「節約も投資もがんばっているのに、なぜかお金の不安が消えない」 「仕事で力を出し切れず、気づけば収入も伸び悩んでいる」

そんなモヤモヤを抱えたことはありませんか?

今回紹介するのは、心理カウンセラー・大嶋信頼(おおしま のぶより)さんの『お金持ちになる人の心理学』(PHP研究所、2020年)です。家計簿や投資術の本ではなく、「お金と心の関係」に焦点を当てた、ちょっと変わった一冊です。

この記事では、中学生が読んでもわかるくらいやさしい言葉で、本のポイントを8つにまとめました。


著者・大嶋信頼さんってどんな人?

大嶋さんは、株式会社インサイト・カウンセリングの代表を務める心理カウンセラーです。アメリカのアズベリー大学で心理学を学び、依存症の専門病院などで経験を積んだあと、独自のカウンセリング法(FAP療法)を生み出しました。

本の中では、ご自身の「うまくいかなかった過去」を面白おかしく、正直に語っているのが特徴です。難しい理論書というより、カウンセラーの体験談を聞いている感覚で読み進められます。


ポイント1:感情に流されると「貧乏神」が寄ってくる

本の最初で強調されるのが、感情、とくに「怒り」に振り回されるとお金のチャンスが逃げていくということです。

たとえば、職場でちょっとした一言にカッとなって関係を切ってしまう。すると、その人から回ってきたかもしれない仕事や情報、人とのつながりも一緒に失われます。

怒りで人間関係を切るたびに、未来の収入の「入り口」を自分でふさいでいる。

毎月こっそり引き落とされるサブスクのように、感情による損失は目に見えにくいぶん、気づかないうちに積み重なっていくのです。

お金持ちになる人は、感情がないわけではありません。ただ、感情に「ハンドル」を握らせないのです。怒りを感じても、その場で人間関係を壊すような決断はしない。この小さな差が、長い目で見ると大きな収入の差になっていく、と大嶋さんは考えています。


ポイント2:「かわいそう」が搾取を生むことがある

意外なのが「同情」の話です。相手を**「かわいそう」と思って親切にしすぎると、心の距離が近づきすぎてしまう**と大嶋さんは言います。

距離が家族並みに縮まると、相手の中に「困ったら頼って当然」という気持ちが生まれ、お金や時間を当たり前のように求められるようになることも。

身近な例でいえば、「かわいそうだから」と何度もお金を貸しているうちに、返してもらうどころか、貸すのが当たり前になってしまうケース。断れば「冷たい人」と責められ、結局こちらが悪者のような気持ちにさせられます。

親切そのものは悪くありません。ただ、人との間には適度な「心の距離」が必要だという視点は、お金を守るうえでも大切です。


ポイント3:あなたの足を引っ張る正体は「嫉妬」

この本のいちばん大きなテーマが**「嫉妬」**です。

仕事ができるのに、なぜか実力を発揮できない。行き詰まって会社を辞めてしまう。多くの人はそれを「自分がダメだから」と責めます。

しかし大嶋さんは、その背景に周りの人からの嫉妬があると指摘します。能力がある人ほど目立ち、無意識のうちに足を引っ張られやすい、というわけです。

ここでいう嫉妬は、あからさまな意地悪だけではありません。「すごいね」と言いながら小さなミスをことさら指摘されたり、なぜか大事な情報が自分にだけ回ってこなかったり。相手自身も気づいていないような、静かな嫉妬も含まれます。だからこそ、された側は「自分のせいだ」と思い込んでしまうのです。

うまくいかないのは、あなたの能力不足ではなく、周りの嫉妬の影響かもしれない。

自分を責め続けて元気をなくし、働けなくなり、お金の面でも追い込まれる――この悪循環を断つために、まず原因を知ることが第一歩だと本は語ります。


ポイント4:「呪いの暗示」が能力にフタをする

嫉妬と深く関係するのが**「呪いの暗示」**という考え方です。

「あなたには無理よ」「調子に乗らないで」――何気なくかけられた言葉が、心の奥に残り、自分の力を封じ込めるブレーキになってしまうことがあります。

車のサイドブレーキを引いたままアクセルを踏んでいる状態を想像してください。どれだけ頑張っても前に進みにくく、燃料(エネルギー)ばかり減っていきます。お金に困る状況を、実は自分で作り出していることもある、というのが本書の見方です。

たとえば、昇進の話が来たのに「自分には荷が重い」と反射的に断ってしまう。副業を始めたいのに「どうせ失敗する」と一歩が出ない。こうした理由のはっきりしないブレーキの裏に、昔かけられた言葉が隠れていることがある、と大嶋さんは言います。

怒り・同情・嫉妬・呪いの暗示。どれも家計簿には載りませんが、確実にお金を遠ざけます。


ポイント5:感情は「うつる」

大嶋さんは、脳の**「ミラーニューロン」**という働きにも触れています。これは、相手の動きや気持ちを、まるで鏡のように自分の中でまねする仕組みのことです。

つまり、イライラしている上司のそばにいると自分までイライラしてくる、不安な人と話していると自分まで不安になる――他人の感情が知らないうちに自分にうつる、ということ。

