お金と僕の12年戦争・第10話

積立NISAをコツコツ続けながら、その頃の僕の「投資の先生」は、もっぱらYouTubeでした。通勤は相変わらず自転車。仕事でバスのハンドルを握る、その合間の休憩時間に、両学長のリベ大動画を眺めるのが、すっかり習慣になっていました。

そんなある日、一本のサムネイルが目に飛び込んできます。

【YouTube/リベ大】 【廃止決定】それなのに、ジュニアNISAをおすすめする理由

――廃止が決まった制度を、わざわざおすすめする? 矛盾しているようなこのタイトルに、僕はつい再生ボタンを押していました。

「弱点」が消えた制度

動画によれば、かつてのジュニアNISAには、二つの大きな弱点がありました。

  • 原則18歳まで引き出せない
  • 途中で解約すると、非課税のメリットを失う

子どものお金とはいえ、18歳まで一切手をつけられないのは、正直しんどい。だからこの制度は、ずっと人気がありませんでした。

子ども名義で、こつこつと。ジュニアNISAは、子の将来のための「非課税の器」だった。(Photo: stevepb / CC0)

ところが、廃止が決まったことで、皮肉にもルールが改正されます。

  • いつでも払い出しOK
  • 払い出しても、非課税メリットはそのまま維持

つまり、いちばんの弱点だった「引き出せない」が消えたのです。動画は「これで一気に使いやすくなった」と説明していました。

どんな制度だったのか

改めて整理すると、ジュニアNISAはこういう制度でした。

  • 子ども1人につき、年間80万円まで投資できる
  • 運用益・配当金は非課税
  • 子ども名義の資産になる
  • 長い時間をかけて運用できる

たとえば0歳の子に毎年80万円を積み立てれば、18歳前後まで15年以上の運用期間が確保でき、複利の効果を最大限に活かせる――動画はそう語っていました。

そして、すすめられていた商品が、S&P500連動全世界株式といった、低コストのインデックスファンド。これは、僕がいままさに自分でやっているインデックス投資の考え方と、ほとんど同じでした。気づけばリベ大の「おすすめ」に、自分の現在地のほうから追いついていた。そんな妙な手応えがありました。

ひとつだけ、注意点

ただし、見落とせない注意点もありました。子どもが18歳になると、資産は「継続管理勘定」へ移ります。ここでは――

継続管理勘定でできなくなること

  • 新規の買い付けはできない
  • 商品の変更もできない

つまり、最初に良い商品を選んで、あとはじっと長く持ち続けることが何より大事、というわけです。裏を返せば、最初の商品選びさえ間違えなければ、あとは時間が働いてくれる。インデックスファンドとは、相性が良さそうでした。

「利用しない理由が、見当たらない」

動画の結論は、シンプルでした。

小さな子どもがいて、10年以上運用できて、教育資金を準備したい。 そんな家庭なら、利用しない理由が見当たらないほど有利。

我が家は、まさにそのど真ん中。子どもは複数人、運用できる時間もたっぷりある。

――そうと決まれば、動きが早いのが僕です。

楽天証券へ、まっすぐ

高配当株投資から撤退して、手元には450万円ほどの資金が残っていました。この行き場を探していたお金に、ようやく「正解」が見つかった気がしました。

買い付けたのは全額、eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)。市場全体に、長い時間をかけて。(Chart: Richardhy / CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons)

上の長子はすでに成人して独立していたので、ジュニアNISAの対象は下の4人。すぐに楽天証券で、それぞれの子ども名義の証券口座とジュニアNISA口座を開設し、まずは4人分、年上限の80万円ずつ、迷わず eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) を買い付けました。その後も2年目・3年目と、子どもごとに配分を調整しながら買い増し。最終的には、4人合わせて500万円をジュニアNISAに投じることになりました。

  2番目 3番目 4番目 5番目 年合計
1年目 80 80 80 80 320
2年目 20 20 20 80 140
3年目 40 40
累計 100 100 100 200 500

全額 eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)/単位:万円。長子はすでに独立していたため、対象は2番目〜5番目の4人、元本は合計500万円。

いちばん下の5番目は、18歳までの時間がいちばん長い。気づけば、その子にだけ倍の200万円を積んでいました。時間をいちばん味方につけられる子に、いちばん多く――結果として、そんな配分になりました。

地味だけど、強い

そして現在。これまでの好調な株式市場にも後押しされ、500万円だった投資元本は、評価額約1300万円にまで膨らみました。

派手さはない。それでも、ほったらかしのインデックス投資が、いちばん資産を育ててくれた。(Photo: nattanan / CC0)

あれだけ毎日値動きをチェックして、一喜一憂していた高配当株投資。あの熱量はいったい何だったのかと思うほど、ほとんど何もしていないインデックス投資のほうが、結果的に資産を増やしてくれていたのです。

派手さは、まったくありません。買ったら、あとは基本ほったらかし。それにしても――地味ですが、インデックス投資のパワーは、本当に凄い。

子どもたちの名義で静かに育っていくこのお金は、いつか彼ら自身の選択肢になる。そう思うと、自転車のペダルも、少しだけ軽くなる気がします。

なお、ジュニアNISAそのものは令和五年(二〇二三年)で新規の受付を終え、いまは「新NISA」へと役割が引き継がれています。けれど、「低コストのインデックスファンドを、長く持ち続ける」という考え方は、まったく変わりません。どのファンドを選べばいいか迷う方には、商品選びの定番ガイドが一冊あると、ずいぶん心強いはずです。

新NISAはこの9本から選びなさい
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◆ この回の教訓

  • 「廃止が決まった制度」にこそ、思わぬ妙味が眠っていることがある
  • ジュニアNISAはルール変更で「いつでも引き出せる」ようになり、最大の弱点が消えた
  • 子どもの運用は時間が最大の味方。早く始めるほど、複利が効く
  • 継続管理勘定では商品を変えられない。だからこそ最初の商品選びがすべて
  • 派手な高配当株より、地味なインデックス投資のほうが、結果は上だった(少なくとも、今のところは)

― 次回予告 ―

気づけば、家族みんなの資産が、少しずつインデックスファンドに集まり始めていました。次回は、僕自身の老後資金――iDeCo編へ。節税という大きなメリットと引き換えに突きつけられる「60歳まで引き出せない」という縛りと、どう折り合いをつけたのか。長い回り道の果てにたどり着いた、もうひとつの「答え合わせ」の話です。


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