なぜ学校では「お金の増やし方」を教えてくれないの?──山崎元『図解・最新 学校では教えてくれないお金の授業』をやさしく解説!

「お金の勉強」って、学校ではほとんど習いませんよね。計算やことわざは教わるのに、「どう貯めて、どう増やすか」は自分でなんとかするしかない——そんな不思議に正面から答えてくれるのが、この本です。 著者の山崎元(やまざき・はじめ)さんは、日本でとても有名な経済評論家。銀行・証券会社・保険会社など、お金にかかわる会社を数多く経験した「お金のプロ」です。だからこそ、ふつうは表に出てこない金融業界の“ウラ側”まで正直に書いてくれています。(山崎さんは2024年に亡くなりましたが、その教えは今も多くの人に読み継がれています。) この記事では、本の内容を中学生でもわかるように、8つのポイントにしぼって紹介します。 1. そもそもお金って何?──「自由」を広げる道具 お金がたくさんあると、行きたい場所に行けたり、やりたいことに挑戦できたりします。つまりお金は、あなたが選べる道を増やしてくれる「自由の道具」なのです。 でも、ここが大事なポイント。 お金は「手段」であって、「目的」ではない。 お金そのものを集めることがゴールになると、いくら増えても満足できません。ゲームでコインを集めるのは、強い装備を買って冒険を楽しむため。コインをただ眺めるためではありませんよね。お金も同じで、「何のために使うか」が先にあるべきなのです。 2. お金持ちへの第一歩は、投資より「自分の価値を上げる」こと 「お金を増やす」と聞くと、すぐに投資を思いうかべるかもしれません。でも山崎さんは、まず自分自身の"稼ぐ力"を高めるほうが先だと言います。 考えてみてください。1万円を投資しても、1年で増えるのはうまくいっても数百円ほど。でも、勉強やスキルをみがいて仕事の力がつけば、収入そのものが何万円も上がることがあります。 部活で、いきなり試合の作戦ばかり考えるより、まず基礎練習で実力をつけたほうが結局は強くなれますよね。お金も同じで、「元手を大きくする力」こそが最初の投資なのです。 3. 「先取り貯金」で、手取りの4分の1を自動的に残す お金が貯まらない人の多くは、「余ったら貯金しよう」と考えています。でも、余ることはめったにありません。 そこでこの本がすすめるのが「先取り(天引き)」。お金が入ったら、使う前に決まった額をよけておく方法です。目安は手取りの4分の1。残ったお金だけで生活すれば、自然とお金が貯まっていきます。 「余ったら貯める」ではなく、「先に貯めて、残りで暮らす」。 たとえば手取りが20万円の人なら、まず5万円をよけてしまい、残りの15万円で生活する。こうすれば「気づいたら全部使っていた」ということが起こりません。お小遣いをもらった瞬間に、一部をパッと貯金箱に入れてしまうのと同じイメージです。あとは残りで自由に使ってOK。順番を変えるだけで、結果は大きく変わります。 4. 銀行・証券・保険の"ウラ側"──アドバイスする人から買ってはいけない 銀行の窓口で「この商品、おすすめですよ」と言われると、つい信じたくなります。でも山崎さんは、はっきり警告します。 お金のアドバイスをくれる相手から、その商品を買ってはいけない。 なぜなら、金融機関の仕事は「お客さんから儲けること」だから。すすめられるのは、たいてい"お店がもうかる商品"であって、“あなたが得をする商品"ではないのです。 これは、ゲームの課金でいちばん高いパックをすすめてくる店員さんに似ています。相手も商売なので、あなたの財布より自分の売上を優先します。だから、「銀行はお金を増やす場所ではない」と覚えておきましょう。 山崎さんは、金融ビジネスの仕組みをこうまとめています。 お金持ちからは「手数料」を、お金のない人からは「金利」を取るのが、金融業のもうけ方。 ちょっとドキッとする言葉ですが、これを知っておくだけで、だまされにくくなります。ちなみに、銀行にただ預けるお金は、1つの銀行につき1000万円までしか完全には守られない仕組みになっています。大金を1か所に置きっぱなしにしない、というのも大事な知恵です。 5. 保険は「損な賭け」──入っていいのは"めったに起きないけど超困る"ことだけ 保険は「安心を買うもの」と思われがちですが、山崎さんは冷静に指摘します。保険会社は、集めたお金よりも少ない額しか払い戻しません。そうしないと会社がつぶれてしまうからです。つまり、平均すると保険は「入る人が損をする賭け」なのです。 保険は「損な賭け」であることを知る。 では、入る意味はないの?というと、そうではありません。「めったに起きないけれど、起きたら人生が壊れるほど困ること」だけは、保険で備える価値があります。 