二軒の戸建がくれた、もう一本の柱

お金と僕の12年戦争・第12話 給与という一本足から、給与と家賃の二本柱へ。会社員である私に、家賃という新しい収入源——私自身は「不動産賃貸事業」と捉えています——が加わったこと。それは「収入が増えた」という以上に、私の人生を静かに、けれど確かに変えてくれました。 父が遺してくれた家を、私は空き家にしていた 私は葛飾区高砂で生まれ育ちました。両親は「なんとか自分たちの城を持ちたい」と頑張り、高砂に所有権11.26坪(約37.22㎡)という、狭小と呼ぶしかない土地と、そこに建つ木造2階建ての家を手に入れます。父は、その家を長男である私に遺したいと考えていたようです。 ところが私自身は、結婚を機に賃貸住宅での暮らしをスタートさせました。やがて父が亡くなり、母は埼玉県川越市に嫁いだ妹の家族のもとで暮らすようになります。こうして、私が育ったあの家は「空き家」になりました。 両親が遺してくれた家なのに、当時の私は「賃貸のほうが気が楽だ」と、空き家のまま放っておいたのです。どうにかしなければ、という思いは頭の隅にありながら——その状態が、10年ほど続きました。(父さん、ごめん。) 妻のひと言から、ペンシルハウスが建った 転機をくれたのは、妻でした。当時、私たちは9歳の長男を含む3人家族。ある日、妻が「実家を建て替えて住めないかな?」と切り出したのです。 ただ、敷地はわずか11.26坪。あまりに狭く、積極的に手を挙げてくれる工務店はなかなか見つかりませんでした。それでもどうにか引き受け先を見つけ、2008年8月、狭い土地を縦に使い切るように、木造3階建て・延床面積59.58㎡の、いわゆる「ペンシルハウス」が完成します。空き家だった実家は、こうしてようやく、家族の住む家として生まれ変わりました。 家族が増え、家が手狭になった 「3人家族なら、狭小住宅でも住んでいける」——そう考えての建て替えでした。ところが工事のさなかに妻の妊娠がわかり、「4人ならまだ大丈夫だろう」と新居に移ったときには、すでに4人家族。さらにその後、3人目の妊娠がわかり、無事に生まれて5人家族になると、さすがにこの家では狭すぎる、ということになりました。 そこで向かったのが、住み替えです。「今より子どもたちの小学校に近く、しかも高砂駅にも近い場所」という、なかなか難しい条件でしたが、運にも恵まれて良い家に出会えました。2014年6月、敷地64.32㎡・木造3階建て・延床面積102.54㎡の新築建売戸建を購入し、転居します。今でも本当に満足している我が家です。 (余談ですが、この家に移ってから妻はさらに二人の男の子を産んでくれ、我が家は4男1女、5人の子宝に恵まれました。) 住む家が「貸す家」になった、一軒目 そして高砂のペンシルハウスは、私たちが住み替えたその日を境に、「自分たちが住む家」から「人に貸す家」へと役割を変えました。これが、私の戸建賃貸業の一軒目です。 貸すために建てた家ではありません。父が遺し、妻の言葉で建て替え、家族で暮らし、そして手狭になって離れた——その積み重ねの結果として、気づけば私は大家になっていました。父に申し訳なかったあの空き家が、いまは家賃という形で家計を支えてくれている。そう思うと、少しだけ肩の荷が下りた気がします。 リベ大が背中を押した、二軒目 二軒目は、まったく違いました。 リベ大(両学長)の教えと『お金の大学』に出会い、「昇給を待つのではなく、収入を生む資産を自分で買う」という発想を知った私は、2022年1月、松戸市に敷地60.98㎡・木造2階建て・築48年の投資用築古戸建を購入しました。 築48年という数字に驚く方もいるかもしれません。けれど、リベ大で学んだ築古戸建投資の考え方に沿って、自分なりに数字を確かめ、納得して選んだ一軒でした。一軒目が「気づいたら大家」だとすれば、二軒目は「意志を持って買った大家」です。 ここで、二軒(と現在の自宅)を一覧にしておきます。 役割 取得・完成 所在地 敷地 構造・延床 一軒目(賃貸・旧自宅) 2008年8月 完成 葛飾区高砂 11.26坪(約37.22㎡) 木造3階建/延床 59.58㎡ (参考)現在の自宅 2014年6月 購入 高砂駅 近く 64.32㎡ 木造3階建/延床 102.54㎡ 二軒目(賃貸・投資用) 2022年1月 購入 松戸市 60.98㎡ 木造2階建/築48年 ※「現在の自宅」は賃貸物件ではありませんが、一軒目が賃貸へ切り替わった転機として参考に併記しています。 給与一本足から、二本柱へ ── 金銭面 会社員の収入は、基本的に給与とボーナスという一本足です。給与は生活費、ボーナスは臨時収入。シンプルですが、その一本が細れば、家計はそのまま揺らぎます。 そこに家賃収入が加わると、給与と家賃の二本柱になります。勤務先で残業が減った月でも、家賃は比較的安定して入ってくる。この「もう一本」があるだけで、家計の安定感はずいぶん変わりました。 大きいのは、昇給に依存しなくてよくなったことです。給与は毎年、数千円から数万円上がればいいほう。けれど中古戸建を一軒持てば、年間で数十万円、物件によっては100万円以上のキャッシュフローが見込めることもあります。「昇給を待つ」のではなく「資産を買って収入を増やす」。この発想の転換こそ、リベ大から受け取った一番の財産かもしれません。 ...

