言えば「いざというときのための回復アイテム」を持っておくようなもの。手元に余裕があれば、暴落が来ても「売らずに待つ」という正しい行動が取れます。この貯金こそが、暴落を乗りきるための「安全ネット」になるのです。 ポイント7:「なぜ続けられるのか」を知ると強い じつは、インデックス投資は理屈を知らなくても続けられます。でも、「なぜこれでいいのか」がわかると、迷わなくなるのです。 本の後半では、続けられる理由が世界中の研究データで説明されています。たとえば、 初心者の約6割が「安いときに買って高いときに売る、そのタイミングを当てるのが大事」と思っている。でも実際は、そのタイミング当てこそが成績を悪くする一番の原因だとわかっています。テストの点をねらって一夜漬けを繰り返すより、毎日少しずつ勉強したほうが伸びるのと同じです。 欲ばって「あれもこれも」とたくさんの商品を買いすぎると、かえって成績が下がってしまうこともある。あれこれ手を広げすぎると、どれも中途半端になるのと同じですね。 つまり、頭を使って賢く立ち回ろうとするより、シンプルにコツコツ続けるほうが強い。理由がわかっていれば、まわりの「今が売りどきだ!」といった雑音にも振り回されなくなります。 ポイント8:タイトルの「彼」ってだれ? 最後に、タイトルの「彼」とはだれのことでしょう。 それは、経済評論家の山崎元(やまざき・はじめ)さん。水瀬さんと本を一緒に書いた仲間で、残念ながら亡くなってしまいました。 山崎さんは、「手数料の高い商品を売りたい」金融業界からきらわれることもいとわず、ふつうの人の味方になって「本当に正しいこと」を言い続けた人です。むかしの日本では、「市場全体と同じくらいの成績で満足する」というインデックス投資の考え方は、ほとんど理解されませんでした。それが今、「投資はまずインデックスから」と当たり前に言われるようになったのは、水瀬さんや山崎さんのような人たちが地道に伝え続けてくれたおかげなのです。 この本は、インデックス投資の教科書であると同時に、そんな山崎さんへの「ありがとう」の手紙でもあるのです。 まとめ:今日からできる3つのこと 『彼はそれを「賢者の投資術」と言った』の教えを、中学生の生活に置きかえるとこうなります。 少しずつ「続ける」練習をする(勉強でも運動でも、一発逆転より毎日コツコツが勝つ) 「まさか」に備えて、使わないお金を少し残しておく(お小遣いを全部は使いきらない) 一回の失敗であわてない(下がってもやめない人が、最後に笑う) 投資の本当のコツは、頭の良さでも運でもなく、「やめずに続ける心」。この本は、その心の育て方を、25年分の実話で教えてくれます。気になった人は、ぜひ本も読んでみてください! 私自身、5人の子を育てながらインデックス投資を続けてきた身として、この本の「ふつうの人が、遠回りしながらたどり着いた」という語り口には、ひとつひとつ深くうなずかされました。同じ著者を悼む一冊として、先日ご紹介した山崎元さんの『経済評論家の父から息子への手紙』とあわせて読むと、より胸に迫ります。これから投資を始める方の、最初の一冊にもおすすめです。 彼はそれを「賢者の投資術」と言った水瀬ケンイチ/Gakken。貯金ゼロのダメ男が25年で約2億円。インデックス投資の全記録を、グラフとともに正直に公開した実話 Amazonで見る ›

