「株主」にはなれた。でも「投資家」にはなれなかった ── 高配当株投資、爆速参入・爆速撤退の記録

お金と僕の12年戦争・第8話 ― 高配当株投資、爆速参入・爆速撤退の記録 すべては「リベ大」から始まった 私が株式投資という世界に足を踏み入れたきっかけ。それは、両学長の「リベ大」YouTubeでした。第3話で書いたとおり、妻からプレゼントされた一冊『お金の大学』をきっかけにリベ大の動画を見るようになった私は、そこからお金の世界へとぐいぐい引き込まれていきました。 2020年頃のリベ大では、「FIRE」の話題や、当時の株式市場の状況を反映してか「高配当株投資」の話題がとても盛んだったように思います。とはいえ、聞き始めの頃は正直、何を話しているのかさっぱり理解できませんでした。それでも学長が「聞いていたら、そのうち何となくわかるようになってくるよー」と言うので、その言葉を信じて、過去の動画を隅から隅まで見まくったのです(笑)。 【改訂版】本当の自由を手に入れる お金の大学両@リベ大学長/朝日新聞出版。私のすべての出発点になった一冊 Amazonで見る › 「FIRE」という生き方との衝撃の出会い 見続けるうちに、私の中で一番の衝撃だったのは——「FIRE」という生き方が、この世に実在するということ。そして「そんな生き方を選んでもいいんだ」ということでした。 もっとも、私の現実はというと、子ども5人の大家族、しかも住宅ローンあり。FIREという生き方が自分に当てはまるとは、正直まったく思えませんでした。それでもこの出会いは、「自分が知らなかったこと」「間違って思い込んでいたこと」が世の中にはまだまだたくさんありそうだ——そう私に気づかせてくれたのです。 そんな中で、私が強烈に憧れてしまった言葉があります。「不労所得」。なんとも魅惑的な響きではありませんか。 爆速で整えた「高配当株投資」の準備 憧れてしまったら、もう止まりません。リベ大を参考に、楽天銀行・楽天証券を開設し、NISAの手続きも完了。「高配当株投資」を始める準備を、猛スピードで整えてしまいました。 ——実は私、とにかく動き出すのが早いんです。そのおかげで失敗することも、まあまああるのですが(苦笑)。 当時の学長は、「学長が今月から高配当株投資を始めるなら」というコンテンツを、毎月オープンに発信してくれていました(現在はオンラインコミュニティ『リベシティ』の中での発信になっています)。しかもそこでは、実際の企業名を数十社あげ、それぞれ「いくらずつ買うか」まで具体的に示してくれていたのです。 私はそれにすぐ食いつきました。そして総額でおよそ450万円分を、一気に購入してスタートを切ったのです。 30銘柄の「株主」になれた喜び 一社一社、株を買い進めていく作業。最初はドキドキで、緊張しました。それでも、ようやく30社ほどの株を手にできたときには、なんとも言えない喜びが湧いてきたんです。 だって、私はもう「株主」ですからね。 それまで私にとって株とは、「お金持ちがやること」でした。でも実際にやってみて気づいたのです。株とは「お金持ちになるためにやること」でもあったんだ、と。 あっけない「撤退」——一度も配当金を受け取れずに ところが。意気揚々と始めた高配当株投資は、あっけなく失敗に終わりました。 原因は、はっきりしています。「高配当株投資とはどういう投資なのか」を本当の意味で理解しないまま始めてしまったこと。これに尽きます。 当たり前の話ですが、私は毎日毎日、持っている株の株価の変動が気になって気になって、仕方がない状態になってしまったのです。 私の本業は、路線バスの運転手です。お客様の命を預かるこの仕事に、株価の上下が頭をよぎるような精神状態で臨むわけにはいきません。「このままでは本業に支障をきたしかねない」——そう判断した私は、ただの一度も「配当金」を受け取ることなく、すべての株を売却しました。あえなく『撤退』です。 結局のところ、私がやっていたのは「高配当株投資」ではなく、ただの「短期トレード」でしかなかったわけですね(笑)。 せめてもの幸いは、20万円ほどの利益が出たこと——だったでしょうか。いやでも、これはやっぱり「失敗」です。 そして「王道」インデックス投資へ この撤退をきっかけに、私は現在も続けている「王道」のインデックス投資の道を歩み始めることになりました。日々の値動きに一喜一憂せず、長期でコツコツ積み立てていく——今思えば、あの高配当株での大失敗があったからこそ、自分に合う投資のスタイルにたどり着けたのかもしれません。 「日々眺めなくていい」というこの考え方を、私のように値動きに振り回されてしまう人間に教えてくれたのが、次の一冊でした。タイトルがもう、すべてを言い表しています。 【全面改訂 第3版】ほったらかし投資術山崎元・水瀬ケンイチ/朝日新書。インデックス投資の「王道」を最短で教えてくれる定番 Amazonで見る › ▼ 私の場合の、ふたつの投資スタイル 高配当株投資(当時の私) インデックス投資(現在) 買い方 数十社を自分で選び、一気に約450万円 1本の投資信託を、毎月コツコツ積立 日々やること 毎日、株価が気になって仕方ない 基本ほったらかし。見なくていい 本業への影響 運転に支障が出かねないと判断 気にならず、仕事に集中できる 結果 配当金ゼロのまま撤退(+20万円) 今も継続中 おまけ——あのとき売らずに持ち続けていたら 最後に、ちょっと笑える(そして少し悔しい)後日談を。 最近、当時買っていた高配当株の銘柄を、Yahoo!ファイナンスに入力して管理していたデータが、ひょっこり出てきたんです。せっかくなので、株式分割した銘柄を調整したりしながら、今いくらになっているのか確かめてみました。 すると——なんと株価が軒並み爆上がりしていて、含み益はおよそ600万円。 とりわけ効いていたのが、銀行株と商社株でした。当時は「どうせ上がらない」「万年割安株」などと揶揄されることもあった顔ぶれです。正直なところ、私自身も買ったはいいものの、さほど期待はしていなかった銘柄たち。それが数年後には株価を大きく伸ばし、今の水準にまで化けていたのです。 ...