June 29, 2026

「廃止決定」の制度に、僕は子どもたちの未来を託した ― ジュニアNISA編

お金と僕の12年戦争・第10話 積立NISAをコツコツ続けながら、その頃の僕の「投資の先生」は、もっぱらYouTubeでした。通勤は相変わらず自転車。仕事でバスのハンドルを握る、その合間の休憩時間に、両学長のリベ大動画を眺めるのが、すっかり習慣になっていました。 そんなある日、一本のサムネイルが目に飛び込んできます。 【YouTube/リベ大】 【廃止決定】それなのに、ジュニアNISAをおすすめする理由 ――廃止が決まった制度を、わざわざおすすめする? 矛盾しているようなこのタイトルに、僕はつい再生ボタンを押していました。 「弱点」が消えた制度 動画によれば、かつてのジュニアNISAには、二つの大きな弱点がありました。 原則18歳まで引き出せない 途中で解約すると、非課税のメリットを失う 子どものお金とはいえ、18歳まで一切手をつけられないのは、正直しんどい。だからこの制度は、ずっと人気がありませんでした。 ところが、廃止が決まったことで、皮肉にもルールが改正されます。 いつでも払い出しOK 払い出しても、非課税メリットはそのまま維持 つまり、いちばんの弱点だった「引き出せない」が消えたのです。動画は「これで一気に使いやすくなった」と説明していました。 どんな制度だったのか 改めて整理すると、ジュニアNISAはこういう制度でした。 子ども1人につき、年間80万円まで投資できる 運用益・配当金は非課税 子ども名義の資産になる 長い時間をかけて運用できる たとえば0歳の子に毎年80万円を積み立てれば、18歳前後まで15年以上の運用期間が確保でき、複利の効果を最大限に活かせる――動画はそう語っていました。 そして、すすめられていた商品が、S&P500連動や全世界株式といった、低コストのインデックスファンド。これは、僕がいままさに自分でやっているインデックス投資の考え方と、ほとんど同じでした。気づけばリベ大の「おすすめ」に、自分の現在地のほうから追いついていた。そんな妙な手応えがありました。 ひとつだけ、注意点 ただし、見落とせない注意点もありました。子どもが18歳になると、資産は「継続管理勘定」へ移ります。ここでは―― 継続管理勘定でできなくなること 新規の買い付けはできない 商品の変更もできない つまり、最初に良い商品を選んで、あとはじっと長く持ち続けることが何より大事、というわけです。裏を返せば、最初の商品選びさえ間違えなければ、あとは時間が働いてくれる。インデックスファンドとは、相性が良さそうでした。 「利用しない理由が、見当たらない」 動画の結論は、シンプルでした。 小さな子どもがいて、10年以上運用できて、教育資金を準備したい。 そんな家庭なら、利用しない理由が見当たらないほど有利。 我が家は、まさにそのど真ん中。子どもは複数人、運用できる時間もたっぷりある。 ――そうと決まれば、動きが早いのが僕です。 楽天証券へ、まっすぐ 高配当株投資から撤退して、手元には450万円ほどの資金が残っていました。この行き場を探していたお金に、ようやく「正解」が見つかった気がしました。 上の長子はすでに成人して独立していたので、ジュニアNISAの対象は下の4人。すぐに楽天証券で、それぞれの子ども名義の証券口座とジュニアNISA口座を開設し、まずは4人分、年上限の80万円ずつ、迷わず eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) を買い付けました。その後も2年目・3年目と、子どもごとに配分を調整しながら買い増し。最終的には、4人合わせて500万円をジュニアNISAに投じることになりました。 2番目 3番目 4番目 5番目 年合計 1年目 80 80 80 80 320 2年目 20 20 20 80 140 3年目 ― ― ― 40 40 累計 100 100 100 200 500 全額 eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)/単位:万円。長子はすでに独立していたため、対象は2番目〜5番目の4人、元本は合計500万円。 ...

