お金と僕の12年戦争・第14話

前回は、一軒目・高砂のペンシルハウスの運営のリアルをお話ししました。今回は二軒目、松戸の築古戸建です。こちらは高砂とはまったく事情が異なります。入居者様がいる状態の物件を「オーナーチェンジ」というかたちで購入した——つまり、初めて自分の意思で「買いに行った」投資物件。その購入までの1年間のストーリーを、たっぷりとお話しします。

築約48年の木造瓦葺2階建て。建物の価値はほぼゼロでも、土地と入居者ごと引き継ぐ——それが築古戸建投資だった。(Photo: CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons)

「もう1軒持ちたい」が、抑えられなくなった

建て替えた自宅を、住み替えを機に賃貸に出し、いつの間にか大家になっていた——というのが1軒目でした。給料とは別に収入が入ってくる精神的な安心感と、現実のキャッシュフローの増加は、わが家の家計にとても貢献してくれることとなりました。

その成功体験もあり、またリベ大YouTubeの「不動産投資」に関する動画を何回も繰り返し視聴するうちに、どうしてももう1軒、投資物件を持ちたいという思いが、抑えられないくらい膨らんでしまいました。

そうなると、動き出さずにはいられない私です。リベ大以外の「築古戸建投資」を扱ったYouTubeを、かたっぱしから探し出しては視聴しまくりました。同時に不動産投資関連の書籍も数冊購入して、知識を蓄えていきました。そのころ頭の中は「どうしたらよい物件を見つけ出せるのだろうか」で、ほとんどを占めていましたね(笑)。

私が決めた、購入物件5つの条件

知識を蓄えながら、ネットの不動産サイト——at home、SUUMO、楽待——を、毎日時間の許す限り見まくっていました。そして、購入物件の条件として私が決めたのが、次の5つです。

  1. 自宅から私が走って行ける距離(笑)。何かあればすぐ駆けつけられること。
  2. 土地所有権の築古戸建。建物価値はほぼ0になっているだろうから、できるだけ土地値と購入価格の差が小さい物件。
  3. 現金一括購入するため、予算は800万円
  4. 最寄り駅からは、できれば徒歩20分以内
  5. 物件所在地周辺の環境として、学校やスーパー、クリニックなど子育てしやすそうなエリア

条件②の考え方:土地値に近い価格で買えれば、建物の価値がゼロでも、最悪土地として売却すれば大きく損をしない——という「守り」の発想です。この「土地値に近い価格で買う」という判断が本当に正しかったのか。それは後の回で、ある形で答え合わせをすることになります。

「あぁ~また売れちゃった」を、4、5ヶ月

こうして絞り込んでいったのですが、なかなか最初の頃は、「いいな」と思っても業者へ連絡を入れて内覧の希望を伝えることができませんでした。そうこうしている間に、そういった物件は消えていっちゃうんです。「あぁ~また売れちゃった」なんてことを、4、5ヶ月くらいやってましたね。

それでも、私が「いいな」と思った物件が売れていくということは、物件選びでそれほどトンチンカンではなさそうだ——と妙な自信が付き、そこからは気になった物件を見つけるとどんどんメールや電話で連絡を入れ、内覧の申し込みをしていきました。

最初は内覧しても、何を聞いたらいいのか、どこを観たらいいのか、ちんぷんかんぷんでした。でもそれも、数をこなしていくうちに業者とのやり取りに慣れてきましたね。

そして出会った、松戸の築古戸建

この物件は『楽待』で見つけました。780万円で掲載されていて、土地値を路線価図から求めてみたのですが……正直、その計算が妥当だったかは怪しいです(笑)。それでも、条件と価格を見て「これだ」と思いました。

入居者の状況は、業者から資料を見せてもらいました。子ども4人の6人家族とのこと。利回りは表面利回り10%です。

項目 内容
所在 千葉県松戸市
築年月 昭和52年(1977年)11月/築約48年
構造・屋根 木造瓦葺2階建て
延床面積 60.14㎡(1階34.22㎡+2階25.92㎡)/約18〜19坪
間取り 3DK
最寄り駅 JR常磐線・松戸駅 徒歩約21分(約1.5km)
購入価格 7,800,000円(現金一括)
引き継いだ賃料 65,000円/月
表面利回り 10%