たとえるなら、ガチャは平均すると損だから回さないほうがいい。でも、「家が火事になったら何千万円もかかる」ような、超レアで超ピンチな事態だけは保険でカバーする——そんな使い分けが正解です。 6. 「水増しされた利回り」にだまされない──数字は正しく比べる 投資商品には「利回り〇%!」という数字がよく登場します。でも、その数字は見せ方でよく見せかけられている(水増しされている)ことがあります。 たとえば「毎月お金がもらえる投資信託」。一見おトクに見えますが、実は自分が預けたお金を少しずつ返しているだけ、というケースもあります。うれしい"利益"に見えて、中身は"元本の払い戻し"だったりするのです。 テストで「平均80点!」と言われても、得意な教科だけで計算していたら意味がないのと同じ。数字は「同じ条件でそろえて、正しく比べる」ことが大切です。うまい話ほど、いったん立ち止まって中身を確かめましょう。 そして、利回りで考えると見えてくる意外な正解があります。それは、もし借金があるなら、投資より先に返すこと。借金の利息は、投資でめざす利回りよりずっと高いことが多いからです。借金を返すのは、じつは“確実に増える最強の投資”とも言えるのです。 7. 投資はシンプルでいい──世界にまるごと分散して、長く持つ 「投資はむずかしそう」と思うかもしれませんが、この本の答えはとてもシンプルです。世界中の会社にまとめて少しずつ投資して、あとは長く持ち続ける。基本はこれだけ。 1社の株だけを買うのは、1つのチームに全部かけるようなもの。負けたら大ダメージです。でも、いろんな会社が入った「詰め合わせ(インデックス投資信託)」なら、どこかがダメでも別のどこかが伸びて、全体でならされます。おかしの詰め合わせパックと同じで、まるごと持てば当たりはずれのブレが小さくなるのです。 そして、投資をするならNISA(ニーサ)やiDeCo(イデコ)という"税金がかからない特別な箱”を使うのがおトク。ふたつはこう使い分けます。 NISA:いつでも引き出せる、自由度の高い箱。ふだんの資産づくり向き。 iDeCo:原則60歳まで引き出せないかわりに、税金の割引が大きい箱。老後のための貯金向き。 「近いうちに使うかもしれないお金はNISA、老後まで手をつけないお金はiDeCo」と分けるのが基本の考え方です。 もうひとつ、山崎さんが強く言うのが「手数料(コスト)をとにかく安くする」こと。投資でどれくらい増えるかは誰にも予想できませんが、手数料だけは、自分の選び方で確実に下げられます。同じ中身なら、より安い商品を選ぶ。これが、初心者でもできる一番かしこい工夫です。 8. お金は「手段」──「どう生きたいか」が先にある 最後に、いちばん大切なこと。お金があれば不幸は避けやすくなりますが、お金だけで幸せになれるわけではない、と山崎さんは言います。 お金は、あなたの人生を助ける"道具"。主役はあくまで「あなたがどう生きたいか」。 だからこそ、テクニックを覚える前に「自分は何を大事にしたいのか」を考えることが、じつはいちばんのお金の勉強なのです。 今日からできる3つのこと お小遣いや収入の一部を、使う前に先によけておく(金額よりも「先取りの習慣」が大事) 「おすすめ」をうのみにせず、いったん中身を確かめる(相手がなぜすすめるのかを考える) お金の目的を書き出してみる(「何のために増やしたいのか」をはっきりさせる) お金の話は、じつは「どう生きたいか」の話。この本は、むずかしいテクニックではなく、一生使える"お金との付き合い方"を、やさしく教えてくれる一冊です。もっと知りたくなった人は、ぜひ本も手に取ってみてくださいね! 図表50点以上で、むずかしい言葉が苦手な人でもスラスラ読めます。私自身、五十代で投資と向き合ってきましたが、「もっと早くこの一冊に出会いたかった」と思わされました。社会に出るお子さんやお孫さんへの贈り物としても、自信を持っておすすめできる、“お金の教科書"の決定版です。 図解・最新 学校では教えてくれないお金の授業山崎元/PHP研究所。金融業界の裏側を知り尽くした経済評論家が、正しい貯め方・増やし方を図表50点以上でやさしく解説した入門書の決定版 Amazonで見る › あわせて読みたい:山崎元さんが亡くなる前、大学生の息子に遺した一冊のご紹介はこちら▼ 亡くなる前に、経済のプロが息子に伝えた「お金と人生」の話──『経済評論家の父から息子への手紙』 借金だらけの「ダメ男」が25年で2億円?──『彼はそれを「賢者の投資術」と言った』

July 27, 2026

借金だらけの「ダメ男」が、25年で2億円?──水瀬ケンイチ『彼はそれを「賢者の投資術」と言った』をやさしく解説!