June 26, 2026

「短期トレード」の果てにたどり着いた答え ──インデックス投資という、長期戦のはじまり

お金と僕の12年戦争・第9話 前回、私はこう締めくくりました。20万円の利益は出た。それでも、あれは紛れもなく「失敗」だった――と。けれど不思議なもので、その失敗こそが、私の進むべき方向をくっきりと照らし出してくれたのです。 結局のところ、私がやっていたのは「高配当株投資」ではなく、ただの「短期トレード」でしかなかったわけですね(笑)。せめてもの幸いは、20万円ほどの利益が出たこと――だったでしょうか。いやでも、これはやっぱり「失敗」です。 ――前回のおわりに 失敗が指し示した、進むべき方向 毎日の値動きに一喜一憂し、気づけばスマホばかり眺めている。本業でハンドルを握っているあいだも、頭の片隅では株価がちらつく。――そんな投資は、もう続けられない。そう腹をくくったとき、次に向かうべき道は、むしろハッキリと見えていました。インデックス投資です。 ただ、前回の手痛い反省があります。だから今回こそは、「インデックス投資とはどういう投資なのか。その強みと弱みをきちんと理解したうえで、相場が荒れても長期で持ち続けられるだけの"握力"を手に入れたい」――そう考えました。 私はどうにも「思い立ったらすぐ動く」性分で、それが過去の失敗の引き金にもなってきました。でも今回ばかりは、その性分がいい方向に転がります。**とにかく小さく始めて、走りながら学ぶ。**そう決めたのです。 月1万円から、走りながら学ぶ まず手をつけたのは、リベ大の両学長が紹介していた投資信託のひとつ、eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)。これをNISAで毎月1万円、さっさと設定してしまいました。 金額は小さい。でも、「もう始めてしまった」という事実が何より大事でした。あとは走りながら学ぶだけ。YouTubeでインデックス投資の動画を、それこそ浴びるように見続けました。 「握力」を鍛えた5冊 動画のなかで繰り返し名前の挙がる本を、まずは5冊買って読みました。 サイコロジー・オブ・マネー — お金にまつわる「人の心理」と向き合う一冊 敗者のゲーム — なぜ個人投資家はインデックスに行き着くのか JUST KEEP BUYING — とにかく買い続けることの力 ウォール街のランダム・ウォーカー — インデックス投資の"古典" となりの億万長者 — “普通の人"がどう資産を築くのか 正直、読みにくい本もありました。それでも、**わからないなりに最後まで読み切った。**この積み重ねが、あとからじわじわ効いてきます。 いきなり5冊はハードルが高い、という方へ。もし「まず1冊だけ」なら、私はこれをおすすめします。投資のテクニックではなく、お金と向き合う「心の持ちよう」を教えてくれる一冊で、いちばん読みやすく、いちばん効きました。 サイコロジー・オブ・マネー 一生お金に困らない「富」のマインドセットモーガン・ハウセル/ダイヤモンド社。まず1冊なら、これ。握力の土台になる名著 Amazonで見る › 気づけば、月1万円が月3万円に そんなふうに知識を積み上げているうちに、ある変化が起きていました。当初は月1万円だった掛金。それを3万円に増やしても、不安をまったく感じなくなっていたのです。 月1万円 → 月3万円。増額しても、心はむしろ静かになっていった。 高配当株のときとは、まるで逆でした。あのころは金額が小さくても値動きが気になって仕方なかったのに、今は金額を増やしても、何も感じない。**理解が、握力を生む。**そのことを、身をもって実感した瞬間でした。 高配当株(前回) インデックス投資(今回) 実態 事実上の短期トレード 長期の積み立て 毎日の値動き 気になって仕方ない ほとんど見なくなった 本業への影響 集中力を削られた 意識から消えた 増額したとき 不安が増す むしろ落ち着く この回の学び ...