June 19, 2026

6大固定費の見直し──保険の整理

お金と僕の12年戦争・第5話 「投資は投資、保険は保険」。頭ではわかっていた。でも行動に移すまでに、じつに4年かかった。 まず「棚卸し」から始めた 『お金の大学』を読んでから最初にやったことのひとつが、我が家の保険を全部並べてみることでした。保険証券をかき集め、「何に、いくら払っているのか」を一覧にしてみる。そうしないと、そもそも何を見直すかが決まりません。 出てきたのは、大きくふたつ。 保険名 種別 契約日 保険期間 積立利率変動型終身保険(米国通貨建) 一時払い終身 2011年6月1日 終身 スーパーがん保険 終身がん保険 1994年7月1日 終身 ここに火災保険(個人賠償責任特約付き)が加わりますが、主な見直し対象はこの2本でした。 ❶ スーパーがん保険──現在も継続中 1994年7月、30年以上前に契約した保険です。 項目 内容 月額保険料 1,270円 契約開始 1994年7月1日 2026年5月時点の解約払戻金 397,800円 損益を数字で整理してみた 2026年5月現在で31年10か月、約382か月払い続けているとすると、総払込保険料は次のようになります。 総払込保険料(概算):約48.5万円 解約払戻金:約39.8万円 差額(実質コスト):約8.7万円 年間換算コスト:約2,700円 31年以上にわたってがんの保障を持ち続けて、実質コストは年間約2,700円。純粋な「保険料の損得」という視点で見れば、かなり健闘している契約だと思います。 1990年代の保険には「予定利率が高い」「同条件では今入りづらい」という特徴があります。月1,270円という保険料は、今の水準から見ると破格といっていいかもしれません。 もちろん「解約して約40万円を受け取る」という選択もあります。ただ、保険として機能しながらこの戻り率なら、貯蓄商品としては平凡でも、保険商品としての役割は十分に果たしている。そう判断して、現在も継続中です。 ❷ ドル建て終身保険──4年越しの決断 問題はこちらでした。 項目 内容 商品名 積立利率変動型終身保険(米国通貨建) 契約日 2011年6月1日 一時払い保険料 3,467,109円 契約時為替レート 81.18円/米ドル 保険金額 50,000米ドル 2020年──解約できなかった 『お金の大学』を読んで、このドル建て終身保険が「見直し対象」であることはすぐにわかりました。投資と保険を一緒に詰め込んだ商品。両学長がYouTubeでも繰り返し言っていた「ぼったくり保険は早く解約して、優良なインデックス投資信託と必要な掛け捨て保険に分けなさい」──まさにこれが当てはまる契約でした。 頭では理解していた。でも、手が動かなかった。 2020年の時点では、契約日から10年が経過しておらず、円ベースでは元本割れの状態。為替差益でプラスになっているとはいえ、「損をした気持ち」が拭えず、解約のボタンを押せませんでした。あの感覚は、FXで損切りできなかったときとよく似ていました。感情がブレーキを踏んでしまうのです。 「理解と行動の間には、4年分の距離があった」というのが正直なところです。 2024年1月──ようやく解約 契約から12年以上が経った2024年1月30日、ついに解約に踏み切りました。 項目 内容 解約日 2024年1月30日 解約払戻金(米ドル) 47,206.71米ドル 解約時為替レート 146.88円/米ドル 解約払戻金(円換算) 6,933,721円 払い込んだ3,467,109円が、6,933,721円になって戻ってきた。一見すると倍になっており「良かった」と見えます。でも、ここで立ち止まって考えてみました。 ...