お金の不安も、実は自分のものではなく、周りから「もらってしまった」ものかもしれません。そう気づくだけで、少し気持ちが軽くなります。

その不安は、自分の判断から来たものか。それとも、周りからうつってきたものか。

株価が大きく下がったとき、ニュースやSNSの悲観的な声に引きずられて、つい積立投資をやめたくなる――これも「感情の伝染」の一種と言えるでしょう。自分の判断なのか、周りの空気にのまれているだけなのかを見分けることが、お金を守る力につながります。


ポイント6:罪悪感・謙虚さ・反省は「要らない」

ドキッとする主張ですが、本書では罪悪感や行き過ぎた謙虚さ、反省は要らないとまで言い切ります。

もちろん「何をしてもいい」という意味ではありません。必要以上に自分を責めたり、へりくだったりすると、自分の価値を低く見積もり、チャンスや正当な報酬を自ら遠ざけてしまうという意味です。

給料交渉で「私なんてまだまだです」と引いてしまう場面を思い浮かべると、わかりやすいでしょう。仕事の値段を安く見積もる習慣は、そのまま収入の天井になってしまいます。

また、失敗のたびに何日も反省し続けると、心のエネルギーがどんどん減っていきます。反省は短く、次の一歩は早く。そのほうが結果的に、仕事でもお金でも前に進めるというわけです。


ポイント7:「無意識さん」と「意識」のバランス

第2章の主役は**「無意識さん」**です。大嶋さんは、心の中の「無意識」を親しみをこめてこう呼びます。

考えて判断する「意識」も大事ですが、そればかりだと嫉妬や感情の影響を受けやすくなります。一方、無意識の力を上手に使えると、嫉妬の影響から自然と抜け出せると本は説明します。

大切なのは、どちらか一方ではなくバランスです。会社の経営に「きちんと管理する仕組み」と「現場の自然な判断」の両方が必要なのと似ています。

また、物事を**「客観的に見る」**ことの大切さも繰り返し語られます。感情という色メガネを外して、事実をそのまま見る練習です。本の中では、有名な催眠療法家ミルトン・エリクソン博士が、患者についての客観的なデータを集め、自分の思い込みを取り除く努力を重ねていたエピソードも紹介されています。


ポイント8:「知能指数のジオラマ」と「足の裏の感覚」

第3章では、本書独自の方法**「知能指数のジオラマ」**が紹介されます。自分の心に問いかけて、自分や周りの人の「知能指数」を感じ取り、それをジオラマ(模型)のように並べて眺めることで、人間関係を客観的に見るというユニークなワークです。

ここでいう知能指数は、テストの点数のような数字そのものより、「自分と相手の立ち位置を冷静にとらえるための物差し」と考えるとわかりやすいでしょう。相手との関係を上から眺めることで、「なぜこの人といると疲れるのか」「なぜ自分は遠慮してしまうのか」が見えやすくなる、というのが狙いです。

そしてエピローグでは、**「足の裏の感覚を感じる」**というシンプルな方法が紹介されます。不安で頭がいっぱいになったとき、意識を足の裏に向けると、ふわふわした気持ちが「今ここ」に戻ってくる――そんなイメージです。

お金の不安で頭がいっぱいのときほど、足の裏に意識を向けてみる。


この本との上手な付き合い方

正直にお伝えすると、この本は科学的なデータで証明された理論書ではありません。「催眠」や「知能指数のジオラマ」など、著者独自の考え方も多く、レビューでも「納得できる」という声と「根拠が弱い」という声に分かれています。

また、具体的な節約術や投資の方法は書かれていません。家計管理や資産運用の知識は、別の本で身につける必要があります。

それでも、「お金の問題は、お金だけを見ても解決しない」という視点は、資産形成を続ける大人にとって大切なヒントです。うまくいかない時期に、自分を責めすぎないための**「心のメンテナンス本」**として読むのがおすすめです。


今日からできる3つのこと

1. 怒りを感じたら、すぐに行動しない イラッとしたら一晩おく。それだけで、人間関係とチャンスを守れます。

2. 「この不安は本当に自分のもの?」と問いかける 周りから感情がうつっているだけかもしれません。心の中で「客観的に見る」と唱えてみましょう。

3. 不安なときは足の裏を感じる 深呼吸して、足の裏が床についている感覚に集中するだけでOKです。

今日からできる3つのこと。どれも、お金もかからず、今夜から試せます。

節約や投資を「頭」でがんばるだけでなく、「心」の面からもお金と向き合ってみたい方は、ぜひ『お金持ちになる人の心理学』を手に取ってみてください。

お金持ちになる人の心理学
大嶋信頼/PHP研究所(2020年)。嫉妬・呪いの暗示・無意識さんをキーワードに、お金と心の関係を心理カウンセラーの体験談を交えて語る。208ページ。Kindle版もあり。星4.3(330件)
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心の準備が整ったら、次は「頭」の番です。本書に書かれていない家計管理・節約・資産運用の具体的な方法は、こちらの一冊でひと通り身につきます。

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