「投資」と聞くと、頭のいい人がパソコンとにらめっこして、上がりそうな会社の株を当てる…そんなイメージはありませんか? でも、水瀬ケンイチさんの『彼はそれを「賢者の投資術」と言った』は、まったく逆のことを教えてくれます。 主人公は、天才でもお金持ちでもない、ごくふつうの会社員。それどころか、20代のころは貯金ゼロ、車のローンを2台分もかかえた「ダメ男」でした。 そんな人が、25年後には約2億円の資産を持つまでになります。しかも、使った方法はとてもシンプル。この記事では、その25年間の物語と教えを、中学生でもわかる言葉でまとめてみました。 ポイント1:スタートは「貯金ゼロのダメ男」 著者の水瀬さんは、IT企業ではたらくふつうの会社員です。 でも20代のころは、給料をぜんぶ使ってしまい、貯金はゼロ。車のローンまでかかえていました。「このままではやばい」と気づいたのが、すべての始まりです。 大事なのは、特別な才能があったわけではないということ。図書館を何カ所もはしごして、お金の入門書を片っぱしから10冊以上読む。そうやって、ゼロから勉強を始めただけなんです。 この本のすごいところは、25年間の資産の増え方が、金額のグラフとともにぜんぶ正直に公開されていること。うまくいった話だけでなく、失敗して落ちこんだ時期も包みかくさず書かれています。 だからこそ、「自分にはムリ」と思っている人にこそ、「ふつうの人でもできるんだ」という希望をくれるのです。 ポイント2:最初は「チャートに振り回されて」失敗した 水瀬さんも、最初から今のやり方だったわけではありません。 はじめは、株価のグラフ(チャート)とにらめっこして、「上がりそうな株」を当てようとしていました。値動きが気になって、仕事中もこっそりトイレで株価をチェックする毎日。水瀬さんは、この時期のことを「トイレ・トレーダー時代」と呼んでいます。 これ、スマホの通知が気になって、授業中でも何度もこっそり見たくなるのと似ていますよね。株価に心を支配されて、だんだん自分を見失っていったのです。 結果は、疲れるばかりでちっとも儲からない。「もっといい方法があるはずだ」と探し続けた末に、たどりついた答えが「インデックス投資」でした。遠回りしたからこそ、本物にたどりつけたというわけです。 ポイント3:答えは「詰め合わせパック」を買うこと 「インデックス投資」は、むずかしそうな名前ですが、中身はシンプルです。 ふつうの投資は、「この1社が伸びる!」と1社の株に賭けます。これは、運動会でたった1人の選手に全部を賭けるようなもの。当たれば大きいけれど、外れたらおしまいです。 いっぽうインデックス投資は、世界中の会社をまるごと「詰め合わせパック」で買うイメージ。「オルカン」と呼ばれる商品なら、たった1つ買うだけで、世界中の何千もの会社にまとめて投資できます。 だから、どれか1社がダメになっても、ほかの会社ががんばってくれるので、全体ではあまり困りません。カバンの中身をぜんぶ同じ教科書にせず、いろんな教科を入れておくようなもの。1つを忘れても、ほかで点が取れます。 しかも、毎月決まった額を自動で買っていくだけ。むずかしい予想も、特別なテクニックもいりません。これがいちばんかしこい方法だ、と水瀬さんは言います。 ポイント4:いちばん難しいのは「やめないこと」 やり方はとても簡単。でも、じつは最大の難関があります。それは「途中でやめたくなること」です。 投資の世界では、数年に一度、値段が大きく下がる「暴落」が起きます。ニュースは「大不況!」と大さわぎし、まわりの人もどんどん売り出します。自分のお金が半分になったら、こわくて「もう売っちゃおう」と思ってしまいますよね。 でも、下がったときに売るというのは、部活で一回試合に負けただけで「もうやめる」と言い出すのと同じ。しかも暴落のあとは、たいてい時間をかけて値段がもどっていきます。つまり、あわてて売る人は「一番安いときに手放す」という、いちばんもったいない行動をしているんです。 あわてて売ってしまうことこそ、いちばん大きな損につながる。 