May 16, 2026

一冊の本が、すべてを変えた――『お金の大学』との出会い

お金と僕の12年戦争・第3話 「2020年に、本当の意味での投資に出会うことになる」と前回書きました。正確に言えば、それは両学長の書籍『お金の大学』との出会いでした。そこから私の本当の投資がスタートしたのです。 2020年の秋ごろだったでしょうか。妻から手渡された一冊の本——それが『お金の大学』でした。 手に取った瞬間、直感的にそう感じました。「これは本物だ」 と。 表紙のイラストはポップで親しみやすく、ページを開くと文字だらけではなくイラストと図解が随所に散りばめられている。「お金の本」というと難しい専門書を想像していた私には、その読みやすさ自体が意外でした。しかし読み始めると、内容の本質はまったく軽くない。ページをめくるたびに「なぜ学校でこれを教えてくれなかったのか」という思いが込み上げてきました。 これまで「お金」について真剣に学んだことのなかった私にとって、この本の内容は衝撃そのものでした。 なかでも序盤の一節が刺さりました。「労働所得だけに頼る人生には限界がある。自分が働いていない時間にも収入が入る仕組みを作ることが大切だ」という趣旨の言葉です。それまでの私は、働いた分だけ給料をもらうことを当然のことだと思っていました。残業を増やせば収入が増え、休めば減る。そのループから抜け出すという発想自体が、そもそもなかったのです。 読み終えた後、妻に「この本すごいよ」と興奮気味に話したことを覚えています。妻は「だから渡したんだけど」と笑っていましたが。 まずはこの本の通りにやってみよう——そう決めて、一歩ずつ取り組み始めました。 『お金の大学』が教えてくれた「5つの力」 この本の核心は、「経済的自由」 という考え方です。著者の両学長はそれを「生活費を資産所得でまかなえる状態」と定義しています。嫌な仕事を無理に続けなくていい、お金の不安で人生を縛られない——そんな状態を目指すための道筋として、「5つの力」が示されています。 力 テーマ ポイント ① 貯める力 固定費を削る 通信費・保険・住宅・車など6大固定費の見直し ② 稼ぐ力 収入源を増やす 副業・転職・フリーランスで収入を分散 ③ 増やす力 長期・積立投資 インデックスファンドへの分散投資。FX・短期売買は不向き ④ 守る力 詐欺・手数料対策 金融リテラシーを身につけ、不要な損失を防ぐ ⑤ 使う力 満足度の高い支出 貯め込むだけでなく、価値ある経験・健康・学びに使う 「貯める力」では、通信費・保険・住宅・車といった人生の6大固定費を見直すことから始める。「稼ぐ力」では、会社員一本に頼らず副業や転職で収入源を分散させる。「増やす力」では、インデックスファンドへの長期・積立・分散投資が推奨されており、FXや短期売買は初心者には不向きとはっきり書かれています。「守る力」では詐欺や高い手数料、税金知識の不足から身を守る。そして「使う力」では、ただ貯め込むのではなく、自分が本当に価値を感じることにお金を使うことが幸せへの道だと説かれています。 本書の核心メッセージ 「お金を増やすこと」が目的なのではなく、「自由に生きること」が目的である。特別な才能がなくても、正しい知識と行動で人生は変えられる。 リベ大YouTubeに、どっぷりはまった日々 本を読み終えた私が次に向かったのは、YouTubeでした。 両学長が運営する「両学長 リベラルアーツ大学」チャンネルです。登録者数は当時すでに数百万人規模。動画の数も膨大で、保険・税金・投資・副業・節約と、お金にまつわるあらゆるテーマが網羅されていました。 最初の一本を再生したのは、確かランニング中のことでした。イヤホンをつけてスマホで再生すると、画面の中の両学長がいつものライオンのキャラクターで、明るくテンポよく話し始める。