この物件はオーナーチェンジ物件だったため、内覧はできませんでした。ふつうなら、中を見られないのは大きな不安材料です。ところが今回は、売主が今回の仲介業者そのもので、入居前に行ったリフォーム工事もこの業者が発注していたため、行われた工事の様子を写真付きで詳しく残してくれていました。納得のいく説明をいただけたことで、購入に前向きになれたのです。

そうなると、むしろすでに入居者がついているオーナーチェンジ物件は、安心感があったとすら言えます。買った瞬間から家賃が入ってくるわけですから。

買い付けから決済まで——初めてづくしの契約手続き

まずは買付証明書を提出しました。競合はおらず、指値(値引き交渉)は入れず、満額の780万円で申し込みました。この買付証明書を出すときは、かなりドキドキしましたね。なにしろ、これまでの生涯で現金で買い物をする、最高金額の買い物ですから。

契約日当日は、雨が降っていました。売主である不動産業者の店舗で契約を行うことになっていたので、店舗の扉を開けるときには心臓がバクバクしていました。手付金は70万円を現金で用意しました。

契約ではさまざまな説明を受けましたが、事前に書籍などで知識を蓄えておいたおかげで、契約そのものは落ち着いて臨むことができました。ここでも、前回の高砂での教訓——「理解していない契約は結ばない」——が生きていたのだと思います。

契約後は、決済日(引き渡し日)に合わせた火災保険の契約が必要と考え、数社から見積もりを取って決めました。考え方は**「シンプルで必要最小限」**。過剰な補償はつけず、守るべきところを守る内容にしました。

火災保険の内容 設定
契約期間 5年間
保険料 13,550円/年
保険金額 1,100万円
火災・落雷・破裂・爆発 1,100万円(庭木・屋外設備は1事故100万円まで)
風災・雹災・雪災 1,100万円(庭木・屋外設備は1事故100万円まで)
地震保険 加入せず

そして決済です。登記代行手数料として、現金で168,190円を司法書士へお支払いしました。また、営業費として106,032円を、売主でもある不動産業者へお支払いしています(この費目の詳しい説明は必ず受けたと思うのですが、正直、内容を忘れてしまいました……)。なお、仲介手数料は発生しませんでした。売主である不動産業者からの直接購入だったためです。

決済時の主な諸費用 金額
登記代行手数料(司法書士へ) 168,190円
営業費(売主業者へ) 106,032円
仲介手数料 0円(売主から直接購入のため)

そして最後に、残金の支払いです。7,100,000円を、私の楽天銀行の口座から、先方の楽天銀行の口座へ送金しました。

「はい、送りました」「はい、入金確認できました」——スマホの画面をお互いに見せ合うだけで、人生最高額の決済が終わった。(Photo: CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons)

ここで、少し昔話をさせてください。私は新卒で、某信用金庫に勤めた経験があります。平成一桁年の頃ですね(笑)。その頃、こういう不動産決済の場面では、金融機関の一室などをお借りして送金の処理をし、送金先の口座に入金確認がとれてから、書類などの受け渡しへ進む——という段取りだったと記憶しています。

ところが今回は、お互いにネット銀行をメインにしていましたから、まったく勝手が違いました。まず私がスマホで送金の手続きをします。「はい、送りました」と私。お相手もスマホを見て「はい、入金確認できました」と業者さん。……これで完了です。すごい時代になったなぁと、感心してしまいました。

そんなことを1年くらい続けて、ようやく2022年1月11日、最終の重要事項説明、決済、登記などの手続きを済ませて、正式に2軒目のオーナーになることができました。あの雨の日、扉の前でバクバクしていた心臓が、少し誇らしく感じられた瞬間でした。

1軒目は自主管理、2軒目は「あえて任せる」

この物件の管理は、引き続き購入した不動産業者に任せることにしました。管理手数料は毎月家賃の**6%**ですが、私はほぼノータッチですので、それで満足しています。

高砂を自主管理にした私が、なぜ松戸は業者委託にしたのか。理由は二つです。ひとつは、この業者が客付けをして、それまで管理もしていて、リフォームも含め物件について一番わかっていると考えたから。もうひとつは、この物件についてはできるだけ自分の手をかけない状態にしたいと考えたからです。