だからこそ、下がってもどっしり持ち続ける力が必要になります。 ポイント5:暴落の「予防接種」ができる本 では、どうすれば持ち続けられるのか。この本のいちばんの価値がここにあります。 水瀬さんは、2008年の「リーマンショック」という大暴落で資産が半分になってしまいました。コツコツ増やしてきたお金が、一気に消えていく恐怖。しかもインデックス投資をすすめていたので、ネットでは「ほら見たことか」と悪口の嵐にもさらされました。ものすごくつらい経験です。 でも、ここで売らずにじっとがまんして持ち続けた結果、数年後には資産はしっかり回復しました。そしてこの経験があったから、2020年の「コロナショック」で世界中がパニックになったときも、「この感じ、前にもあった。あわてて売るのが一番損だ」と冷静でいられたのです。 つまりこの本を読むと、水瀬さんの体験を借りて、暴落を疑似体験できるのです。予防接種で軽く病気を体験して本番に備えるのと同じ。だから、いざというとき慌てずにすみます。 ポイント6:「まさか」に備える貯金を残しておく 暴落のとき、いちばんやってはいけないのが「お金がなくて、しかたなく売る」こと。 たとえば急に病気やケガでお金が必要になったら、値下がりしている最悪のタイミングでも、投資を売るしかなくなります。 この本によれば、生活のための貯金を用意していない人は、最悪のタイミングで売ってしまう確率が3倍にもなるそうです。 だから、投資に回すお金とは別に、すぐ使える貯金(これを「生活防衛資金」といいます)を残しておくことが大切です。 これは、ゲームで言えば「いざというときのための回復アイテム」を持っておくようなもの。手元に余裕があれば、暴落が来ても「売らずに待つ」という正しい行動が取れます。この貯金こそが、暴落を乗りきるための「安全ネット」になるのです。 ポイント7:「なぜ続けられるのか」を知ると強い じつは、インデックス投資は理屈を知らなくても続けられます。でも、「なぜこれでいいのか」がわかると、迷わなくなるのです。 本の後半では、続けられる理由が世界中の研究データで説明されています。たとえば、 初心者の約6割が「安いときに買って高いときに売る、そのタイミングを当てるのが大事」と思っている。でも実際は、そのタイミング当てこそが成績を悪くする一番の原因だとわかっています。テストの点をねらって一夜漬けを繰り返すより、毎日少しずつ勉強したほうが伸びるのと同じです。 欲ばって「あれもこれも」とたくさんの商品を買いすぎると、かえって成績が下がってしまうこともある。あれこれ手を広げすぎると、どれも中途半端になるのと同じですね。 つまり、頭を使って賢く立ち回ろうとするより、シンプルにコツコツ続けるほうが強い。理由がわかっていれば、まわりの「今が売りどきだ!」といった雑音にも振り回されなくなります。 ポイント8:タイトルの「彼」ってだれ? 最後に、タイトルの「彼」とはだれのことでしょう。 それは、経済評論家の山崎元(やまざき・はじめ)さん。水瀬さんと本を一緒に書いた仲間で、残念ながら亡くなってしまいました。 山崎さんは、「手数料の高い商品を売りたい」金融業界からきらわれることもいとわず、ふつうの人の味方になって「本当に正しいこと」を言い続けた人です。むかしの日本では、「市場全体と同じくらいの成績で満足する」というインデックス投資の考え方は、ほとんど理解されませんでした。それが今、「投資はまずインデックスから」と当たり前に言われるようになったのは、水瀬さんや山崎さんのような人たちが地道に伝え続けてくれたおかげなのです。 この本は、インデックス投資の教科書であると同時に、そんな山崎さんへの「ありがとう」の手紙でもあるのです。 まとめ:今日からできる3つのこと 『彼はそれを「賢者の投資術」と言った』の教えを、中学生の生活に置きかえるとこうなります。 少しずつ「続ける」練習をする(勉強でも運動でも、一発逆転より毎日コツコツが勝つ) 「まさか」に備えて、使わないお金を少し残しておく(お小遣いを全部は使いきらない) 一回の失敗であわてない(下がってもやめない人が、最後に笑う) 投資の本当のコツは、頭の良さでも運でもなく、「やめずに続ける心」。