July 26, 2026

二軒目は、意図して買いに行った——松戸・築古戸建、オーナーチェンジ購入記

お金と僕の12年戦争・第14話 前回は、一軒目・高砂のペンシルハウスの運営のリアルをお話ししました。今回は二軒目、松戸の築古戸建です。こちらは高砂とはまったく事情が異なります。入居者様がいる状態の物件を「オーナーチェンジ」というかたちで購入した——つまり、初めて自分の意思で「買いに行った」投資物件。その購入までの1年間のストーリーを、たっぷりとお話しします。 「もう1軒持ちたい」が、抑えられなくなった 建て替えた自宅を、住み替えを機に賃貸に出し、いつの間にか大家になっていた——というのが1軒目でした。給料とは別に収入が入ってくる精神的な安心感と、現実のキャッシュフローの増加は、わが家の家計にとても貢献してくれることとなりました。 その成功体験もあり、またリベ大YouTubeの「不動産投資」に関する動画を何回も繰り返し視聴するうちに、どうしてももう1軒、投資物件を持ちたいという思いが、抑えられないくらい膨らんでしまいました。 そうなると、動き出さずにはいられない私です。リベ大以外の「築古戸建投資」を扱ったYouTubeを、かたっぱしから探し出しては視聴しまくりました。同時に不動産投資関連の書籍も数冊購入して、知識を蓄えていきました。そのころ頭の中は「どうしたらよい物件を見つけ出せるのだろうか」で、ほとんどを占めていましたね(笑)。 私が決めた、購入物件5つの条件 知識を蓄えながら、ネットの不動産サイト——at home、SUUMO、楽待——を、毎日時間の許す限り見まくっていました。そして、購入物件の条件として私が決めたのが、次の5つです。 自宅から私が走って行ける距離(笑)。何かあればすぐ駆けつけられること。 土地所有権の築古戸建。建物価値はほぼ0になっているだろうから、できるだけ土地値と購入価格の差が小さい物件。 現金一括購入するため、予算は800万円。 最寄り駅からは、できれば徒歩20分以内。 物件所在地周辺の環境として、学校やスーパー、クリニックなど子育てしやすそうなエリア。 条件②の考え方:土地値に近い価格で買えれば、建物の価値がゼロでも、最悪土地として売却すれば大きく損をしない——という「守り」の発想です。この「土地値に近い価格で買う」という判断が本当に正しかったのか。それは後の回で、ある形で答え合わせをすることになります。 「あぁ~また売れちゃった」を、4、5ヶ月 こうして絞り込んでいったのですが、なかなか最初の頃は、「いいな」と思っても業者へ連絡を入れて内覧の希望を伝えることができませんでした。そうこうしている間に、そういった物件は消えていっちゃうんです。「あぁ~また売れちゃった」なんてことを、4、5ヶ月くらいやってましたね。 それでも、私が「いいな」と思った物件が売れていくということは、物件選びでそれほどトンチンカンではなさそうだ——と妙な自信が付き、そこからは気になった物件を見つけるとどんどんメールや電話で連絡を入れ、内覧の申し込みをしていきました。 最初は内覧しても、何を聞いたらいいのか、どこを観たらいいのか、ちんぷんかんぷんでした。でもそれも、数をこなしていくうちに業者とのやり取りに慣れてきましたね。 そして出会った、松戸の築古戸建 この物件は『楽待』で見つけました。780万円で掲載されていて、土地値を路線価図から求めてみたのですが……正直、その計算が妥当だったかは怪しいです(笑)。それでも、条件と価格を見て「これだ」と思いました。 入居者の状況は、業者から資料を見せてもらいました。子ども4人の6人家族とのこと。利回りは表面利回り10%です。 項目 内容 所在 千葉県松戸市 築年月 昭和52年(1977年)11月/築約48年 構造・屋根 木造瓦葺2階建て 延床面積 60.14㎡(1階34.22㎡+2階25.92㎡)/約18〜19坪 間取り 3DK 最寄り駅 JR常磐線・松戸駅 徒歩約21分(約1.5km) 購入価格 7,800,000円(現金一括) 引き継いだ賃料 65,000円/月 表面利回り 10% この物件はオーナーチェンジ物件だったため、内覧はできませんでした。ふつうなら、中を見られないのは大きな不安材料です。ところが今回は、売主が今回の仲介業者そのもので、入居前に行ったリフォーム工事もこの業者が発注していたため、行われた工事の様子を写真付きで詳しく残してくれていました。納得のいく説明をいただけたことで、購入に前向きになれたのです。 そうなると、むしろすでに入居者がついているオーナーチェンジ物件は、安心感があったとすら言えます。買った瞬間から家賃が入ってくるわけですから。 買い付けから決済まで——初めてづくしの契約手続き まずは買付証明書を提出しました。競合はおらず、指値(値引き交渉)は入れず、満額の780万円で申し込みました。この買付証明書を出すときは、かなりドキドキしましたね。なにしろ、これまでの生涯で現金で買い物をする、最高金額の買い物ですから。 契約日当日は、雨が降っていました。売主である不動産業者の店舗で契約を行うことになっていたので、店舗の扉を開けるときには心臓がバクバクしていました。手付金は70万円を現金で用意しました。 契約ではさまざまな説明を受けましたが、事前に書籍などで知識を蓄えておいたおかげで、契約そのものは落ち着いて臨むことができました。ここでも、前回の高砂での教訓——「理解していない契約は結ばない」——が生きていたのだと思います。 契約後は、決済日(引き渡し日)に合わせた火災保険の契約が必要と考え、数社から見積もりを取って決めました。考え方は**「シンプルで必要最小限」**。過剰な補償はつけず、守るべきところを守る内容にしました。 火災保険の内容 設定 契約期間 5年間 保険料 13,550円/年 保険金額 1,100万円 火災・落雷・破裂・爆発 1,100万円(庭木・屋外設備は1事故100万円まで) 風災・雹災・雪災 1,100万円(庭木・屋外設備は1事故100万円まで) 地震保険 加入せず そして決済です。登記代行手数料として、現金で168,190円を司法書士へお支払いしました。また、営業費として106,032円を、売主でもある不動産業者へお支払いしています(この費目の詳しい説明は必ず受けたと思うのですが、正直、内容を忘れてしまいました……)。なお、仲介手数料は発生しませんでした。売主である不動産業者からの直接購入だったためです。 ...