June 25, 2026

「株主」にはなれた。でも「投資家」にはなれなかった ── 高配当株投資、爆速参入・爆速撤退の記録

お金と僕の12年戦争・第8話 ― 高配当株投資、爆速参入・爆速撤退の記録 すべては「リベ大」から始まった 私が株式投資という世界に足を踏み入れたきっかけ。それは、両学長の「リベ大」YouTubeでした。第3話で書いたとおり、妻からプレゼントされた一冊『お金の大学』をきっかけにリベ大の動画を見るようになった私は、そこからお金の世界へとぐいぐい引き込まれていきました。 2020年頃のリベ大では、「FIRE」の話題や、当時の株式市場の状況を反映してか「高配当株投資」の話題がとても盛んだったように思います。とはいえ、聞き始めの頃は正直、何を話しているのかさっぱり理解できませんでした。それでも学長が「聞いていたら、そのうち何となくわかるようになってくるよー」と言うので、その言葉を信じて、過去の動画を隅から隅まで見まくったのです(笑)。 【改訂版】本当の自由を手に入れる お金の大学両@リベ大学長/朝日新聞出版。私のすべての出発点になった一冊 Amazonで見る › 「FIRE」という生き方との衝撃の出会い 見続けるうちに、私の中で一番の衝撃だったのは——「FIRE」という生き方が、この世に実在するということ。そして「そんな生き方を選んでもいいんだ」ということでした。 もっとも、私の現実はというと、子ども5人の大家族、しかも住宅ローンあり。FIREという生き方が自分に当てはまるとは、正直まったく思えませんでした。それでもこの出会いは、「自分が知らなかったこと」「間違って思い込んでいたこと」が世の中にはまだまだたくさんありそうだ——そう私に気づかせてくれたのです。 そんな中で、私が強烈に憧れてしまった言葉があります。「不労所得」。なんとも魅惑的な響きではありませんか。 爆速で整えた「高配当株投資」の準備 憧れてしまったら、もう止まりません。リベ大を参考に、楽天銀行・楽天証券を開設し、NISAの手続きも完了。「高配当株投資」を始める準備を、猛スピードで整えてしまいました。 ——実は私、とにかく動き出すのが早いんです。そのおかげで失敗することも、まあまああるのですが(苦笑)。 当時の学長は、「学長が今月から高配当株投資を始めるなら」というコンテンツを、毎月オープンに発信してくれていました(現在はオンラインコミュニティ『リベシティ』の中での発信になっています)。しかもそこでは、実際の企業名を数十社あげ、それぞれ「いくらずつ買うか」まで具体的に示してくれていたのです。 私はそれにすぐ食いつきました。そして総額でおよそ450万円分を、一気に購入してスタートを切ったのです。 30銘柄の「株主」になれた喜び 一社一社、株を買い進めていく作業。最初はドキドキで、緊張しました。それでも、ようやく30社ほどの株を手にできたときには、なんとも言えない喜びが湧いてきたんです。 だって、私はもう「株主」ですからね。 それまで私にとって株とは、「お金持ちがやること」でした。でも実際にやってみて気づいたのです。株とは「お金持ちになるためにやること」でもあったんだ、と。 あっけない「撤退」——一度も配当金を受け取れずに ところが。意気揚々と始めた高配当株投資は、あっけなく失敗に終わりました。 原因は、はっきりしています。「高配当株投資とはどういう投資なのか」を本当の意味で理解しないまま始めてしまったこと。これに尽きます。 当たり前の話ですが、私は毎日毎日、持っている株の株価の変動が気になって気になって、仕方がない状態になってしまったのです。 私の本業は、路線バスの運転手です。お客様の命を預かるこの仕事に、株価の上下が頭をよぎるような精神状態で臨むわけにはいきません。「このままでは本業に支障をきたしかねない」——そう判断した私は、ただの一度も「配当金」を受け取ることなく、すべての株を売却しました。あえなく『撤退』です。 結局のところ、私がやっていたのは「高配当株投資」ではなく、ただの「短期トレード」でしかなかったわけですね(笑)。 せめてもの幸いは、20万円ほどの利益が出たこと——だったでしょうか。いやでも、これはやっぱり「失敗」です。 そして「王道」インデックス投資へ この撤退をきっかけに、私は現在も続けている「王道」のインデックス投資の道を歩み始めることになりました。日々の値動きに一喜一憂せず、長期でコツコツ積み立てていく——今思えば、あの高配当株での大失敗があったからこそ、自分に合う投資のスタイルにたどり着けたのかもしれません。 「日々眺めなくていい」というこの考え方を、私のように値動きに振り回されてしまう人間に教えてくれたのが、次の一冊でした。タイトルがもう、すべてを言い表しています。 【全面改訂 第3版】ほったらかし投資術山崎元・水瀬ケンイチ/朝日新書。インデックス投資の「王道」を最短で教えてくれる定番 Amazonで見る › ▼ 私の場合の、ふたつの投資スタイル 高配当株投資(当時の私) インデックス投資(現在) 買い方 数十社を自分で選び、一気に約450万円 1本の投資信託を、毎月コツコツ積立 日々やること 毎日、株価が気になって仕方ない 基本ほったらかし。見なくていい 本業への影響 運転に支障が出かねないと判断 気にならず、仕事に集中できる 結果 配当金ゼロのまま撤退(+20万円) 今も継続中 おまけ——あのとき売らずに持ち続けていたら 最後に、ちょっと笑える(そして少し悔しい)後日談を。 最近、当時買っていた高配当株の銘柄を、Yahoo!ファイナンスに入力して管理していたデータが、ひょっこり出てきたんです。せっかくなので、株式分割した銘柄を調整したりしながら、今いくらになっているのか確かめてみました。 すると——なんと株価が軒並み爆上がりしていて、含み益はおよそ600万円。 とりわけ効いていたのが、銀行株と商社株でした。当時は「どうせ上がらない」「万年割安株」などと揶揄されることもあった顔ぶれです。正直なところ、私自身も買ったはいいものの、さほど期待はしていなかった銘柄たち。それが数年後には株価を大きく伸ばし、今の水準にまで化けていたのです。 ...

