「1億円ためないと自由になれない」って本当?──『「パラレルインカム」のはじめ方』をやさしく解説!
「FIRE(経済的自立と早期リタイア)」という言葉を聞いて、こう思ったことはありませんか? 「1億円ためて仕事を辞める? そんなの、自分には無理だ」 たしかに、よくあるFIRE本のゴールはかなり遠い場所にあります。でも、この『「パラレルインカム」のはじめ方』が教えてくれるのは、「仕事は辞めない。それでも自由になる」という第三の道です。表紙にも「年収300万円からできる進化版FIRE」と書かれています。 今回は、この本の考え方を、むずかしい言葉をできるだけ使わずに解説します。投資の知識がゼロでも、最後まで読めば「自分は次に何をすればいいのか」がはっきりするはずです。 著者はどんな人? 著者は泉正人(いずみ・まさと)さん。累計64万人が学んだといわれるマネースクール「ファイナンシャルアカデミー」の代表です。監修も同アカデミーが担当しています。 自分自身が会社を立ち上げ、気づけば「パラレルインカム」を実践していた——という体験がベースになっているので、机上の空論ではなく、実際に歩いた道の話として読めるのが特徴です。 ポイント1:「お金のなる木」を2本持つ パラレルインカムとは、直訳すると「収入の複線化」。会社の給料という1本の線と並べて、もう1本の収入の線を通す、という意味です。 大事なのは、その2本目が「アルバイト」ではないということ。 労働所得(働いて得るお金) + 資産所得(働かなくても入ってくるお金) これがパラレルインカムの正体です。本書では、これを「お金のなる木を2本持つ」と表現しています。1本目は自分で水をやり続ける木、2本目は勝手に実をつけてくれる木、というイメージです。 副業をもう1つ増やすのは、水やりする木を増やすのと同じ。収入は増えても、時間はどんどん減っていきます。目指すのは、そこではありません。「休んでも止まらない流れ」を1本つくることが、この本の出発点です。 ポイント2:FIREとのいちばん大きな違いは「仕事を辞めないこと」 FIREは「早期リタイア」、つまり仕事を辞めるのがゴールです。でも著者は、そこに疑問を投げかけます。 辞めたあと、時間を持て余してしまう人が意外と多いからです。 パラレルインカムでは、仕事は続けます。ただし、お金のためだけにイヤイヤ続ける仕事ではなく、「好きだからやる仕事」に変えていく。ここが決定的な違いです。 学校でも会社でも、「やらされている作業」と「自分で選んだ活動」では、同じ時間でも疲れ方がまるで違いますよね。パラレルインカムが目指すのは、後者の状態です。 さらに、仕事を続けることには現実的なメリットもあります。収入の柱が2本あれば、片方が不調でも生活は崩れません。株価が下がった年も給料は入るし、病気や転職で働けない時期があっても資産所得が支えてくれる。辞めないという選択は、安全装置でもあるのです。 ポイント3:ゴールは「1億円」ではなく「生活費 < 資産所得」 この本のゴールラインは、とてもシンプルです。 毎月の生活費を、資産所得が上回ること たとえば生活費が月20万円なら、資産所得が月20万円をこえた瞬間、あなたは「働かなくても生きていける状態」になります。そこから先の労働は、生活のためではなく、やりたいからやる労働に変わります。 「1億円」という数字を目標にすると気が遠くなりますが、「月20万円」なら、まだ手が届きそうに感じませんか。ゴールの置き方を変えるだけで、道のりの見え方は変わります。 しかも、このゴールにはもう1つの近づき方があります。それは、生活費のほうを下げること。生活費が月30万円の人と月18万円の人では、必要な資産所得がまったく違います。支出を見直すことは、我慢ではなくゴールラインを自分のほうへ引き寄せる作業なのです。 ポイント4:順番をまちがえない「4つのステップ」 本書は、実現までの道のりを4つの段階に分けています。 労働所得を増やす 資産構築をする(増えた分をためて、元手をつくる) 資産所得をつくる(元手を働かせる) 仕事でも自己実現を達成する ここで大事なのは、順番を飛ばさないことです。 いきなりステップ3から始めようとする人は、とても多い。でも元手がない状態で資産所得だけを追いかけるのは、練習せずに試合に出るようなものです。まずは本業の収入を上げ、支出をコントロールして、種を確保する。地味ですが、ここが土台になります。 ポイント5:「お金の7か条」から学ぶ、日常の習慣 本書の第2章には、暮らしの中で効いてくる7つの心がまえがまとめられています。特に取り入れやすいのが、この2つです。 ① 欲しいものを買う前に、お金を迂回させる 給料が入ったら、使う前に一部を別の場所へ「迂回」させる。いわゆる先取り貯蓄です。残ったお金で暮らす仕組みにすれば、意志の強さに頼らなくてすみます。 ② 資産運用は「自転車の運転」と考える 自転車は、本を読んだだけでは乗れません。最初は転びます。でも一度乗れるようになれば、一生忘れない。運用も同じで、小さく始めて体で覚えるものだ、という考え方です。 7か条にはほかにも、「お金に働いてもらうことをポジティブにとらえる」「投資の本当のリスクを知り、コントロールする」といった項目が並びます。リスクはゼロにするものではなく、正体を知って手なずけるもの——この姿勢が本書全体を貫いています。 ポイント6:「失敗から学ぶ」より「成功から学ぶ」 「失敗は成功のもと」とよく言われますが、著者の考え方は少しちがいます。 失敗を避けるノウハウと、成功するノウハウは、別物だからです。 失敗をいくら分析しても、それは「やってはいけないこと」のリストが増えるだけ。実際にうまくいっている人のやり方を聞いて、まねをするほうがずっと近道だ、と本書は言います。 部活でも、ケガの原因を研究するより、うまい先輩のフォームを見よう見まねでコピーするほうが上達が早い——そんな感覚に近いかもしれません。ただし、まねる相手は自分が行きたい場所に実際にたどり着いた人を選ぶこと。SNSにあふれる成功談を見分ける目だけは、自分で育てる必要があります。 ポイント7:「FIREの5倍ラク」の根拠と、その注意点 本書のタイトルにもなっている「進化版FIRE」。著者はパラレルインカムを「FIREの5倍ラク」と表現します。 その根拠が、この対比です。 年400万円を得るために必要な元手 FIREの「4%ルール」 1億円 不動産の「20%ルール」 2,000万円 金額が5分の1になるから「5倍ラク」というわけです。本書が資産所得の手段として不動産投資をすすめているのは、この効率の良さが理由です。 ただし、ここは正直に書いておきます。この計算は、借入(ローン)を使うことが前提です。空室、修繕、災害、金利の上昇といったリスクもあり、株式のインデックス投資とくらべて、必要な知識と手間は明らかに多くなります。 「5倍ラク」は「5倍かんたん」ではない。この点については、記事の後半で、実際に賃貸経営をしている立場から詳しくお話しします。 ポイント8:最後に手に入るのは「5つの自由」 では、これだけの手間をかけて、何が手に入るのか。本書は5つを挙げています。 ...