お金と僕の12年戦争・第13話

前回は、二軒の戸建賃貸がわが家の家計にもたらしてくれたものについてお話ししました。今回からは、その二軒を実際にどう運営し、いまどうなっているのか——リアルな数字と現実を、包み隠さずお話しいたします。まずは一軒目、高砂のペンシルハウスから。二軒目・松戸の築古戸建は、次回たっぷりと語ります。

「売りますか?」——業者の口から「貸しますか?」は出てこない

まずは高砂のペンシルハウスから。もともと居住する目的で、空き家にしていた実家(狭小地の古家)を建て替えた家です。前回お話ししたとおり、建て替え後に出産で家族が増え、手狭になった末の転居により「この家、どうするか問題」が発生しました。ちなみに住宅ローンは完済済みです。

住む家か、貸す家か。手のなかの鍵は、私に「選択肢は自分で持ち込むもの」だと教えてくれた。(Photo: CC BY 2.0, via Wikimedia Commons)

選択肢は二つ。「売る」か「貸す」か。

迷いますよね。これまでの人生でまったく経験のない、まったく学んでもいない事柄ですから。当然、新居として購入した建売物件を販売した業者の担当者は言います。

「いままで住んでいた家をどうなさいますか?」 「売りますか?」「売りますか?」「売りますか?」……

「貸しますか?」は、ありませんでしたね(笑)。

売却金額のことを抜きに考えれば、私の手間としては、担当者に「売ります」と告げて任せてしまうのが一番楽な方法だったと思います。

結局、決断の決め手になったのは感情の部分——「両親が私に遺してくれた家」ということでした。不安は山積みでしたが、「貸す」を選択しました。担当者にとってはまさかの回答だったのか、ちょっとビックリした様子で聞き直していました(笑)。

理解していない契約を、結んではいけない

「貸す」と決めたはいいのですが、その先どう進めたらいいのかがわかりません。とりあえず担当者が「賃貸部門の者をご紹介いたします」と言うので、お願いすることにしました。

賃貸部門の担当者との面談では、こちらは当然の素人ですから、出てくる言葉の意味はわからないし、その条件が私にとって都合が良いのか、業者にとって都合が良いのか、まったく判断がつきませんでした。結局いろいろと説明を受けて、3ヶ月を求められたところを、2ヶ月の「専属専任媒介契約」を結びました。

この契約が良かったか悪かったかは別にして、理解していない契約を締結することは、絶対にしてはいけません。いまなら断言できます。

リフォーム? 壁紙? ——まずはクリーニングだけで勝負

そこからの私の行動です。賃貸に出すにはリフォームは必要なのか。壁紙は交換すべきか。クリーニングだけでいいのか。わからないことだらけで、担当者に聞いたのだと思うのですが、正直、記憶がありません。結局、築6年くらいだったので、まずはクリーニングのみで対応することにしました。

クリーニング業者は、担当者に頼らず私が自分で探しました。たまたま路線バスを運行していて目に留まった、墨田区に店を構える「ベンリー」というフランチャイズの業者さん。以前に縦型洗濯機の洗浄を依頼したことがあり、とても丁寧に仕事をしていただいたことを思い出して、問い合わせてみました。

戸建て一軒丸ごとの清掃依頼を受けるのは初めてだとおっしゃっていましたが、快く引き受けてくださり、3階建てにもかかわらず7万円という価格で請け負っていただきました。2日間まるまる作業していただき、場所によっては応援の方が入ってくれるなど、本当に丁寧な仕事ぶり。特にキッチンまわりのコンロと換気扇は、さすがプロと唸らされる仕上がりでした。

家賃設定の壁——「貸したい家賃」と「相場の家賃」

家賃の設定は難しかったですね。心情的に貸したい家賃と、地域相場からの家賃には開きがありましたから、募集当初は相場よりも少し高めの110,000円という設定となってしまい、募集開始から1週間ほどは内覧希望や問い合わせなどの動きがほとんどありませんでした。

そこで地域相場に合わせて100,000円に引き下げたところから問い合わせが入るようになってきたようですが、成約には至らず、2ヶ月間の「専属専任媒介契約」は終了しました。

私もこの2ヶ月間でいろいろ学びました。契約延長の依頼はありましたがお断りして、最寄りの高砂駅と隣の青戸駅にあった数軒の賃貸仲介会社と「一般媒介契約」を結んで依頼することにしました。これも初めての経験でしたので、ドキドキしました。

このとき私は、家賃をさらに92,000円まで引き下げました。正直、地域相場よりも少し安いところです。しかし2ヶ月間の空振りを経て、「高く貸す」よりも「早く決める」——スピード優先の方針に切り替えたのです。空室のままでは、家賃は1円も入ってきませんから。

結果——依頼から10日ほどで、青戸駅近くの賃貸仲介会社が入居者を決めてくれました。

成約条件 内容
募集家賃の推移 110,000円 → 100,000円 → 92,000円
成約家賃 92,000円/月(相場よりやや安め・スピード優先)
敷金 1ヶ月分
礼金 なし
仲介手数料(大家負担) 家賃1ヶ月分

※ハウスクリーニング費用:70,000円(3階建て一軒丸ごと・2日間作業)

初めての家賃入金——給料ではない、自分で稼いだ所得

正式に契約書に署名捺印をして、最初の家賃の入金が確認できたときの喜びは、一生忘れることはないと思います。給料として受け取る以外の、本当の意味で自分自身で稼ぎ出した所得ですからね。格別なものでした。