内容は「格安SIMに乗り換えるだけで年間数万円節約できる」というシンプルなものでしたが、「なぜ今まで気づかなかったのか」と頭を殴られたような感覚がありました。 それからというもの、時間さえあれば動画を再生するようになりました。 朝の準備中、ランニング中、昼休み、寝る前——。妻に「またYouTube?」と言われるくらい、四六時中リベ大の動画を流していました。一本見終わると関連動画がずらりと並んでいて、気がつけば深夜になっていることも珍しくありませんでした。 「知らないと損をする」という感覚の連続 動画を見続けて驚いたのは、知らないだけで損していることが山ほどあったという事実です。 たとえば、ふるさと納税。制度の存在は知っていましたが「なんか面倒くさそう」と放置していました。しかし動画で仕組みを理解すると、実質2,000円の自己負担で返礼品がもらえる上に、住民税まで安くなると知って愕然としました。「なぜ今まで使っていなかったのか」と。 保険も同じです。私は何となく「保険は多めに入っておくもの」と思い込み、必要かどうかも吟味せずにいくつかの民間保険に加入していました。ところが両学長の動画で「日本の公的保険制度は思っている以上に手厚い」という解説を聞き、自分の加入内容を見直すと、明らかに重複している保障がいくつも見つかりました。 税金もそうでした。会社員だと税金は「会社がやってくれるもの」という感覚で、自分で確定申告をしたことすらなかった。でも動画を通じて、医療費控除や生命保険料控除、ふるさと納税のワンストップ特例など、知っているだけで手元に残るお金が変わる制度がいくつもあることを知りました。「無知は罪だ」とまでは言いませんが、知識がないだけで静かに損をし続けていたのだと、この時期に痛感しました。 動画を一本見るたびに、自分の「知識の穴」が浮かび上がってくる。そしてその穴を埋めるたびに、少しずつ家計の見通しが良くなっていく感覚がありました。あの時期の学びの密度は、今振り返っても濃密だったと思います。 両学長の「語り口」が、私には合っていた リベ大の動画が続けられた理由は、内容だけではありません。両学長の話し方そのものが、私にとって非常に入ってきやすかったのです。 難しい金融用語をそのまま使わず、かみ砕いて説明してくれる。押しつけがましくなく、「最終的に判断するのはあなた自身」というスタンスを崩さない。そして何より、お金の話なのに、どこかあたたかい。 「お金は人生を自由にする道具である」という言葉が、回を重ねるごとに染み込んでいきました。お金を増やすことが目的なのではなく、自分らしく生きるための手段として捉える——その視点は、それまでの私にはまったく欠けていたものでした。 気づけば、本とYouTubeを行き来しながら同じ内容を何度も確認するようになっていました。本で概念を理解して、動画でより具体的なイメージをつかむ。そのサイクルが、知識を定着させてくれました。 「見るだけ」から「行動」へ ただ、正直に言うと、最初のうちはひたすら「見るだけ」になっていました。 動画を見て「なるほど!」と感動する。でも実際に格安SIMに乗り換えるわけでも、保険を解約するわけでもない。ただ知識が増えていくだけ——「勉強した気になっている状態」に陥っていたのです。 転機になったのは、両学長が動画の中で言った一言でした。うろ覚えですが、こんな内容だったと思います。「知識はあるのに行動しない人は、知識がない人と結果が同じ」と。 その言葉が刺さりました。 私はすぐにスマホのキャリアを調べ、格安SIMへの乗り換え手続きを始めました。保険の証券を引っ張り出して、本当に必要な保障かどうかを一つひとつ確認しました。ふるさと納税のサイトに初めてログインして、返礼品を選びました。動画を「見る」から「やってみる」に、ようやくギアが切り替わった瞬間でした。 ...