June 19, 2026

手放した日から、お金が貯まりはじめた――マークIIとの別れ、そして23年

はじめに この連載では、両学長の『お金の大学』を羅針盤にしながら、私自身の家計改善の歩みを振り返っている。第4回では通信費の見直し、第5回では保険の見直し、第6回では住宅ローンの借り換えについて取り上げた。 今回は少し趣向を変えて、「固定費削減」の文脈でもっとも大きなインパクトをもたらしたテーマを書く。自動車だ。 ただし先に断っておくと、これは「クルマを持つな」という主張ではない。地方に住んでいれば、クルマは生活の根幹をなす移動手段だ。家族の事情や仕事の都合で、所有が合理的な選択になる場合も多い。この記事はあくまで、都市部に住む私の23年にわたる体験談である。参考程度に読んでもらえれば幸いだ。 なぜ手放したのか——2001年、32歳の決断 2001年、私は32歳だった。当時は大手運送会社に勤めており、業務でほぼ毎日ハンドルを握っていた。 その職場には、暗黙のルールがあった。「免許証に違反の傷をつけることは御法度」。 運送業において、運転免許は仕事そのものだ。違反点数が積み重なれば、最悪の場合は乗務停止になる。それは会社への迷惑であり、何より自分自身の収入が途絶えることを意味する。職場の先輩たちは口を揃えて言っていた。「プライベートでのっていて捕まったら笑えないぞ」と。 プライベートでも運転する頻度が高ければ、それだけヒヤリとする場面が増える。疲れたまま夜に乗れば判断が鈍る。渋滞でイライラすれば、いつもよりアクセルを踏み込んでしまう。事故や違反のリスクは、走行距離に比例して上がる。そう気づいた私は、仕事以外では極力クルマに乗らないと決めた。 そしてその延長線上で、所有していたトヨタ・マークIIを手放すことにした。 トヨタ・マークII(X90型)。私が所有していたのもこの世代。中古を現金130万円で購入し、2001年に無料引き取りで手放した。(Photo: Kruglovsasha / CC BY-SA 3.0) 売却ではなく、無料で引き取ってもらった。マークIIは中古車を現金一括130万円で購入しており、ローンの残債はなかった。だから手放すことへの金銭的な抵抗感は、思ったより小さかった。もちろん、130万円がゼロになる痛みはある。しかし「返済が残っていない」という事実は、決断を後押ししてくれた。 当時、リベ大の影響はまだない。純粋に、仕事上のリスク管理が動機だった。「家計改善のためにクルマを売った」という話ではなく、「仕事を守るためにクルマを手放した」という話だ。だが結果として、それが家計に大きなプラスをもたらすことになる。 所有していた頃のコスト:年間約57万円の重さ 当時の維持費を書き出してみると、以下のようになる。 費用項目 金額 駐車場代 月15,000円 → 年180,000円 ガソリン代 月20,000円 → 年240,000円 任意保険 年50,000円 自動車税(マークII) 年39,500円 車検費用 2年に1回120,000円 → 年換算60,000円 合計(概算) 年約569,500円 月に換算すると約30,000円。