この本は、その心の育て方を、25年分の実話で教えてくれます。気になった人は、ぜひ本も読んでみてください! 私自身、5人の子を育てながらインデックス投資を続けてきた身として、この本の「ふつうの人が、遠回りしながらたどり着いた」という語り口には、ひとつひとつ深くうなずかされました。同じ著者を悼む一冊として、先日ご紹介した山崎元さんの『経済評論家の父から息子への手紙』とあわせて読むと、より胸に迫ります。これから投資を始める方の、最初の一冊にもおすすめです。 彼はそれを「賢者の投資術」と言った水瀬ケンイチ/Gakken。貯金ゼロのダメ男が25年で約2億円。インデックス投資の全記録を、グラフとともに正直に公開した実話 Amazonで見る › あわせて読みたい:インデックス投資の考え方を学べる一冊はこちら▼ 「安くなってから買おう」は、なぜ損なのか?──『JUST KEEP BUYING』をやさしく解説! お金持ちになるのに「頭の良さ」はいらない?──『サイコロジー・オブ・マネー』をやさしく解説!

July 26, 2026

亡くなる前に、経済のプロが息子に伝えた「お金と人生」の話──『経済評論家の父から息子への手紙』をやさしく解説!

もし、お父さんやお母さんが「人生で本当に大事なこと」を手紙に書いて残してくれたら、みなさんは読んでみたいですか? 『経済評論家の父から息子への手紙 お金と人生と幸せについて』(山崎元・著)は、まさにそんな一冊です。 著者の山崎元(やまざき・はじめ)さんは、日本を代表する経済評論家。テレビや本で「お金の正しい増やし方」をわかりやすく教えてくれる人気者でしたが、がんと闘いながら、2024年1月1日に65歳で亡くなりました。 この本は、山崎さんが大学生になった息子さんへ、人生の最後に「どうしても伝えたいこと」を書き残したもの。実際に息子さんへ送った手紙も、そのまま全文のっています。 「お金の心配をせず、自由に気分よく生きていくために」――経済のプロが命をかけて残したメッセージを、中学生でもわかる言葉でまとめてみました。 ポイント1:お金は「目的」じゃなくて「道具」 まず、この本のいちばん土台になる考え方から。 山崎さんは、お金そのものを人生の目的にしてはいけないと言います。お金は、自由に、気分よく生きるための「道具」にすぎないからです。 お金があると、 やりたくないことを「やらない」と選べる 困ったときにあわてずにすむ 自分の好きなことに時間を使える つまり、お金の本当の役割は「自由を守ること」。ゲームで例えるなら、お金は高得点そのものではなく、自分の好きなルートを選ぶための「アイテム」なんです。アイテム集めに夢中になって、肝心の冒険を楽しめなかったら本末転倒ですよね。 ポイント2:お金持ちになる人は「リスクを取る側」にいる では、世の中でお金持ちになるのはどんな人でしょう? 山崎さんの答えはハッキリしています。「リスクを取って、株式のように働いた人」です。 働き方には、大きく2つのタイプがあります。 利息タイプ:決められた仕事をして、決められた給料をもらう(安定しているけど、大きくは増えない) 株式タイプ:うまくいくか分からないことに挑戦して、成功したら大きな見返りを得る 会社を作った人や、新しいことに挑戦した人が大金持ちになるのは、この「株式タイプ」の働き方をしているから。もちろん失敗することもあります。でも、若いうちの失敗は取り返しがつく。だからこそ山崎さんは息子さんに「リスクを取ることを恐れるな」と伝えています。 部活で例えるなら、レギュラー争いに手を挙げない人に、活躍のチャンスは回ってきません。挑戦しないことこそが、じつはいちばんのリスクなんです。 ポイント3:「モテる人」になりなさい 意外なアドバイスがこれ。山崎さんは「モテることが大事だ」と大まじめに書いています。 といっても、恋愛の話だけではありません。