May 13, 2026

必勝法を探し続けた男の末路──FXやらかし図鑑

お金と僕の12年戦争・第2話 結論から言おう。 僕はFXで150万円溶かした。 しかも一度ではない。やめては始め、やめては始めを4〜5回繰り返しながら、トータルでその金額に到達した。我ながら見事な負けっぷりだと思う。(笑) 2013年、僕はFXという名の沼に、両足どころか頭まで突っ込んでいた。 ① YouTube沼にはまる「必勝法」探し まず僕がやったのは、YouTubeでFX関連動画を片っ端から漁ることだった。 「FX 必勝法」「FX 勝てる手法」「月収100万円」──そんなワードで検索しまくり、もっともらしいことを言っているチャンネルを見つけては、その手法を試してみる。うまくいかなければ別の動画を探す。また試す。また探す。 今思えば完全に必勝法コレクターだった。 そもそも、もし本当に必勝法があるなら、その人はYouTubeで無料公開なんてしない。当たり前のことに、当時の僕は気づけなかった。 ② 謎のインジケーターに課金する男 動画だけでは飽き足らず、次は「エントリータイミングを教えてくれる魔法のツール」を探し始めた。 いわゆるインジケーターというやつだ。チャートに重ねると「買い」「売り」のサインが出る。無料のものを試し、効かないとわかると有料のものに手を出す。数千円、ときには1万円以上払ったこともあった。 結論から言うと、全部ゴミだった。いや、ゴミというより「後付けで勝率を良く見せる詐欺ツール」といった方が正確かもしれない。 授業料、高すぎた。 ③ コツコツ積み上げて、ドカンと吹き飛ばす 利益が少し出るとすぐ決済してしまう。それが僕の悪いクセだった。 「逃げ切った!」という快感が忘れられず、ちょっと勝っては利確、ちょっと勝っては利確。口座残高の数字が小さく増えていくのが嬉しかった。 しかしその一方で、損失が出ると「もう少し待てば戻るはず…」と粘り続ける。 その非対称さに気づかないまま続けた結果、ある日やってくる。 コツコツ積み上げた利益が、一回のドカンで全部消えた。 やった人間にしかわからない、あの虚無感。 ④「長期投資」という名の現実逃避 損切りができなかった。本当にできなかった。 「もう少し待てば戻るはず」と含み損を抱えたまま放置するのはまだかわいい方で、僕がやったのはさらに上をいく言い訳だった。 「これは長期投資だから」 FXの含み損を前に、僕は突然「長期投資家」に変身した。スワップポイントが少し入ってくるのをいいことに、現実から目を背け続けた。 もちろんそんな「長期投資」に未来はなく、最終的には強制ロスカットか、耐えきれずに大損で決済するかのどちらかだった。 ⑤ 負けを取り返そうとして、さらに深みへ 損失が膨らむと、人間おかしくなる。 「このまま終われない」「一発で取り返せるはずだ」──そう思って、証拠金に対して明らかに過大なポジションを持った。 するとどうなるか。少し値が動くだけで口座残高がガクガク揺れる。ロスカットの恐怖で気持ちが不安定になる。夜も落ち着かない。 ハイレバレッジは、トレードではなく恐怖との戦いだった。 ⑥ ポジポジ病という名の持病 「ポジションを持っていないと落ち着かない」 これが厄介だった。根拠なんてない。ただ、何かに乗っていないと不安なのだ。 そんなポジションだから当然、仕事中も気になる。バスを運転しながら(※停車中です)「今どうなってるかな…」と頭の片隅でチャートが浮かぶ。 本末転倒とはこのことだった。お金を増やすために始めたはずが、本業に支障をきたしていた。 やめる。また始める。を4〜5回繰り返した。 こんな失敗だらけでも、僕はFXをやめられなかった。 「次こそは」「今度こそうまくやれる」──懲りない男は、しばらく間を置いてはまたチャートを開いた。それを4〜5回繰り返した。 今思えば、完全にギャンブルと同じ心理だった。 そして今──正しい付き合い方にたどり着いた そんな失敗だらけの僕だが、実はFXを完全にやめたわけではない。 現在も20万円をFX口座に入れてある。ただし、以前とは決定的に違うことがある。 もうFXを「投資」だとは思っていない。 趣味だ。釣りや競馬と同じ感覚で、溶かしてもいい範囲のお金でたまに楽しむ。大儲けしようなどとは微塵も考えていない。 150万円という授業料を払って、ようやくたどり着いた「正しいFXとの付き合い方」がこれだ。 そして2020年、僕は本当の意味での「投資」に出会うことになる。 次回へ続く。 私がFXで溶かした150万円の正体は、結局のところ「技術」ではなく「心理」の問題でした。必勝法探し、損切りできない、ポジポジ病——なぜ知識があっても勝てないのか。その答えを、これ以上なく突き詰めた名著がこれです。当時の私が読んでいれば、授業料はずっと安く済んだはずです。 ...