July 10, 2026

大家業、はじめの一歩——「売りますか?」に「貸します」と答えた日

お金と僕の12年戦争・第13話 前回は、二軒の戸建賃貸がわが家の家計にもたらしてくれたものについてお話ししました。今回からは、その二軒を実際にどう運営し、いまどうなっているのか——リアルな数字と現実を、包み隠さずお話しいたします。まずは一軒目、高砂のペンシルハウスから。二軒目・松戸の築古戸建は、次回たっぷりと語ります。 「売りますか?」——業者の口から「貸しますか?」は出てこない まずは高砂のペンシルハウスから。もともと居住する目的で、空き家にしていた実家(狭小地の古家)を建て替えた家です。前回お話ししたとおり、建て替え後に出産で家族が増え、手狭になった末の転居により「この家、どうするか問題」が発生しました。ちなみに住宅ローンは完済済みです。 選択肢は二つ。「売る」か「貸す」か。 迷いますよね。これまでの人生でまったく経験のない、まったく学んでもいない事柄ですから。当然、新居として購入した建売物件を販売した業者の担当者は言います。 「いままで住んでいた家をどうなさいますか?」 「売りますか?」「売りますか?」「売りますか?」…… 「貸しますか?」は、ありませんでしたね(笑)。 売却金額のことを抜きに考えれば、私の手間としては、担当者に「売ります」と告げて任せてしまうのが一番楽な方法だったと思います。 結局、決断の決め手になったのは感情の部分——「両親が私に遺してくれた家」ということでした。不安は山積みでしたが、「貸す」を選択しました。担当者にとってはまさかの回答だったのか、ちょっとビックリした様子で聞き直していました(笑)。 理解していない契約を、結んではいけない 「貸す」と決めたはいいのですが、その先どう進めたらいいのかがわかりません。とりあえず担当者が「賃貸部門の者をご紹介いたします」と言うので、お願いすることにしました。 賃貸部門の担当者との面談では、こちらは当然の素人ですから、出てくる言葉の意味はわからないし、その条件が私にとって都合が良いのか、業者にとって都合が良いのか、まったく判断がつきませんでした。結局いろいろと説明を受けて、3ヶ月を求められたところを、2ヶ月の「専属専任媒介契約」を結びました。 この契約が良かったか悪かったかは別にして、理解していない契約を締結することは、絶対にしてはいけません。いまなら断言できます。 リフォーム? 壁紙? ——まずはクリーニングだけで勝負 そこからの私の行動です。賃貸に出すにはリフォームは必要なのか。壁紙は交換すべきか。クリーニングだけでいいのか。わからないことだらけで、担当者に聞いたのだと思うのですが、正直、記憶がありません。結局、築6年くらいだったので、まずはクリーニングのみで対応することにしました。 クリーニング業者は、担当者に頼らず私が自分で探しました。たまたま路線バスを運行していて目に留まった、墨田区に店を構える「ベンリー」というフランチャイズの業者さん。以前に縦型洗濯機の洗浄を依頼したことがあり、とても丁寧に仕事をしていただいたことを思い出して、問い合わせてみました。 戸建て一軒丸ごとの清掃依頼を受けるのは初めてだとおっしゃっていましたが、快く引き受けてくださり、3階建てにもかかわらず7万円という価格で請け負っていただきました。2日間まるまる作業していただき、場所によっては応援の方が入ってくれるなど、本当に丁寧な仕事ぶり。特にキッチンまわりのコンロと換気扇は、さすがプロと唸らされる仕上がりでした。 家賃設定の壁——「貸したい家賃」と「相場の家賃」 家賃の設定は難しかったですね。