1軒目は「勉強」のために自分の手を動かす。2軒目は「一番わかっている人」に任せて、あえて手をかけない。同じ大家業でも、物件ごとに戦略を変える——これも、二軒を経験したからこそ持てた考え方だと思います。ちなみに松戸は、現在も変わらず同じ入居者様が住み続けてくださっています。

引き継いだのは「手堅い契約」だった

オーナーチェンジで引き継いだのは、物件と入居者様だけではありません。契約の中身も、そのまま引き継ぎました。これが、また手堅い内容だったのです。

まず賃貸借契約の形態。松戸は**「定期建物賃貸借契約」でした。前回の高砂が「普通建物賃貸借契約」**だったのとは対照的です。普通借家が原則として更新されていくのに対し、定期借家は契約期間の満了で契約が終了する形態。貸主にとっては出口の見通しが立てやすい契約と言えます。

さらに入居者様の保証も、人的保証(連帯保証人)に加えて、保証会社の保証まで付いていました。万一の家賃滞納に対して二重に備えられている状態です。

これらはすべて、売主である業者が客付けした時点で設定していたもの。私はそれを、そのまま引き継いだかたちです。その後、一度更新の時期を迎えましたが、定期借家契約は期間満了でいったん終了するため、形式的には「新規契約」となります。それでも内容はこれまでと同様、**「定期建物賃貸借契約」+「人的保証+保証会社」**で再契約しました。手堅い枠組みを、あえて変える理由はありませんでしたから。

忘れた頃にやってくる、不動産取得税

最後にひとつ、これから物件を買う方への注意です。不動産取得税。想定はしていたのですが、購入から5ヶ月ほど経ってから納税通知書が届いたので、正直なところ、頭からすっかり抜けていました。金額は87,100円。「あぁ、そうだった」と苦笑いです。物件の購入費用だけでなく、こうした後からくる税金も、あらかじめ資金計画に入れておくべきですね。

今回の教訓

  • 買う前に「自分の条件」を書き出して決めておく。迷ったとき、戻る場所になる。
  • 「いいな」と思った物件が売れていくなら、目利きは間違っていない。次は自分が動く番。
  • 内覧も業者とのやり取りも、数をこなせば必ず慣れる。最初のちんぷんかんぷんは通過儀礼。
  • オーナーチェンジで内覧できなくても、リフォーム記録など情報で不安は埋められる。むしろ入居中の物件は買った瞬間から家賃が入る安心感がある。
  • 事前に書籍で知識を蓄えておけば、人生最高額の契約でも落ち着いて臨める。
  • 管理は「自主管理か委託か」の二択ではなく、物件ごとに選ぶもの。一番わかっている人に任せる判断もある。
  • オーナーチェンジでは、契約形態や保証(定期借家・人的保証+保証会社)といった「手堅い枠組み」ごと引き継げることがある。良い枠組みは、あえて変えない。
  • 不動産取得税は数ヶ月後にやってくる。物件価格だけでなく、後からくる税金まで資金計画に入れておく。

内覧できないオーナーチェンジ物件を、現金780万円で。私がこの決断を下せたのは、1年かけて動画と本で「築古戸建投資の型」を頭に入れていたからでした。なかでも、物件の探し方・数字の見方・買付から管理までを、ふつうの会社員の目線で一気通貫に教えてくれたのがこの一冊です。「これから築古戸建で一軒目・二軒目を」という方の、実戦的な地図になります。

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― 次回予告 ―

次回は、この松戸の築古戸建を買ったあと——「その後どうなったか」をお話しします。オーナーチェンジで引き継いだ入居者様は、いまも変わらず住み続けてくださっています。そして、購入の決め手にした「土地値に近い価格で買う」という判断。あれは本当に正しかったのか。今回はあえて数字を伏せましたが、次回、ある方法で査定してみた結果とともに、しっかり答え合わせをしたいと思います。どうぞお楽しみに。


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