May 11, 2026

三男が生まれた日、僕は100万円をFXに突っ込んだ

お金と僕の12年戦争・第1話 私が「投資」という言葉を意識したのは、2013年の9月のことです。 なぜそこまではっきり覚えているかといえば、三男が生まれたタイミングだったから。産声を聞いたあの瞬間から、胸の奥にじわじわと広がってきたのは感動だけではありませんでした。同時に、正体のよくわからない焦りのようなものが、ゆっくりと込み上げてきたのです。 「何かをやらなくちゃ。このままじゃダメだ。」 当時、私にはすでに三人の子どもがいました。長男、長女、そして次男。そして今度で四人目——三男の誕生です。守るべきものが増えるということは、同時に「自分に何かあったら」という不安の重さも増すということでした。 「何か」をやらなければという焦りは、なぜかまっすぐ「投資」という言葉に向かいました。知識があったわけでも、誰かに勧められたわけでもない。ただ、インターネットをポチポチと検索しながら、気づいたらFXという世界に辿り着いていたのです。 どうにかこうにか口座開設を完了させ、100万円を入金。画面の前で「いざ!」と気合を入れたはいいものの、正直なところ何をどうすればいいのか、まったく分かりませんでした。チャートの読み方も、注文の仕組みも、レバレッジの意味さえも。 それでも、人生で最初の「エントリー」だけは、なんとか成功させました。 そこから先は、これまでの人生で経験したことのない感覚の連続でした。数字が動くたびに心臓が跳ねる。プラスになれば息が上がり、マイナスになれば胃が縮む。たった数万円の値動きで、これほどまでに感情が揺さぶられるとは思っていませんでした。 たまたまその日は、何かの経済指標の発表時間と重なっていたようです。2〜3時間、ただ値動きをドキドキしながら眺めていると、突然、相場が円安方向に大きく動き出しました。含み益がみるみる膨らんでいく。8万円のプラス。 震える手で決済ボタンを押しました。 あのときの感覚を、今でもはっきり覚えています。「俺の人生は、これからバラ色だ」と、本気でそう思いました。お金は、努力しなくても手に入るのかもしれない——そんな、恐ろしいほど根拠のない自信が、全身に満ちていました。 ビギナーズラックというものは、本当にあるんですね。 しかし振り返れば、あの8万円の勝利こそが、その後の「泥沼」への入口でした。 次回:興奮が慢心に変わるとき——FXという沼の、深さを知る この12年戦争が終わってみて、いま思うのは「もし最初にこの一冊を読んでいたら」ということです。私がFXで彷徨ったあげく、ようやく資産形成の“正しい順番”を教えてくれたのが、この本でした。詳しくは第3話で書きますが、これから始める方には、遠回りをしないためにも、まずここから読んでほしいと思います。 【改訂版】本当の自由を手に入れる お金の大学両@リベ大学長/朝日新聞出版。私の12年の回り道を、最短ルートに変えてくれた一冊(新NISA対応の改訂版) Amazonで見る › お金と僕の12年戦争 ─ シリーズ一覧 次の話:第2話 必勝法を探し続けた男の末路──FXやらかし図鑑 ▶ 第1話 三男が生まれた日、僕は100万円をFXに突っ込んだ(この記事) 第2話 必勝法を探し続けた男の末路──FXやらかし図鑑 第3話 一冊の本が、すべてを変えた──『お金の大学』との出会い 第4話 スマホ代を月15,000円から5,000円へ──格安SIM乗り換え体験記 第5話 6大固定費の見直し──保険の整理 第6話 住宅ローンという名の長期戦──借り換えと金利上昇 第7話 手放した日から、お金が貯まりはじめた──マークIIとの別れ 第8話 「株主」にはなれた。でも「投資家」にはなれなかった 第9話 「短期トレード」の果てに──インデックス投資という長期戦のはじまり 第10話 「廃止決定」の制度に、子どもたちの未来を託した──ジュニアNISA編 第11話 「もう一本の柱」iDeCo──節税と引き換えに、60歳まで縛るという選択 第12話 二軒の戸建がくれた、もう一本の柱──戸建賃貸業のはじまり 第13話 大家業、はじめの一歩──「売りますか?」に「貸します」と答えた日 第14話 二軒目は、意図して買いに行った──松戸・築古戸建、オーナーチェンジ購入記

May 9, 2026