これが毎月、クルマのためだけに消えていた計算だ。 ただ、数字に表れないコストもあった。 クルマがあると、「特に用事がなくてもどこかへ行ける」。当時の私は、よくショッピングモールへふらりと出かけていた。目的なく店内を歩き、気づけば買い物をしていた。服を見ていたら欲しくなった。食品売り場で目に留まったものをカゴに入れた。駐車場代を払ったのだからと、フードコートで昼食をとった。クルマという移動手段が、意図しない消費行動を誘発していたのだ。 今思えば、これは「クルマが悪い」という話ではない。自分の行動パターンの問題だ。しかし「行けるから行く」「ついでに買う」という習慣が、家計にじわじわとダメージを与えていたのは確かだ。手放してからは、そういう行動パターン自体がなくなった。 手放してからの変化:支出と貯蓄に何が起きたか クルマを手放した後、維持費だけで月あたり約30,000円の支出が消えた。すべてをカーシェアで補うわけではないので、実際には月10,000円前後のカーシェア代で事足りるようになった。差し引き月20,000円、年間240,000円の支出減だ。さらに、クルマが誘発していた「ついで消費」が消えたことで、実質的な支出減少幅はそれ以上だったと感じている。 比較項目 所有時 現在 月あたり車関連支出 約30,000円(維持費のみ) 約10,000円(カーシェア) ガソリン・駐車場の固定費 あり なし 「ついで消費」の発生頻度 高い ほぼなし 車検の急な出費 あり(2年ごと) なし 浮いたお金はそのまま貯蓄に回った。 「貯まっている」と実感したのは、毎月・毎年クルマにまつわるお金のことをほとんど考えなくなったタイミングだった。車検の時期に慌てることも、駐車場代のために口座残高を確認することもなくなった。任意保険の更新案内に頭を悩ませることも、ガソリンの値上がりに一喜一憂することもなくなった。 その静けさの中で、気づけば毎年70〜80万円をコンスタントに貯蓄できるようになっていた。クルマを手放す前は、年に30万円貯められれば良いほうだった。その差は、クルマ代だけでは説明がつかない。固定費が消えたことで、日々の出費に対する意識そのものが変わったのだと思う。 「バス運転手」として、今もハンドルを握る 仕事の話を少し書かせてほしい。 運送会社を辞めた後、私は今の職場――バス会社に転職した。現在もプロのドライバーとして、毎日ハンドルを握っている。 だから今も、プライベートでクルマに乗る気にはなりにくい。仕事で8時間近く運転すれば、休日はハンドルから解放されたい。これは単純な「疲れ」の問題ではなく、「常に安全に運転し続けなければならない」という緊張感からの解放だ。プロのドライバーにとって、ハンドルを握ることは仕事であり、責任だ。プライベートまでそれを続けることに、メリットを感じない。 葛飾区という立地も、この生活を後押ししている。都内だから電車とバスのネットワークが発達しており、自転車でも十分に動ける。スーパーも病院も駅も、自転車10分以内に収まっている。クルマがなくて困ることは、ほとんどない。 この「仕事上の理由」と「立地の条件」が重なって、私の自動車なし生活は23年間、自然に続いてきた。 ...