ここでいう「モテる」とは、「この人と一緒に働きたい」「この人に仕事を頼みたい」と思われる魅力のこと。 約束を守る 機嫌よくいる 人の悪口を言わない 自分の得意なことで人の役に立つ 仕事もチャンスも、結局は「人」が運んできてくれます。だから、勉強やスキルと同じくらい、人としての魅力=人材価値を高めることが、将来の武器になるのです。クラスで「あの人と同じ班になりたい」と思われる人を想像すると、わかりやすいかもしれません。 ポイント4:過去の損は忘れていい――「サンクコスト」の話 ゲームに課金しすぎて「ここでやめたらもったいない」と、さらに課金してしまった……。そんな経験はありませんか? すでに払ってしまって、もう取り返せないお金や時間のことを「サンクコスト(埋没費用)」と言います。 山崎さんの教えはシンプルです。「過去に払ったものは、これからの判断に関係させるな」。 考えるべきは「今までいくら使ったか」ではなく、「これから先、続ける価値があるか」だけ。映画がつまらなかったら、チケット代を払っていても途中で出ていい。合わない習い事は、道具をそろえた後でもやめていい。 過去を悔やむより、未来のために判断する。これはお金だけでなく、人生全部に使える考え方です。 ポイント5:お金の増やし方は、たった1行で終わり 経済評論家として何十年も活躍した山崎さんが、最後にたどりついた「お金の増やし方の正解」は、拍子抜けするほどシンプルです。 「稼いで、貯めて、余ったお金は全世界の株にまるごと投資して、あとはほったらかし」 これだけ。世界中の会社の株を少しずつまとめ買いできる「全世界株式インデックスファンド」という商品を、手数料の安いものでコツコツ買い続ける。売ったり買ったりを繰り返す必要はありません。 そして、もうひとつ大事な警告があります。 銀行や証券会社の窓口で勧められる商品は、買ってはいけない。 なぜなら、向こうが熱心に勧めてくる商品ほど、手数料が高くて売る側が儲かる仕組みになっているから。「親切そうなプロ」ほど疑えというのは、プロ中のプロだった山崎さんだからこそ言える、重みのある言葉です。 ポイント6:「転職できる自分」でいることが最強の保険 山崎さんは、なんと人生で12回も転職した人です。ふつうの会社員としてはかなり珍しい経歴ですが、だからこそ言えるアドバイスがあります。 「ひとつの会社にしがみつかなくていい。ただし、いつでも転職できる自分でいなさい」 会社が絶対につぶれない保証はないし、上司や仕事が合わないこともあります。そのときに「ここを辞めたら生きていけない」と思っていると、嫌なことにもノーと言えなくなってしまう。逆に「自分はよそでも通用する」という自信があれば、堂々と働けます。 そのために大事なのが、若いうちに自分の「得意分野」を作っておくこと。山崎さんは「28歳までに自分の専門の軸を決めるといい」と具体的な目安まで示しています。中学生のみなさんなら、まずは「好きで、ついつい時間を使ってしまうこと」を大切にするところからで十分。それが将来の専門分野のタネになります。 ポイント7:仲間とは「気持ちよく」付き合う。お酒の飲み方まで この本のユニークなところは、「お酒の飲み方」まで手紙に書いてあることです。人生の最後に息子へ伝えることとして、わざわざお酒の話を選ぶなんて、ちょっと面白いですよね。 でも中身は、大人になる前に知っておいて損のない話です。 お酒は楽しく飲むもので、つらさをごまかす道具にしない 飲みの席での失敗は、積み上げた信用を一晩で壊すことがある 相手に無理に飲ませない。自分も無理をしない つまりこれは、お酒の話の形をした「仲間との付き合い方」の話なんです。友だちとの関係も同じで、ノリに流されて誰かを傷つけたり、無理をして自分をすり減らしたりしたら、長い目で見て必ず損をします。 山崎さんは、お金と同じくらい「気分よく付き合える仲間」を人生の財産だと考えていました。実際、闘病中の山崎さんを支えたのも、お金ではなく仲間だったそうです。 ...

July 18, 2026