心情的に貸したい家賃と、地域相場からの家賃には開きがありましたから、募集当初は相場よりも少し高めの110,000円という設定となってしまい、募集開始から1週間ほどは内覧希望や問い合わせなどの動きがほとんどありませんでした。 そこで地域相場に合わせて100,000円に引き下げたところから問い合わせが入るようになってきたようですが、成約には至らず、2ヶ月間の「専属専任媒介契約」は終了しました。 私もこの2ヶ月間でいろいろ学びました。契約延長の依頼はありましたがお断りして、最寄りの高砂駅と隣の青戸駅にあった数軒の賃貸仲介会社と「一般媒介契約」を結んで依頼することにしました。これも初めての経験でしたので、ドキドキしました。 このとき私は、家賃をさらに92,000円まで引き下げました。正直、地域相場よりも少し安いところです。しかし2ヶ月間の空振りを経て、「高く貸す」よりも「早く決める」——スピード優先の方針に切り替えたのです。空室のままでは、家賃は1円も入ってきませんから。 結果——依頼から10日ほどで、青戸駅近くの賃貸仲介会社が入居者を決めてくれました。 成約条件 内容 募集家賃の推移 110,000円 → 100,000円 → 92,000円 成約家賃 92,000円/月(相場よりやや安め・スピード優先) 敷金 1ヶ月分 礼金 なし 仲介手数料(大家負担) 家賃1ヶ月分 ※ハウスクリーニング費用:70,000円(3階建て一軒丸ごと・2日間作業) 初めての家賃入金——給料ではない、自分で稼いだ所得 正式に契約書に署名捺印をして、最初の家賃の入金が確認できたときの喜びは、一生忘れることはないと思います。給料として受け取る以外の、本当の意味で自分自身で稼ぎ出した所得ですからね。格別なものでした。 管理はどうする?——月5,060円の委託を断り、「勉強」の自主管理へ ここで管理について触れておきます。入居者様が決まった際、仲介業者から管理を請け負いたい旨の営業がありました。管理費用は毎月家賃の5%。つまり92,000円ですから4,600円、消費税460円を加えて月5,060円です。 管理の内容をうかがうと、家賃の入金確認と、未入金の場合の督促が主な業務ということでした。私にとっては一軒だけですし、初めてのことなので「勉強」のつもりで自主管理を申し出ました。 退去と入居を繰り返して、現在へ 最初の入居者様が決まった後は、幾度か退去と入居を繰り返しながら現在に至ります。幸いにも、退去の申し入れを受けて募集を開始すると、まだ入居者様がいて内覧できない状況にもかかわらず、次の入居者様が決まる——というありがたい流れで来ております。 とはいえ、退去があれば原状回復のためのリフォーム工事は必要になりますし、外壁塗装工事もおこないました。 外壁塗装——1年待ったら、10万円値上がりしていた 外壁塗装工事は2022年12月に行い、費用は850,000円でした。 実はその約1年前、2021年11月に4社から相見積もりをとっていました。当時はまだ入居者様がおられたので、すぐに工事をするつもりではなく、準備として相場感をつかんでおきたかったのです。使用塗料・工事内容・金額を考慮して、この時点で1社を選んでいました。 そして2022年、11月末での退去が決まったのを機に、工事の決行を決断。あらためて同じ業者から見積もりを取ったところ——塗料などの材料費の値上げと人件費の高騰で、2021年11月時点では750,000円だった見積額が、100,000円値上がりしていたのです。 時期 見積額 2021年11月(入居中に準備の相見積もり・4社から1社選定) 750,000円 2022年12月(退去を機に工事決行・同じ1社) 850,000円(+100,000円) 2026年の現在は、さらに値上がりしているでしょうね。 ...