May 25, 2026

一冊の本が、すべてを変えた――『お金の大学』との出会い

「2020年に、本当の意味での投資に出会うことになる」と前回書きました。正確に言えば、それは両学長の書籍『お金の大学』との出会いでした。そこから私の本当の投資がスタートしたのです。 2020年の秋ごろだったでしょうか。妻から手渡された一冊の本——それが『お金の大学』でした。 手に取った瞬間、直感的にそう感じました。「これは本物だ」 と。 表紙のイラストはポップで親しみやすく、ページを開くと文字だらけではなくイラストと図解が随所に散りばめられている。「お金の本」というと難しい専門書を想像していた私には、その読みやすさ自体が意外でした。しかし読み始めると、内容の本質はまったく軽くない。ページをめくるたびに「なぜ学校でこれを教えてくれなかったのか」という思いが込み上げてきました。 これまで「お金」について真剣に学んだことのなかった私にとって、この本の内容は衝撃そのものでした。 なかでも序盤の一節が刺さりました。「労働所得だけに頼る人生には限界がある。自分が働いていない時間にも収入が入る仕組みを作ることが大切だ」という趣旨の言葉です。それまでの私は、働いた分だけ給料をもらうことを当然のことだと思っていました。残業を増やせば収入が増え、休めば減る。そのループから抜け出すという発想自体が、そもそもなかったのです。 読み終えた後、妻に「この本すごいよ」と興奮気味に話したことを覚えています。妻は「だから渡したんだけど」と笑っていましたが。 まずはこの本の通りにやってみよう——そう決めて、一歩ずつ取り組み始めました。 『お金の大学』が教えてくれた「5つの力」 この本の核心は、「経済的自由」 という考え方です。著者の両学長はそれを「生活費を資産所得でまかなえる状態」と定義しています。嫌な仕事を無理に続けなくていい、お金の不安で人生を縛られない——そんな状態を目指すための道筋として、「5つの力」が示されています。 力 テーマ ポイント ① 貯める力 固定費を削る 通信費・保険・住宅・車など6大固定費の見直し ② 稼ぐ力 収入源を増やす 副業・転職・フリーランスで収入を分散 ③ 増やす力 長期・積立投資 インデックスファンドへの分散投資。FX・短期売買は不向き ④ 守る力 詐欺・手数料対策 金融リテラシーを身につけ、不要な損失を防ぐ ⑤ 使う力 満足度の高い支出 貯め込むだけでなく、価値ある経験・健康・学びに使う 「貯める力」では、通信費・保険・住宅・車といった人生の6大固定費を見直すことから始める。「稼ぐ力」では、会社員一本に頼らず副業や転職で収入源を分散させる。「増やす力」では、インデックスファンドへの長期・積立・分散投資が推奨されており、FXや短期売買は初心者には不向きとはっきり書かれています。「守る力」では詐欺や高い手数料、税金知識の不足から身を守る。そして「使う力」では、ただ貯め込むのではなく、自分が本当に価値を感じることにお金を使うことが幸せへの道だと説かれています。 本書の核心メッセージ 「お金を増やすこと」が目的なのではなく、「自由に生きること」が目的である。特別な才能がなくても、正しい知識と行動で人生は変えられる。 リベ大YouTubeに、どっぷりはまった日々 本を読み終えた私が次に向かったのは、YouTubeでした。 両学長が運営する「両学長 リベラルアーツ大学」チャンネルです。登録者数は当時すでに数百万人規模。動画の数も膨大で、保険・税金・投資・副業・節約と、お金にまつわるあらゆるテーマが網羅されていました。 最初の一本を再生したのは、確かランニング中のことでした。イヤホンをつけてスマホで再生すると、画面の中の両学長がいつものライオンのキャラクターで、明るくテンポよく話し始める。内容は「格安SIMに乗り換えるだけで年間数万円節約できる」というシンプルなものでしたが、「なぜ今まで気づかなかったのか」と頭を殴られたような感覚がありました。 それからというもの、時間さえあれば動画を再生するようになりました。 朝の準備中、ランニング中、昼休み、寝る前——。妻に「またYouTube?」と言われるくらい、四六時中リベ大の動画を流していました。一本見終わると関連動画がずらりと並んでいて、気がつけば深夜になっていることも珍しくありませんでした。 