管理はどうする?——月5,060円の委託を断り、「勉強」の自主管理へ

ここで管理について触れておきます。入居者様が決まった際、仲介業者から管理を請け負いたい旨の営業がありました。管理費用は毎月家賃の5%。つまり92,000円ですから4,600円、消費税460円を加えて月5,060円です。

管理の内容をうかがうと、家賃の入金確認と、未入金の場合の督促が主な業務ということでした。私にとっては一軒だけですし、初めてのことなので「勉強」のつもりで自主管理を申し出ました。

退去と入居を繰り返して、現在へ

最初の入居者様が決まった後は、幾度か退去と入居を繰り返しながら現在に至ります。幸いにも、退去の申し入れを受けて募集を開始すると、まだ入居者様がいて内覧できない状況にもかかわらず、次の入居者様が決まる——というありがたい流れで来ております。

とはいえ、退去があれば原状回復のためのリフォーム工事は必要になりますし、外壁塗装工事もおこないました。

外壁塗装——1年待ったら、10万円値上がりしていた

外壁塗装は85万円の大仕事。待つほど材料費と人件費が上がっていく。(Photo: CC BY 2.0, via Wikimedia Commons)

外壁塗装工事は2022年12月に行い、費用は850,000円でした。

実はその約1年前、2021年11月に4社から相見積もりをとっていました。当時はまだ入居者様がおられたので、すぐに工事をするつもりではなく、準備として相場感をつかんでおきたかったのです。使用塗料・工事内容・金額を考慮して、この時点で1社を選んでいました。

そして2022年、11月末での退去が決まったのを機に、工事の決行を決断。あらためて同じ業者から見積もりを取ったところ——塗料などの材料費の値上げと人件費の高騰で、2021年11月時点では750,000円だった見積額が、100,000円値上がりしていたのです。

時期 見積額
2021年11月(入居中に準備の相見積もり・4社から1社選定) 750,000円
2022年12月(退去を機に工事決行・同じ1社) 850,000円(+100,000円)

2026年の現在は、さらに値上がりしているでしょうね。

不具合連絡はぜんぶDIY——利益を守る「自分でやる」力

自主管理のため、入居者様から直接、設備等の不具合の連絡が入ることがあります。その都度ドキドキしながら対応にあたってきましたが、いまのところ、不具合連絡についてはYouTube動画を参考にすべてDIYで対応できています。利益を確保していくためには、自分でできることは自分で行うことが肝ですね。

これまでに行ってきたDIYの例をご紹介します。

不具合の内容 対応
スライド扉が重くなった 滑車をAmazonで購入し、交換
蛇口の先からポタポタと水漏れが止まらない バルブをAmazonで購入し、交換
キッチンのIHコンロのグリル部分が経年破損 IHコンロをAmazonで購入し、YouTube動画を参考に交換作業

そのほか、4台備え付けてあるエアコンは退去のたびに、これもYouTube動画を参考に、業者が行うようなカバーをすべて外しての洗浄をほどこし、次の入居者様に気持ちよくお使いいただけるようにしています。

「サラリーマンマインド」から「経営者マインド」へ

私にとって『戸建賃貸業』との出会いは、それまで当たり前だった「サラリーマンマインド」——給料をもらう、という感覚に、大きな変化をもたらしてくれました。自ら顧客にサービスを提供して報酬を得る、という「経営者マインド」が身についてきたのです。

この変化は、現在の私のお金の出し方にも影響を与えてくれています。自分でできることは自分でやる。その一方で、自分にはできないことをプロにお願いするときは、必要以上にケチケチせず、妥当な金額をきちっとお支払いして、気持ちよく良い仕事をしていただく——そう心掛けるようになりました。丸ごとクリーニングを丁寧に仕上げてくださったベンリーさんも、外壁塗装の業者さんも、そうやって出会えた方々です。

今回の教訓

  • 不動産業者の口から「貸しますか?」は出てこない。選択肢は自分で持ち込むもの。
  • 理解していない契約を締結することは、絶対にしてはいけない。
  • 「貸したい家賃」と「相場の家賃」は別物。市場は正直。空室のままでは家賃は1円も入らない——「高く貸す」より「早く決める」の判断もある。
  • 一軒目の管理は「勉強」の宝庫。自主管理+YouTube+DIYで、利益は自分の手で守れる。
  • 大規模修繕は入居中から相見積もりで備える。工事費は待つほど値上がりする。
  • 自分でできないことをプロに頼むときは、妥当な対価を気持ちよく支払い、良い仕事をしてもらう。

「売る」ではなく「貸す」。この一歩を踏み出すとき、私にはお手本がありませんでした。もし当時、こういう一冊があったら、あの2ヶ月の空振りも、契約のドキドキも、もっと落ち着いて進められたはずです。ふつうの会社員が、無理なく戸建賃貸の大家になるまでを、最初の一歩から具体的に教えてくれる本です。

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― 次回予告 ―

次回は二軒目、松戸の築古戸建についてお話しします。こちらは高砂とはまったく事情が異なり、入居者様がいる状態の物件を「オーナーチェンジ」というかたちで購入しました。リベ大で学んでから、意図して「買いに行った」二軒目。その購入までのストーリーを、たっぷりと語ります。どうぞお楽しみに。


お金と僕の12年戦争 ─ シリーズ一覧

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