July 5, 2026

二軒の戸建がくれた、もう一本の柱

お金と僕の12年戦争・第12話 給与という一本足から、給与と家賃の二本柱へ。会社員である私に、家賃という新しい収入源——私自身は「不動産賃貸事業」と捉えています——が加わったこと。それは「収入が増えた」という以上に、私の人生を静かに、けれど確かに変えてくれました。 父が遺してくれた家を、私は空き家にしていた 私は葛飾区高砂で生まれ育ちました。両親は「なんとか自分たちの城を持ちたい」と頑張り、高砂に所有権11.26坪(約37.22㎡)という、狭小と呼ぶしかない土地と、そこに建つ木造2階建ての家を手に入れます。父は、その家を長男である私に遺したいと考えていたようです。 ところが私自身は、結婚を機に賃貸住宅での暮らしをスタートさせました。やがて父が亡くなり、母は埼玉県川越市に嫁いだ妹の家族のもとで暮らすようになります。こうして、私が育ったあの家は「空き家」になりました。 両親が遺してくれた家なのに、当時の私は「賃貸のほうが気が楽だ」と、空き家のまま放っておいたのです。どうにかしなければ、という思いは頭の隅にありながら——その状態が、10年ほど続きました。(父さん、ごめん。) 妻のひと言から、ペンシルハウスが建った 転機をくれたのは、妻でした。当時、私たちは9歳の長男を含む3人家族。ある日、妻が「実家を建て替えて住めないかな?」と切り出したのです。 ただ、敷地はわずか11.26坪。あまりに狭く、積極的に手を挙げてくれる工務店はなかなか見つかりませんでした。それでもどうにか引き受け先を見つけ、2008年8月、狭い土地を縦に使い切るように、木造3階建て・延床面積59.58㎡の、いわゆる「ペンシルハウス」が完成します。空き家だった実家は、こうしてようやく、家族の住む家として生まれ変わりました。 家族が増え、家が手狭になった 「3人家族なら、狭小住宅でも住んでいける」——そう考えての建て替えでした。ところが工事のさなかに妻の妊娠がわかり、「4人ならまだ大丈夫だろう」と新居に移ったときには、すでに4人家族。さらにその後、3人目の妊娠がわかり、無事に生まれて5人家族になると、さすがにこの家では狭すぎる、ということになりました。 そこで向かったのが、住み替えです。「今より子どもたちの小学校に近く、しかも高砂駅にも近い場所」という、なかなか難しい条件でしたが、運にも恵まれて良い家に出会えました。2014年6月、敷地64.32㎡・木造3階建て・延床面積102.54㎡の新築建売戸建を購入し、転居します。今でも本当に満足している我が家です。 (余談ですが、この家に移ってから妻はさらに二人の男の子を産んでくれ、我が家は4男1女、5人の子宝に恵まれました。) 住む家が「貸す家」になった、一軒目 そして高砂のペンシルハウスは、私たちが住み替えたその日を境に、「自分たちが住む家」から「人に貸す家」へと役割を変えました。これが、私の戸建賃貸業の一軒目です。 貸すために建てた家ではありません。父が遺し、妻の言葉で建て替え、家族で暮らし、そして手狭になって離れた——その積み重ねの結果として、気づけば私は大家になっていました。父に申し訳なかったあの空き家が、いまは家賃という形で家計を支えてくれている。そう思うと、少しだけ肩の荷が下りた気がします。 リベ大が背中を押した、二軒目 二軒目は、まったく違いました。 リベ大(両学長)の教えと『お金の大学』に出会い、「昇給を待つのではなく、収入を生む資産を自分で買う」という発想を知った私は、2022年1月、松戸市に敷地60.98㎡・木造2階建て・築48年の投資用築古戸建を購入しました。 築48年という数字に驚く方もいるかもしれません。けれど、リベ大で学んだ築古戸建投資の考え方に沿って、自分なりに数字を確かめ、納得して選んだ一軒でした。一軒目が「気づいたら大家」だとすれば、二軒目は「意志を持って買った大家」です。 ここで、二軒(と現在の自宅)を一覧にしておきます。 役割 取得・完成 所在地 敷地 構造・延床 一軒目(賃貸・旧自宅) 2008年8月 完成 葛飾区高砂 11.26坪(約37.22㎡) 木造3階建/延床 59.58㎡ (参考)現在の自宅 2014年6月 購入 高砂駅 近く 64.32㎡ 木造3階建/延床 102.54㎡ 二軒目(賃貸・投資用) 2022年1月 購入 松戸市 60.98㎡ 木造2階建/築48年 ※「現在の自宅」は賃貸物件ではありませんが、一軒目が賃貸へ切り替わった転機として参考に併記しています。 給与一本足から、二本柱へ ── 金銭面 会社員の収入は、基本的に給与とボーナスという一本足です。給与は生活費、ボーナスは臨時収入。シンプルですが、その一本が細れば、家計はそのまま揺らぎます。 そこに家賃収入が加わると、給与と家賃の二本柱になります。勤務先で残業が減った月でも、家賃は比較的安定して入ってくる。この「もう一本」があるだけで、家計の安定感はずいぶん変わりました。 大きいのは、昇給に依存しなくてよくなったことです。給与は毎年、数千円から数万円上がればいいほう。けれど中古戸建を一軒持てば、年間で数十万円、物件によっては100万円以上のキャッシュフローが見込めることもあります。「昇給を待つ」のではなく「資産を買って収入を増やす」。この発想の転換こそ、リベ大から受け取った一番の財産かもしれません。 ...

June 29, 2026