「知らないと損をする」という感覚の連続 動画を見続けて驚いたのは、知らないだけで損していることが山ほどあったという事実です。 たとえば、ふるさと納税。制度の存在は知っていましたが「なんか面倒くさそう」と放置していました。しかし動画で仕組みを理解すると、実質2,000円の自己負担で返礼品がもらえる上に、住民税まで安くなると知って愕然としました。「なぜ今まで使っていなかったのか」と。 保険も同じです。私は何となく「保険は多めに入っておくもの」と思い込み、必要かどうかも吟味せずにいくつかの民間保険に加入していました。ところが両学長の動画で「日本の公的保険制度は思っている以上に手厚い」という解説を聞き、自分の加入内容を見直すと、明らかに重複している保障がいくつも見つかりました。 税金もそうでした。会社員だと税金は「会社がやってくれるもの」という感覚で、自分で確定申告をしたことすらなかった。でも動画を通じて、医療費控除や生命保険料控除、ふるさと納税のワンストップ特例など、知っているだけで手元に残るお金が変わる制度がいくつもあることを知りました。「無知は罪だ」とまでは言いませんが、知識がないだけで静かに損をし続けていたのだと、この時期に痛感しました。 動画を一本見るたびに、自分の「知識の穴」が浮かび上がってくる。そしてその穴を埋めるたびに、少しずつ家計の見通しが良くなっていく感覚がありました。あの時期の学びの密度は、今振り返っても濃密だったと思います。 両学長の「語り口」が、私には合っていた リベ大の動画が続けられた理由は、内容だけではありません。両学長の話し方そのものが、私にとって非常に入ってきやすかったのです。 難しい金融用語をそのまま使わず、かみ砕いて説明してくれる。押しつけがましくなく、「最終的に判断するのはあなた自身」というスタンスを崩さない。そして何より、お金の話なのに、どこかあたたかい。 「お金は人生を自由にする道具である」という言葉が、回を重ねるごとに染み込んでいきました。お金を増やすことが目的なのではなく、自分らしく生きるための手段として捉える——その視点は、それまでの私にはまったく欠けていたものでした。 気づけば、本とYouTubeを行き来しながら同じ内容を何度も確認するようになっていました。本で概念を理解して、動画でより具体的なイメージをつかむ。そのサイクルが、知識を定着させてくれました。 「見るだけ」から「行動」へ ただ、正直に言うと、最初のうちはひたすら「見るだけ」になっていました。 動画を見て「なるほど!」と感動する。でも実際に格安SIMに乗り換えるわけでも、保険を解約するわけでもない。ただ知識が増えていくだけ——「勉強した気になっている状態」に陥っていたのです。 転機になったのは、両学長が動画の中で言った一言でした。うろ覚えですが、こんな内容だったと思います。「知識はあるのに行動しない人は、知識がない人と結果が同じ」と。 その言葉が刺さりました。 私はすぐにスマホのキャリアを調べ、格安SIMへの乗り換え手続きを始めました。保険の証券を引っ張り出して、本当に必要な保障かどうかを一つひとつ確認しました。ふるさと納税のサイトに初めてログインして、返礼品を選びました。動画を「見る」から「やってみる」に、ようやくギアが切り替わった瞬間でした。 行動してみると、思っていたよりずっとハードルは低かった。格安SIMへの乗り換えは、手続き自体は1時間もかかりませんでした。それだけで毎月の通信費が大幅に下がった時の達成感は、今でも覚えています。「知識は行動してはじめて価値を持つ」——当たり前のことですが、リベ大はそれを体感させてくれた場所でもありました。 この本と動画が示してくれた「私の現在地」 読んで、見て、学んで——そうして改めて気づいたことがありました。 私はまだ「投資(増やす)」のフェーズに立てる段階ではない、と。 それまで取り組んでいたFXは、この本と動画の中で「初心者には不向き」「高リスク」と明確に位置づけられているものでした。両学長は動画の中でも繰り返し言っていました。「一発逆転を狙うな。まず足元を固めろ」と。 私がFXで費やしてきた時間とお金は、正しい順序を無視した結果だったのです。貯める力も、守る力も身についていない状態で、いきなり「増やす力」だけを求めていた。それが間違いの根本でした。 ...

May 13, 2026